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長く働ける社会~人生100年時代の働き方改革~
櫨(はじ) 浩一
1――進む長寿化
2――長い人生をどう支えるか
もちろん年齢が高くなれば病気などで働けなくなる人の割合は高くなるので、こうした人達の生活は公的な制度で支援する必要がある。しかし、平均寿命の延びと並行して高齢者の健康は大きく改善しており、同じ年齢で比較すれば現在の高齢者ははるかに若々しく元気である。1951年に連載が始まったまんがサザエさんの両親は50代前半という設定であることは以前にもこのコラムで書いたが、まんがに出てくるキャラクターは現在では10歳以上は年配だという印象を受ける。昔は働くには年配過ぎると考えられていた年齢でも、現在では働くことに支障がなくなっている。
文化的な違いのためか欧米では高齢になって働くことへの抵抗があるが、幸いなことに日本の高齢者には働く意欲があり、就業の機会さえあれば働いて生活を支えたいと考えている。これは、高齢化への対応で日本にとって非常に幸運なことだ。公的年金制度改革では、負担増を迫られる若者と給付が削減される高齢者の対立という構図で議論されることが多いが、対立を緩和するカギは高齢者が働くことによって収入を得て自力で生活を支えることができるようにすることだ。
3――働き方改革で長く働ける社会を
国際的に、15歳から65歳までの年齢層が生産活動に従事する生産年齢人口と定義されている。しかし、国際比較をする場合はともかくとして、15歳から働き始め、65歳で働くのをやめるというモデルは日本の実情には合わなくなっている。高等教育への進学率が高まって下限がもっと高まっている一方で、健康で65歳以上でも十分働き続けることが可能になっているので上限も高まっている。
これまでと同じ65歳までの人口だけを対象にしていたのでは、企業は人材や労働力の不足に直面する恐れが大きい。高齢者を企業内でうまく活用していくことは、社会にとって望ましいだけではなく、企業にとっても他社との競争や生き残りのために不可欠となるはずだ。
長時間労働の改善が重要であることは言うまでもないが、人生100年時代を見据えれば、長く働ける社会を実現することも働き方改革の重要テーマであろう。
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
研究・専門分野
(2016年12月29日「エコノミストの眼」)
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