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- 老いる中国、介護保険制度はどれくらい普及したのか(2018)。-15のパイロット地域の導入状況は?
2018年08月27日
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申請は、被保険者または代理人(家族)が行う。認定は、市が認定した医療機関の医師、評価機関の評定員(2名以上)が、日常生活における能力(ADL)などの評価に基づいて行う。なお、基本的日常生活動作(BADL)について、多くの地域では、評価方法としてBarthel Index(バーセルインデックス、10項目・100点満点評価)を採用している。また、認知症を給付対象としている地域では、バーセルインデックスのみでは評価ができない点からも、独自の評価方法や基準を導入していると考えられる。
基本的には、要介護度が重い者に限定しているため、認定は1段階となっている。日本のように、要支援(2段階)、要介護(5段階)といった介護の必要度に応じた認定はまだ少ない状況だ。ただし、2016年以降、制度の導入が進む中で、要介護度が中程度である者や、認知症も対象として加える動きもある。なお、認定された場合は、ウェブサイト上で氏名等が一定期間公表される(基本的には7日間ほど)。
サービスの利用開始年齢については、基本的には設けられていない。中国の場合、介護が医療の枠組みの延長線上にあるという位置づけから、給付開始年齢を設けておらず、対象を高齢者に絞っていないという特徴がある(但し、上海市を除く)4。日本の場合は65歳以上が対象であり、40~64歳は特定疾病の場合に認定されるが、中国の場合、寝たきりなど長期の療養や介護が必要となれば、現役世代でも認定対象となるのだ。
4 医療と介護の連携を強化するとして、中国語で「医養結合」とされ、中国における介護保険政策のキーワードの1つとなっている。
基本的には、要介護度が重い者に限定しているため、認定は1段階となっている。日本のように、要支援(2段階)、要介護(5段階)といった介護の必要度に応じた認定はまだ少ない状況だ。ただし、2016年以降、制度の導入が進む中で、要介護度が中程度である者や、認知症も対象として加える動きもある。なお、認定された場合は、ウェブサイト上で氏名等が一定期間公表される(基本的には7日間ほど)。
サービスの利用開始年齢については、基本的には設けられていない。中国の場合、介護が医療の枠組みの延長線上にあるという位置づけから、給付開始年齢を設けておらず、対象を高齢者に絞っていないという特徴がある(但し、上海市を除く)4。日本の場合は65歳以上が対象であり、40~64歳は特定疾病の場合に認定されるが、中国の場合、寝たきりなど長期の療養や介護が必要となれば、現役世代でも認定対象となるのだ。
4 医療と介護の連携を強化するとして、中国語で「医養結合」とされ、中国における介護保険政策のキーワードの1つとなっている。
5|サービスの利用―現物給付を軸としながらも、現金給付を併用するケースも
利用者として認定された場合、市が認定した事業者の在宅、施設、通所サービスを利用することで、給付を受けることができる。ただし、どのサービスを、どれくらい、どの程度の自己負担割合で利用できるかは、地域で異なる。
15地域をみてみると、利用可能なサービスについては、在宅介護や、要介護度が重い者を対象とした施設介護を中心に給付がなされている(次頁図表7)。自身で通うことができる通所介護については給付対象となっていない地域が多い。在宅介護は、入浴や排泄、食事などの身体介護を中心とし、それに一部の看護が加えられており、日本の生活援助にあたる掃除や洗濯は含まれない地域が多い。施設介護は療養型医療施設と介護施設があるが、療養型医療施設の場合は、当該地域の医療保険規定を適用するケースもある。
サービスの給付は、1日、1ヶ月という単位で給付限度額や利用時間を定めている。例えば、1日あたりの給付限度額は、概ね数十元程度に抑えられおり、給付限度額を超える部分については全額自己負担となる。地域によっては要介護が中程度である者も対象となっており、例えば、山東省青島市、江蘇省南通市、上海市、江蘇省蘇州市などは、要介護度に応じて、サービス内容やその給付限度額を定めている。
在宅サービスについては、多くの地域が現物給付となっているが、介護人材の確保や十分なサービスの供給が難しいといった観点から、江西省上饒市のように、家族に現金給付をしている地域もある。また、新疆ウイグル自治区、安徽省安慶市のように、市が認定している事業者を利用した場合は現物給付、市が認定していない事業者を利用し、届け出た場合は、被保険者に現金給付と、併用している地域もある。
施設については、多くの地域が現物給付となっている。給付については、1日、1ヶ月という単位で給付限度額が設けられているが、療養型医療施設については、山東省青島市のように、病院のランク毎に給付限度額を設定したり、上海市、江蘇省蘇州市のように、公的医療保険の規定に基づいた給付を行う地域もあり、その場合は給付限度額が大幅に増加することになる。
利用者として認定された場合、市が認定した事業者の在宅、施設、通所サービスを利用することで、給付を受けることができる。ただし、どのサービスを、どれくらい、どの程度の自己負担割合で利用できるかは、地域で異なる。
15地域をみてみると、利用可能なサービスについては、在宅介護や、要介護度が重い者を対象とした施設介護を中心に給付がなされている(次頁図表7)。自身で通うことができる通所介護については給付対象となっていない地域が多い。在宅介護は、入浴や排泄、食事などの身体介護を中心とし、それに一部の看護が加えられており、日本の生活援助にあたる掃除や洗濯は含まれない地域が多い。施設介護は療養型医療施設と介護施設があるが、療養型医療施設の場合は、当該地域の医療保険規定を適用するケースもある。
サービスの給付は、1日、1ヶ月という単位で給付限度額や利用時間を定めている。例えば、1日あたりの給付限度額は、概ね数十元程度に抑えられおり、給付限度額を超える部分については全額自己負担となる。地域によっては要介護が中程度である者も対象となっており、例えば、山東省青島市、江蘇省南通市、上海市、江蘇省蘇州市などは、要介護度に応じて、サービス内容やその給付限度額を定めている。
在宅サービスについては、多くの地域が現物給付となっているが、介護人材の確保や十分なサービスの供給が難しいといった観点から、江西省上饒市のように、家族に現金給付をしている地域もある。また、新疆ウイグル自治区、安徽省安慶市のように、市が認定している事業者を利用した場合は現物給付、市が認定していない事業者を利用し、届け出た場合は、被保険者に現金給付と、併用している地域もある。
施設については、多くの地域が現物給付となっている。給付については、1日、1ヶ月という単位で給付限度額が設けられているが、療養型医療施設については、山東省青島市のように、病院のランク毎に給付限度額を設定したり、上海市、江蘇省蘇州市のように、公的医療保険の規定に基づいた給付を行う地域もあり、その場合は給付限度額が大幅に増加することになる。
自己負担については、地域毎、サービス毎に異なる。ただし、国として在宅介護を中心に考えていることからも、在宅介護の自己負担割合は、施設介護よりも総じて軽減されている。
また、加入している公的医療保険によって自己負担割合を決める地域もある(山東省青島市、吉林省長春市)。特に、最も早い時期に介護保険を導入した山東省青島市では、療養型医療施設でサービスを受ける場合、医療保険の規定にあるように病院のランクに応じて1人あたりの給付限度額が異なるなど、医療と介護の結びつきが強い地域ともいえよう。
また、加入している公的医療保険によって自己負担割合を決める地域もある(山東省青島市、吉林省長春市)。特に、最も早い時期に介護保険を導入した山東省青島市では、療養型医療施設でサービスを受ける場合、医療保険の規定にあるように病院のランクに応じて1人あたりの給付限度額が異なるなど、医療と介護の結びつきが強い地域ともいえよう。
(2018年08月27日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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