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- 企業物価指数(2018年9月)~国内企業物価は上昇基調が続くが、非鉄金属製品の下落が下押し~
2018年10月11日
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1.国内企業物価は上昇基調が続く
10月11日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2018年9月の国内企業物価は前年比3.0%(8月:同3.0%)と上昇率は2ヵ月連続で横ばいとなり、事前の市場予想(QUICK集計:同2.9%)を小幅に上回った。伸び率は21ヵ月連続でプラスとなっており、7月以降は3%台で推移している。
前月比では0.3%(8月:同0.0%)と横ばいとなった前月から0.3ポイント拡大し、2ヵ月ぶりのプラスとなった。7~9月に適用される夏季電力料金の引き上げの影響を除いたベースでは前月比0.2%(7月:同0.0%)となった。国内企業物価は上昇基調が続いている。
前月比では0.3%(8月:同0.0%)と横ばいとなった前月から0.3ポイント拡大し、2ヵ月ぶりのプラスとなった。7~9月に適用される夏季電力料金の引き上げの影響を除いたベースでは前月比0.2%(7月:同0.0%)となった。国内企業物価は上昇基調が続いている。
非鉄金属(8月:前月比▲2.4%→9月:同▲0.5%)は、米中の関税引き上げによる中国経済の減速懸念を受けて、銅価格の国際市況が軟調に推移していることから、3ヵ月連続で下落した。一方、石油・石炭関連(8月:前月比▲0.6%→9月:同2.3%)は2ヵ月ぶりに上昇した。米国のイランへの経済制裁発動を11月に控え、供給懸念から原油価格は高値圏での推移が続いており、ガソリン(前月比2.3%)、灯油(同4.0%)、軽油(同3.7%)など石油製品(同2.3%)が上昇に転じたことが影響した。また、原油価格の上昇が遅れて反映される化学製品(前月比0.3%)は6ヵ月連続の上昇、電力・都市ガス・水道(同0.7%)は2ヵ月連続で上昇(夏季電力料金調整後ベース)している。国内企業物価の前月比寄与度をみると、非鉄金属と飲食料品・農林水産物がマイナス寄与となったが、石油・石炭製品のプラス寄与が全体を押し上げたほか、電力・都市ガス・水道など幅広い品目がプラス寄与となった。
2.輸入物価は小幅ながら2ヵ月ぶりに上昇
9月の輸入物価は、契約通貨ベースでは前月比0.1%(8月:▲同0.4%)と小幅ながら2ヵ月ぶりに上昇した。また、9月のドル円相場は、前月比0.7%の円安水準になったことから、円ベースでは前月比0.7%(8月:同▲0.6%)と輸入物価を押し上げた。前年比(円ベース)は10.9%(8月:同12.2%)と4ヵ月連続で二桁上昇が続いている。契約通貨ベースでみると、石油・石炭・液化天然ガス(8月:前月比0.6%→9月:同0. 8%)は、石油・同製品(前月比▲0.6%)が下落したものの、天然ガス(同4.9%)の上昇を受けて6ヵ月連続でプラスを維持している。一方、金属・同製品(8月:前月比▲5.4%→9月:同▲1.1%)は、金属素材(前月比▲1.6%)や非鉄金属(同▲1.5%)の下落を受けて、3ヵ月連続で下落している。また、鶏肉(前月比▲18.9%)やとうもろこし(同▲5.3%)、大豆(同▲2.8%)の下落を受けて、飲食料品・食料用農林水産物(8月:前月比▲0.4%→9月:同▲1.5%)は下落幅が拡大した。とうもろこしや大豆は、米国産の豊作や米中貿易摩擦による中国の輸入減少を懸念して国際商品価格が下落していることが影響しているとみられる。
原油価格は米国のイラン経済制裁による供給懸念などから高値圏で推移しているものの伸び率が鈍化しており、非鉄金属は米中貿易摩擦の懸念などから軟調に推移していることから、輸入物価は横ばい圏での推移が続いている。また、9月のドル円相場は円安ドル高が進行したが、10月に入ると巻き戻しの動きが強まっている。ドル円は総じて110~115円のレンジ圏での推移が続いており、輸入物価に与える影響は限定的となろう。
3.先行きは川上から川下への上昇圧力が弱まる
9月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比18.9%(8月:同21.9%)、中間材が前年比5.2%(8月:同5.3%)、と上昇率が前月から縮小したが、最終財は前年比0.7%(8月:同0.6%)と上昇率を拡大した。川上にあたる素原材料の大幅上昇を受けて、緩やかながら川下の最終財への価格転嫁の動きが進んでいる。消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比0.8%と5ヵ月連続のプラスとなっている。
ただし、世界経済の回復に伴う需要拡大から上昇傾向にあった国際商品市況は、米中貿易摩擦の激化による世界経済への先行き懸念から頭打ちとなっている。前年比でみた素原材料は伸び率が鈍化していき、先行きは川上から川下への上昇圧力が弱まってくると見込まれる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年10月11日「経済・金融フラッシュ」)
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白波瀨 康雄
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