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- 東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2018年8月)-オフィス市況のピークアウトは2019年後半に後ずれ
2018年08月13日
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3. 企業の賃料負担力が高まらず伸び悩むオフィス賃料
東京都心部Aクラスビルの成約賃料(オフィスレント・インデックス6)は、2015年3Qの35,652円/坪をピークに頭打ちの状況が続いていたが、2018年2Qは36,952円/坪(前期比+5.5%、前年同期比+6.3%)と、リーマンショック後のピークを上抜けた。大量供給を背景とした市況悪化懸念が後退したことで、ようやく賃料上昇に弾みがついた。Aクラスビルに出遅れていたBクラスビル、Cクラスビルの成約賃料は緩やかな上昇基調を維持し、2018年2QはBクラスビル20,732円/坪、Cクラスビルは15,919円/坪となった。しかし、リーマンショック後の賃料下落幅のうちAクラスビルで67%、Bクラスビルで52%、Cクラスビルで51%を取り戻したに過ぎない。(図表-4)。
6 三幸エステートとニッセイ基礎研究所が共同で開発した成約賃料に基づくオフィスマーケット指標。
7 森ビル「2007年 東京23区オフィスニーズに関する調査」(2007.12.20)によれば、ビル選定にあたって重視する条件として、金融・保険業のうち74%は賃料が高くなっても執務スペースの確保を優先すると回答し、同68%は賃料が高くなっても立地を優先すると回答している。
8 森ビル「2017年東京23区オフィスニーズに関する調査」(2017.12.20)
9 オフィスレント・インデックスは、共益費を除いた成約賃料の指数である。共益費を5,000円程度と仮定すれば、共益費を含んだAクラスビルの成約賃料は2018年2Q時点で、42,000円/坪程度と想定される。
4. 東京都心部Aクラスビル市況見通し
過去半年間のオフィス市況が想定以上に堅調に推移していることを受けて、2018年2月に発表した東京都心部Aクラスビルの市況見通し10を改定した(図表-7)。
その結果、東京都心部Aクラスビルの賃料は、標準シナリオでは、2019年3Qのピークまで2018年2Q対比+0.7%上昇した後、2022年1Qまでにピークから▲17.3%の下落。また、楽観シナリオでは、2019年3Qまで2018年2Q対比+7.8%上昇した後、2022年1Qまでにピークから▲12.7%下落。悲観シナリオでは、2022年1Qまで2018年2Q対比▲27.5%下落することが見込まれる。
Aクラスビルの空室率は、2019年3Qまではおおむね横ばいで推移した後、2019年4Qから徐々に上昇(悪化)した後、2021年前半をピークに低下(改善)に転じる見通しである。
以上のように、2019年3Qまでは堅調なオフィス需要を背景に、東京オフィス市況は底堅く推移するが、その後は2019年10月の消費税増税や2020年の大量供給を控えて、ピークアウトする見込みだ。しかし、リーマンショック後に見られたようなオフィス需要の急減は想定していない。そのため、空室率は穏やかな上昇にとどまり、成約賃料(標準シナリオ)は2022年1Qのボトムにおいても2015年初の水準(31,000円/坪前後)で下げ止まることが予想される。
その結果、東京都心部Aクラスビルの賃料は、標準シナリオでは、2019年3Qのピークまで2018年2Q対比+0.7%上昇した後、2022年1Qまでにピークから▲17.3%の下落。また、楽観シナリオでは、2019年3Qまで2018年2Q対比+7.8%上昇した後、2022年1Qまでにピークから▲12.7%下落。悲観シナリオでは、2022年1Qまで2018年2Q対比▲27.5%下落することが見込まれる。
Aクラスビルの空室率は、2019年3Qまではおおむね横ばいで推移した後、2019年4Qから徐々に上昇(悪化)した後、2021年前半をピークに低下(改善)に転じる見通しである。
以上のように、2019年3Qまでは堅調なオフィス需要を背景に、東京オフィス市況は底堅く推移するが、その後は2019年10月の消費税増税や2020年の大量供給を控えて、ピークアウトする見込みだ。しかし、リーマンショック後に見られたようなオフィス需要の急減は想定していない。そのため、空室率は穏やかな上昇にとどまり、成約賃料(標準シナリオ)は2022年1Qのボトムにおいても2015年初の水準(31,000円/坪前後)で下げ止まることが予想される。
10 2018年2月に発表した市況見通しは佐久間誠「東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2018年)-2018年~2024年のオフィス賃料・空室率」(2018.2.8)を参照のこと。
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2018年08月13日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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