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- 中国経済の見通し-さらに減速し6%台前半へ、不良債権問題への波及や企業家精神への打撃に要注意
2018年11月22日
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■要旨
- 中国経済の成長鈍化が鮮明になってきた。中国国家統計局が公表した18年第3四半期(7-9月期)の経済成長率は実質で前年比6.5%増と、第2四半期(4-6月期)の同6.7%増を0.2ポイント下回り、2四半期連続の減速となった。一方、消費者物価は概ね安定しており、第3四半期は前年比2.3%上昇と、18年の抑制目標「3%前後」を下回る水準で推移している(左下図)。
- 個人消費の伸びは減速した。18年1-10月期の小売売上高は17年通期の同10.2%増を1.0ポイント下回った。米中貿易戦争による株価下落で自動車販売が落ち込むなど不安材料もあるが、中間所得層の増加がサービス消費を拡大し、ネット販売化が新たな消費需要を喚起する流れは続いており、乗用車はまだ普及途上の段階にあるため、比較的高い伸びを維持すると予想する。
- 投資の伸びも減速した。18年1-10月期の固定資産投資は17年通期の同7.2%増を1.5ポイント下回った。米中貿易戦争に伴う先行き不透明感が引き続きマイナス要因となるものの、中国政府が景気テコ入れに動き出したため、債務圧縮(デレバレッジ)の圧力は若干弱まり、インフラ投資の持ち直しで底割れは回避できると予想している。
- 輸出は今のところ堅調に推移している。18年1-10月期の輸出額(ドルベース)は前年比12.6%増と、17年通期の同7.9%増を大きく上回る伸びを示した。今後は米中貿易戦争に伴う製造拠点の海外流出で輸出の伸びが鈍化する一方、輸入は中国政府の輸入拡大方針を背景に輸出を上回る伸びを示すと見られるため、引き続き純輸出が経済成長の足かせになると見られる。
- 18年の成長率は前年比6.5%増、19年は同6.3%増、20年は同6.2%増と減速傾向と見ている。また、18年の消費者物価は前年比2.2%上昇、19年は同2.5%上昇、20年は同2.3%上昇と予想している(右下図)。なお、中国経済を見通す上では、引き続き米中貿易戦争が最大のリスク要因である。関税引き上げ合戦による対米輸出の鈍化に加えて、不良債権問題への波及や企業家精神(アントレプレナーシップ)への打撃にも要注意だと考えている。
(2018年11月22日「Weekly エコノミスト・レター」)
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