2018年08月09日

東京オフィス市場は一段と改善。Jリート市場は好調維持。-不動産クォータリー・レビュー2018年第2四半期

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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3.不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
三鬼商事によると、2018年6月の都心5区空室率は前月比0.1%低下の2.6%、平均募集賃料は前月比0.4%上昇し54ケ月連続でプラスとなった。また、他の主要都市においても、オフィスの新規供給が限定的で需給が逼迫する中、空室率の低下が続いており、札幌の空室率(2.3%)は東京を下回っている(図表-10)。
図表-10 主要都市の平均空室率
三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2018年第2四半期の東京都心部Aクラスビル2の賃料は36,952円(前期比+5.5%)、空室率は前期比0.6%低下の1.2%となった(図表-11)。空室率は、ファンドバブル期(2006年~2007年)と同水準まで低下した。空室率の低下に伴い、賃料はリーマンショック後の最高値を更新した。
図表-11 東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
森ビルの「2018年東京23区の大規模オフィスビル供給量調査」によると、東京都区部では、2018年に146万m2、2020年には168万m2の高水準の新規供給が予定されている(図表-12)。ただし、足元の需給が逼迫する中で、建設中のビルにも引き合いが強く、日経不動産マーケット情報によれば、2018年4月時点で、未竣工ビル(2019年4月までに竣工予定)の3割超がすでに満室とのことである。2018年に竣工するビルの多くはテナントが決まりつつあり、市場の関心は2020年に竣工予定のビルに向いている模様である。
図表-12 東京23区の大規模オフィスビル供給量の推移
 
2 Aクラスビルは、エリア、延床面積(1万坪以上)、基準階面積(300坪以上)、築年数(15年以内)、設備のガイドラインを基に、個別ビル単位で立地・建物特性を重視し三幸エステートが選定。


(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は上昇している。三井住友トラスト基礎研究所・アットホーム「マンション賃料インデックス」によれば、2018年第1四半期の賃料指数は、シングルタイプが前年同期比+1.9%、コンパクトタイプが+2.5%、ファミリータイプが+3.5%となり、全てのタイプで上昇した(図表-13)。また、東京主要3区(港区、世田谷区、渋谷区)の高級賃貸マンション賃料も上昇傾向で推移しており、2018年第2四半期は過去最高水準の17,851円/月・坪に達した(図表-14)。

総務省「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2018年4-6月期の東京都区部の転入超過数3は、12,516人(前年同期比+821人)であった。継続的な人口流入に支えられた東京の賃貸マンション需要は底堅く、賃料の安定的な上昇に寄与していると考えられる。
図表-13 東京23区のマンション賃料指数
図表-14 高級賃貸マンションの賃料と空室率
 
3 転入者数-転出者数


(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業動態統計などによると、2018年4-6月期の小売販売額(既存店、前年同期比)は、百貨店が+1.5%、スーパーが▲1.3%、コンビニエンスストアが+0.2%となった(図表-15)。
図表-15 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存店、前年比)
2018年第1四半期の東京主要商業エリアの店舗賃料は、銀座が30,855円/月・坪(前期比+4.9%)、表参道が34,678円/月・坪(前期比+1.2%)、新宿が27,657円/月・坪(前期比▲8.3%)、渋谷が28,250円/月・坪(前期比+2.0%)、池袋が23,863円/月・坪(前期比+14.9%)となり、新宿を除くすべてのエリアで上昇した(図表-16)。インバウンド消費や国内富裕層の消費は堅調に推移し、出店ニーズが高まる中、募集物件は少なく需給が逼迫しており、賃料は上昇傾向で推移している。
図表-16 東京主要商業エリア店舗賃料(全フロア・四半期)
全国61都市のホテル客室稼動率は、2018年2月以降、80%を上回り続けており、高稼動を維持している。2018年5月の客室稼働率は80.6%となり、過去最高水準であった昨年5月(80.7%)とほぼ同水準であった。(図表-17)。訪日外国人客数の増加は継続しており、65ヶ月連続で前年同月を上回った。(図表-18)。航空路線の拡充やクルーズ船寄港数の増加、ビザ緩和などを背景に引き続き好調を維持している。
図表-17 ホテル客室稼働率の暦年月次ベース(全国)
図表-18 訪日外国人客数(月次)
2018年4-6月の延べ宿泊者数は、前年同月比2.0%増加したが、その内、外国人が前年同月比13.9%増加し、日本人宿泊者数の低迷(前年同月比▲0.4%)を補った(図表-19)。
図表-19 延べ宿泊者数の推移(月次、前年比)
シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2018年第2四半期)は前期比1.6%低下の5.3%、近畿圏は前期比3.7%低下の17.5%となった(図表-20)。インターネット通販市場4の拡大に伴い、Eコマース関連企業を中心として需要は旺盛な模様である。ただし、CBREによれば首都圏の空室率は2018年末まで概ね横ばいで推移するが、2019年は四半期平均で15.4万坪の新規供給が見込まれ、上昇に転じる可能性があるとのことである。

また、一五不動産情報サービスによると、2018年4月の東京圏の募集賃料は前期比2.4%上昇し4,300円/坪となった。しかし、今後は、空室率の悪化や人手不足に伴う物流コストの上昇5、等が賃料の押し下げ要因となる可能性がある。
図表-20 大型マルチテナント型物流施設の空室率
 
4 吉田資『インターネット通販市場の成長と物流施設利用の方向性(1)~インターネット通販市場の成長可能性』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2018年7月20日)
5 吉田資『人手不足下における物流コストの現状と今後の方向性』(ニッセイ基礎研究所、基礎研REPORT、2018年5月号)
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

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