- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 中国経済 >
- 世界経済勢力図の現在・過去・未来
2018年08月08日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1―現在の世界経済勢力図
2―消費と投資では異なる勢力図
3―世界経済勢力図の変遷
その後、2010年に日本を抜き世界第二位の経済大国になったのが中国である。
1978年に改革開放に動きだした中国は、旧ソ連諸国に先駆けて1980年にはIMFと世界銀行に加盟、1993年には市場経済を通じて社会主義を実現するとして憲法を改正し「社会主義市場経済」へ移行、2001年には世界貿易機関(WTO)にも加盟した。米国を発火点に世界経済を揺るがしたリーマンショック(2008年)に際しても、欧米先進国の成長率が軒並みマイナスに落ち込む中で、中国はいち早く大型景気対策を打って前年比9.2%増の高成長を維持、日米を大きく上回る経済成長を続けて世界第二位に浮上した。
1978年に改革開放に動きだした中国は、旧ソ連諸国に先駆けて1980年にはIMFと世界銀行に加盟、1993年には市場経済を通じて社会主義を実現するとして憲法を改正し「社会主義市場経済」へ移行、2001年には世界貿易機関(WTO)にも加盟した。米国を発火点に世界経済を揺るがしたリーマンショック(2008年)に際しても、欧米先進国の成長率が軒並みマイナスに落ち込む中で、中国はいち早く大型景気対策を打って前年比9.2%増の高成長を維持、日米を大きく上回る経済成長を続けて世界第二位に浮上した。
4―5年後の世界経済勢力図と日本の立ち位置
このように世界の経済勢力図が米国一極体制から米中二極体制へと変化し、米中両国の覇権争いがますます深刻化していくと見られる中で、日本の立ち位置が難しくなってきた。日本と米国は同盟関係にあり、自由民主主義の政治制度、自由資本主義の経済制度、基本的人権の尊重など価値を共有する面が多いものの、米国が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱し、2020年以降の地球温暖化対策の国際的枠組みを定めたパリ協定からも離脱、イラン核合意からも離脱するなど意見が対立する場面も増えつつある。
一方、マルクス・レーニン主義(人民民主主義)の政治制度を堅持し共産党による国家指導を正当化する中国とは価値観の面で大きな隔たりがあり、国家資本主義の経済制度や基本的人権の軽視に関しても相容れない。しかし、日中平和友好条約締結40周年を迎える中国とは経済面で強い結び付きがある。
そして、今回のように中国が対外開放を進め輸入関税を引き下げるなど自由化改革を進める方向を堅持し、国際的枠組みの下で紛争を解決するスタンスを維持するなら、米国と意見が対立したとき中国と協力する方が良い局面も増えてくるだろう。
米中二極体制の下、米中両国といかに関わり自らの利益を守っていくのか、日本の外交力が問われることになりそうだ。その点、EUがここもとの米欧貿易摩擦で取ったスタンスは参考になるだろう。EUは6月1日、米国の輸入制限に対してWTOに紛争解決に向けた協議を要請すると同時に、中国の知的財産権侵害に対してもWTOの紛争処理手続きを開始、米中どちらにも偏らず自らの利益を守るスタンスで臨んだ。日本にとってはEUとの協力もその重要性を増しそうである。
一方、マルクス・レーニン主義(人民民主主義)の政治制度を堅持し共産党による国家指導を正当化する中国とは価値観の面で大きな隔たりがあり、国家資本主義の経済制度や基本的人権の軽視に関しても相容れない。しかし、日中平和友好条約締結40周年を迎える中国とは経済面で強い結び付きがある。
そして、今回のように中国が対外開放を進め輸入関税を引き下げるなど自由化改革を進める方向を堅持し、国際的枠組みの下で紛争を解決するスタンスを維持するなら、米国と意見が対立したとき中国と協力する方が良い局面も増えてくるだろう。
米中二極体制の下、米中両国といかに関わり自らの利益を守っていくのか、日本の外交力が問われることになりそうだ。その点、EUがここもとの米欧貿易摩擦で取ったスタンスは参考になるだろう。EUは6月1日、米国の輸入制限に対してWTOに紛争解決に向けた協議を要請すると同時に、中国の知的財産権侵害に対してもWTOの紛争処理手続きを開始、米中どちらにも偏らず自らの利益を守るスタンスで臨んだ。日本にとってはEUとの協力もその重要性を増しそうである。
(2018年08月08日「基礎研マンスリー」)
三尾 幸吉郎
三尾 幸吉郎のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/23 | 図表でみる世界の外為レート-世界各地の通貨をランキングすると、日本円はプラザ合意を上回るほどの割安で、人民元はさらに安い | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2025/04/15 | 図表でみる世界の民主主義-日本の民主主義指数は上昇も、世界平均は低下。世界ではいったい何が起きているのか? | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/12/16 | 図表でみる世界のGDP-日本が置かれている現状と世界のトレンド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
2024/07/30 | 図表でみる世界の人口ピラミッド | 三尾 幸吉郎 | 基礎研レター |
新着記事
-
2025年07月04日
金融安定性に関するレポート(欧州)-EIOPAの定期報告書の公表 -
2025年07月04日
「持ち家か、賃貸か」。法的視点から「住まい」を考える(1)~持ち家を購入することは、「所有権」を得ること -
2025年07月04日
米雇用統計(25年6月)-非農業部門雇用者数が市場予想を上回ったほか、失業率が上昇予想に反して低下 -
2025年07月03日
ユーロ圏失業率(2025年5月)-失業率はやや上昇したが、依然低位安定 -
2025年07月03日
IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(14)-19の国・地域からの60社全てのIAIGsのグループ名が公開された-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【世界経済勢力図の現在・過去・未来】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
世界経済勢力図の現在・過去・未来のレポート Topへ