2018年09月19日

貿易統計18年8月-原油高と自然災害による供給制約の影響で貿易赤字が続く

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易赤字が続く

財務省が9月19日に公表した貿易統計によると、18年8月の貿易収支は▲4,446億円と2ヵ月連続の赤字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲4,477億円、当社予想は▲4,030億円)通りの結果となった。輸出は前年比6.6%(7月:同3.9%)と前月から伸びを高めたが、輸入が原油高の影響などから前年比15.4%(7月:同14.6%)と輸出を大幅に上回る伸びとなったため、貿易収支は前年に比べ▲5,414億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比1.1%(7月:同0.9%)、輸出価格が前年比5.4%(7月:同3.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比4.5%(7月:同4.1%)、輸入価格が前年比10.5%(7月:同10.2%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
8月はもともとお盆休みの影響で輸出量が少なく貿易赤字になりやすい季節性があるが、季節調整済の貿易収支も▲1,904億円(7月は▲1,023億円)と2ヵ月連続の赤字となった。貿易収支は実勢として赤字となっている。輸出は前月比0.4%(7月:同1.0%)と2ヵ月連続で増加したが、輸入が前月比1.6%(7月:同3.7%)と輸出の伸びを上回った。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 8月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=77.0ドル(当研究所による試算値)と、7月の76.8ドルから若干上昇した。足もとのドバイ原油価格は70ドル台半ばとなっており、通関ベースの原油価格は9月以降も70ドル台後半で高止まりすることが見込まれる。貿易収支(季節調整値)は先行きも赤字の月が多くなるだろう。

2.自然災害の影響で9月の輸出は下振れの公算

8月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比3.3%(7月:同▲4.8%)、EU向けが前年比4.7%(7月:同1.1%)、アジア向けが前年比0.4%(7月:同3.3%)となった。
季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比11.6%(7月:同▲6.8%)、EU向けが前月比4.5%(7月:同▲2.5%)、アジア向けが前月比1.8%(7月:同▲0.9%)、全体では前月比0.6%(7月:同▲0.1%)となった。7、8月の平均を4-6月期と比べるとアジア向けは0.1%高いが、米国向けが▲4.4%、EU向けが▲0.6%、全体が▲1.5%低くなっている。

7、8月と豪雨、台風上陸による生産休止という供給制約が輸出にも一定の悪影響を及ぼしたとみられるが、9月は台風21号による関西空港の閉鎖、北海道地震による生産休止の影響などから輸出の下振れ幅はさらに大きくなる可能性が高い。7-9月期の輸出数量は前期比で明確なマイナスとなることが予想される。

また、関西空港は外国人入国者の約4分の1を占めるため、財の輸出入以上に影響が大きいのがインバウンド需要(サービスの輸出入)である。9月の訪日外国人数は大幅に減少するだろう。7-9月期のGDP統計の財貨・サービスの輸出は前期比で減少し、外需寄与度は4-6月期に続きマイナスとなる可能性が高い。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/貿易(財)、出入国者に占める関西空港の割合(2017年)
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年09月19日「経済・金融フラッシュ」)

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