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介護職員不足への対応-「まんじゅう型」から「富士山型」への構造転換をどう進めるか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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1――はじめに
介護職員不足の対策の1つとして、経済連携協定(EPA)の枠組みや技能実習制度を活用して外国人を受け入れる取組みが進められている。しかし、これまでの育成人数は限定的なものにとどまっている2。今後、育成が進んだとしても、外国人の介護職員はいずれ本国に帰るものと想定され、恒久的な人員確保にはつながらない可能性がある。(以後、本稿では、外国人介護職員は検討対象としない。)
本稿では、介護人材不足の現状や、それを踏まえた対応についてみていくこととしたい。
1 「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」(厚生労働省, 平成27年6月24日)より。
2 2008年度に、EPAでの受け入れを開始。2017年度までにインドネシア、フィリピン、ベトナムの3ヵ国から、計3,529人を受け入れた(就労コースと就学コースの合計)。2011~17年度の介護福祉士国家試験で、累計719人の合格者が出ている。
2――介護の人材不足
3――介護職員の処遇とキャリアパス
通常、介護職員は、まず介護職員初任者研修を受ける。その後、国家資格である介護福祉士の資格を取得するというのが、資格面のキャリアアップとなる。
(1) 介護職員初任者研修
訪問介護を行う介護職は、介護職員初任者研修の修了が要件となる3。一方、施設介護の介護職員の場合は、この研修の修了前でも業務を行うことができる。
3 10科目について、130時間の講習を受ける研修。このうちスクーリングでの学習が89.5時間とされ、残り40.5時間は通信学習も可能とされている。研修の最後に、学習内容の習得度を評価する修了試験が行われ、合格することが必要となる。
介護福祉士は、介護職の中核を担う国家資格。専門的な知識や技術をベースに、自ら介護を行うだけでなく、介護者への指導を行うこともある。有資格者以外でも介護業務を行うことは可能なため、業務独占の資格ではない4。このことが、介護福祉士の社会的評価を阻害する要素の1つとみられる。
介護福祉士の資格取得には、3つのルートがある。実務経験ルートは、介護職として3年以上の実務経験を積み、450時間の研修を受けて受験資格を得る。国家試験に合格すると、介護福祉士となる。養成施設ルートは、大学、短大、専門学校などの介護福祉士養成施設を卒業すると、5年間暫定的に介護福祉士資格が付与される。国家試験に合格すれば、その後も引き続き資格を保持できる5。福祉系高校ルートは、福祉系高校を卒業して受験資格を得る6。国家試験に合格すると、介護福祉士となる。
4 有資格者のみが介護福祉士を名乗ることができるため、名称独占の資格となる。
5 試験の合格を資格取得要件とすべく見直しが図られたものの、過去3回施行が延長された。これは、介護人材の量的確保が困難になるとの懸念があったことによる。2022年度以降の養成施設卒業者から、試験の合格が資格取得要件となる予定。
6 資格試験は、筆記試験の1次試験と、実技試験の2次試験からなる。筆記試験は、「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」の4つの領域と、それらを横断的に問う総合問題からなり、220分の試験時間で、多肢選択形式の125問の問題からなる。一方、実技試験は、実際の介護の現場で想定される介護のシチュエーションが提示される。制限時間5分以内で適切な介助を行う。試験内容は、「一部機能の麻痺がある要介護者を想定し、その人が望む体勢にすみやかに移動させる」「着替えなどの作業補助を行う」など。なお、実務経験ルート、養成施設ルートは、実技試験は免除される。
(2018年07月24日「保険・年金フォーカス」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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