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2018年08月09日
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1.貸出動向: 不動産貸出への依存度はやや低下

7月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、同月のドル円レートの前年比円高幅(見た目の伸び率の押し下げ要因)は0.9%と6月からほぼ変わらなかったため、特殊要因調整後の伸び率は見た目の伸び率同様やや低下し、前年比2.1%台になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは6月分まで。

6月の新規貸出平均金利は、短期(一年未満)が0.637%(5月は0.534%)、長期(1年以上)が0.85%(5月は0.684%)とともに上昇した(図表5)。もともと月々の振れが大きい統計なだけに、これが下げ止まりを意味しているのかは、現時点では不明だ。
また、6月の新規貸出金利がやや持ち直したとはいえ、銀行貸出のストックベースでの金利低下はまだ進行中だ。過去に貸し出した比較的高金利の貸出が期限を迎え、現在の超低金利の貸出に置き換わっているためである。
日銀は7月末の決定会合で長期金利誘導目標の変動幅拡大を許容し、足元の長期金利はやや上昇しているが、この程度では銀行貸出の利回り改善に与える影響は限定的とみられる。
2.主要銀行貸出動向アンケート調査: 資金需要は企業が鈍化・個人向けは減少
日銀が7月19日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2018年4-6月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は2と前回(2018年1-3月期)の3から低下した。低下は2四半期連続となる。同期間の銀行貸出の伸びは停滞していたため、実際の貸出動向と比較においても違和感はない(図表6)。
企業規模別では、大企業向けが0(前回は-1)とマイナス(「減少」との回答が優勢)を脱したものの、これまで高いプラス(「増加」との回答が優勢)を維持していた中小企業向けが1(前回は6)と低下した点が響いた。中小企業向けの牽引力が弱まったことで、4-6月期の資金需要は牽引役を欠く状況となった(図表7)。
また、個人向け資金需要判断D.I.は-2と、前回の3から低下し、マイナスに転じた(図表6)。低下は3四半期連続となる。主力の住宅ローンが-1(前回は4)とマイナス化したうえ、消費者ローンも-3(前回も-3)とマイナス圏に留まったためだ。住宅ローン需要が「(やや)減少」とした先にその要因を尋ねた問いでは、「住宅投資の減少」を挙げた先が最も多かった。
一方、今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が4、個人向けが2となった。企業向け・個人向けともに、全体として資金需要の底入れが見込まれている(図表6)。
企業規模別では、大企業向けが0(前回は-1)とマイナス(「減少」との回答が優勢)を脱したものの、これまで高いプラス(「増加」との回答が優勢)を維持していた中小企業向けが1(前回は6)と低下した点が響いた。中小企業向けの牽引力が弱まったことで、4-6月期の資金需要は牽引役を欠く状況となった(図表7)。
また、個人向け資金需要判断D.I.は-2と、前回の3から低下し、マイナスに転じた(図表6)。低下は3四半期連続となる。主力の住宅ローンが-1(前回は4)とマイナス化したうえ、消費者ローンも-3(前回も-3)とマイナス圏に留まったためだ。住宅ローン需要が「(やや)減少」とした先にその要因を尋ねた問いでは、「住宅投資の減少」を挙げた先が最も多かった。
一方、今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が4、個人向けが2となった。企業向け・個人向けともに、全体として資金需要の底入れが見込まれている(図表6)。
3.マネタリーベース: 今後は日銀政策修正の影響に注目
7月末のマネタリーベース残高は前月末から0.1兆円の微増に留まった。季節性を除外した季節調整済み系列(平残)で見でも前月比0.9兆円増に留まる(図表10)。日銀の長期国債買入れペースは前年比40兆円増台で推移しており、「80兆円」のめどを大きく下回った状態が続いている(図表11)。さらに、日銀は2016年9月から短期国債の保有高を圧縮してきたため、国債買入れの裏側にあるマネタリーベースの減速に繋がってきた。今年に入ってからは、短期国債の圧縮が一服(残高減少のためとみられる)しており、マネタリーベース残高の下支えとなっている。
今後は長期国債買入れペースがどうなるかが注目される。日銀は7月末の決定会合で政策修正を実施。長期金利の変動許容幅をこれまでの倍に拡大し、国債買入れの弾力化を打ち出した。政策修正によって、国債買入れが従来以上のペースで減速していくのかが焦点となる。
今後は長期国債買入れペースがどうなるかが注目される。日銀は7月末の決定会合で政策修正を実施。長期金利の変動許容幅をこれまでの倍に拡大し、国債買入れの弾力化を打ち出した。政策修正によって、国債買入れが従来以上のペースで減速していくのかが焦点となる。
(2018年08月09日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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