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- 中国経済:2018年上期を総括した上で今後の注目ポイントを探る
4.今後の注目点
[1] 落としどころの見えない米中貿易摩擦の行方
米国による対中制裁関税がこれから続々と発動される見通しである。トランプ米政権の対中制裁関税は4段階構成となっており、第1弾の340億米ドルに関しては25%の追加関税が7月6日に発動された。また、8月までには第2弾の160億米ドルを対象に25%の追加関税が発動される見込みであり、9月以降には既に品目リストを公表した第3弾の2000億米ドルを対象に10%の追加関税が発動される見込みで、合計は2500億米ドルに達する。そして、トランプ米大統領は対中輸入(約5000億ドル)の残り(約2500米ドル)も制裁関税の対象とする可能性を示唆した(第4弾)。
第3弾まで合計2500億米ドルの追加関税の中国経済への影響は、経済成長率を0.1~0.3%押し下げる程度に留まり、大きな打撃とはならないだろう。第3弾の2000億米ドルの品目リストを見ても、スマホやパソコン、それに多くの衣類など中国経済の「急所」となる品目が外されたからだ。しかし、第4弾で「急所」を攻撃されると、中国経済への影響は格段に大きくなると見ている。中国を対米輸出の最終組み立て拠点としてきた外資系企業や中国国内企業が、中国以外へと製造拠点を移す「トランプシフト」が加速して、国内の民間投資が失速してしまう恐れがでてくるからだ。一方、「急所」を攻撃された中国も、航空機に対する報復関税や米国製品の不買運動などこれまで回避してきた「急所」に踏み込むことになるため、米国経済にも大きな打撃となる恐れもある。今後しばらくは米中両政府の動きと、それ対応する民間企業の動向に細心の注意が必要である。
中国経済の現状を見ると個人消費や投資といった内需の減退が顕著となっている。
個人消費の減速に関しては、7月1日に自動車や日用品などの輸入関税が引き下げられた影響、すなわち買い控えの可能性が指摘されている。図表-16に示した消費者信頼感指数は高水準を維持、雇用指標にも変調は見られない。従って、個人消費の減速が一時的に留まる可能性は十分ある。8月14日に公表される7月の小売売上高は、輸入関税引き下げ後の動きが判明するだけに要注目だ。
また、投資の減速は国有・持ち株企業の伸び鈍化が主因だ。中国政府の金融リスク管理強化がブレーキを掛けることとなった。一方、6割を占める民間投資は米中貿易摩擦で不確実性が高まった割に底堅い(図表-17)。そして、中国政府は7月23日、「財政政策をさらに積極化させる」として研究開発費に対する減税を拡大するなど投資下支えに動いた。当面は中国政府の投資下支え策というプラス材料と米中貿易摩擦というマイナス材料が混在し、複雑な動きを示すことになりそうだ。
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三尾 幸吉郎
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(2018年07月27日「Weekly エコノミスト・レター」)
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