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生涯現役社会と働き方改革~求められる政府の積極関与~

櫨(はじ) 浩一
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1――人手不足の深刻化
少子化で子供の数が減少してきた日本では、学校を卒業して社会に出ていく若者は減少を続けており、企業が高齢者の退職で生まれる空席を新卒者の採用で埋めようとしても、新卒者の絶対数が足りていない。第二次世界大戦終了直後に生まれた団塊の世代は、2012年には65歳に達して年金生活をする年代に達した。団塊世代の人口は1歳あたり220万人程度で、毎年労働市場に入ってくる20歳程度の人口120万人とは100万人もの差がある。
団塊世代の大波が通り過ぎた後の世代でも毎年65歳に達する人口は150万人を超えており、新たに働きはじめる人達の人口との差は数十万人にのぼるだろう。日本の出生率は下げ止まったとは言っても、ひとりの女性が一生の間に産む子供の数を示す合計特殊出生率は2017年で1.43と、人口が増加も減少もしない水準である2.07を大きく下回っている。子供の数の減少は止まっておらず、高齢で引退する人を新卒者の採用では埋めきれないという構図は今後も長期に続くと見られている。
2――働き方改革の意味
日本では、高齢になっても健康な間は働き続けたいと考える人が多いということは良く知られているが、これは高齢化率が他の先進諸国よりはるかに高くなるとされている日本には大きな幸運だ。
2017年の就業者数は6530万人で、ピークだった1997年の6557万人と比べると27万人の減少となっている。これまで就業者の中心だった15~60歳未満の就業者が5680万人から5203万人へと477万人の減少となっている一方、60歳以上の就業者は877万人から1328万人へと451万人も増加した。
3――求められる政府の積極関与
働くことには様々な意味があるが、所得を得て自分の生活を支えるという意味合いは年齢が高まるに従って弱まり、社会への貢献や生きがい、健康の維持といった色彩が濃くなる。年齢を加えることで高まる能力もあるが、残念ながら作業速度など様々な能力の低下は避けられない。働き方改革で高齢になっても働ける環境を整備することは企業にとってプラスの面が大きいが、誰もが生涯にわたって働き続けられるようにするということは、採算に縛られる民間企業の活動とは異質の部分が大きくなり、整合性が保てないケースが増えるだろう。
人手不足が深刻となる中で企業側としても年齢に関わらず同じ業務を続けて欲しい人が増えるだろうが、誰もが同じ業務を続けるわけにはいかない。これまで定年年齢の引き上げや高年齢者の雇用確保の義務付けが、高年齢者の就業増加に大きな役割を果たしてきたことは確かだが、年齢によらず一生働き続けられるように適切な仕事を用意するという義務を企業にだけ負わせるのは負担が大き過ぎる。政府がもっと積極的な役割を果たすべきだろう。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年10月31日「エコノミストの眼」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
櫨(はじ) 浩一のレポート
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