2018年07月17日

欧州保険会社が2017年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-

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(2)Prudentialの例
PrudentialのSCRとMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。

例えば、米国子会社のグループSCRへの集計方法について説明している。

E.2ソルベンシー資本要件(SCR)と最低自己資本要件(MCR)(未監査)

E.2.1方法論
ソルベンシーIIの規制報告及びリスク管理の目的のため、Prudentialは、EEA(欧州経済地域)ベースの各保険会社(即ち、The Prudential Assurance Company、Prudential Pensions Limited、Prudential International Assurance (PIA))の単体SCRと共に、グループSCRの計算に内部モデルを使用することの承認を受けている。これらの会社の資産及び負債は、ソルベンシーIIベースで評価されている。

米国の保険会社は、方法2:控除合算法、を使用してグループSCRに集計され、その結果、内部モデルは「部分的」として記述される。該当する米国の会社(Brooke Life Insurance Company、Jackson National Life Insurance Company ('Jackson')、Jackson National Life Insurance Company of New York (Jackson NY)そしてSquire Reassurance Company II)の場合、米国のRBC要件の250%を超える資本は、次のように取り扱われている:

・自己資本:現地の米国RBC利用可能資本マイナス米国RBC要件(会社行動レベル)の100%

・ソルベンシー資本要件:現地の米国RBC要件(会社行動レベル)の150%。そして

・米国の保険会社とグループのその他の会社との間では、分散効果は考慮されない。

米国の保険会社以外は、他の全ての会社が内部モデルの対象に含まれている。ソルベンシーIIの要件に沿って、資産運用会社及び金融事業を行っている非規制会社の資本要件は、それぞれのセクタールール及び想定セクタールールを使用して導出されている。

統合されたグループSCRは、内部モデル(方法1:会計連結法、を使用して)と方法2:分散化を考慮しない控除合算法、を使用して得られるSCRの合計として決定される。

(3)Aegonの例
AegonのSCRやMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。

なお、分散効果反映後ベースでのSCRの構成比は、ソルベンシーIIが57.5%、主として米国会社を対象とした控除合算法が38.4%、その他の金融セクターが4.1%となっている。

E.2ソルベンシー資本要件及び最低資本要件

E.2.1ソルベンシー資本要件
Aegonは、会計連結法と控除合算法のソルベンシーIIの下で利用可能なグループ統合手法の組み合わせを適用している。ソルベンシーII資本要件は、主としてEEAベースの保険及び再保険会社に対して、会計連結法を用いて適用される。ローカル要件は(暫定的に)同等な第三国(主として、米国の生命保険会社、バミューダ、日本、メキシコ、ブラジル)からの保険及び再保険会社に対して使用される。Aegon Bankはグループ・ソルベンシーIIの監督官であるDNB(オランダ国立銀行)によって要求されるように、グループ・ソルベンシー比率からは除かれる。

ソルベンシーII PIMに基づくSCR方法論
Aegonは、ソルベンシーIIの下でEEA保険会社の多数のソルベンシー・ポジションを計算するために、部分内部モデル(PIM)を使用している。Aegonの内部モデルは、内部モデル適用プロセスの一部として監督カレッジによって承認された。Aegonにとって、標準式(SF)方法に含まれている業界にわたる概算に対して、Aegon特有のモデリングと感応度を含んでいることから、PIMは実際のリスクのよりよい表現である。内部モデルの目的はSCRにおいてAegonの実際のリスクプロファイルをより良く反映することにある。Aegonにとって最も重要なリスクタイプは、ソルベンシーII PIMの一部として、内部モデルでカバーされ、あまり重要でないリスクタイプやビジネスユニットは、ソルベンシーII PIMの一部として、標準式でカバーされる。

下記が内部モデルの構造を表している図表である。

内部モデル構造

2|USP(Undertakings Specific Parameters:会社固有パラメータ)の使用状況
生命保険及び健康保険改訂リスク、損害保険(健康保険の一部を含む)の保険料及び責任準備金リスクに対しては、標準式で使用されているパラメータの代わりに、監督当局の承認を得て、会社固有のパラメータUSPを用いることができる。

大手6グループのうち、以下の3グループは、USPの使用に関して明示的に記述している。

・Allianzは、Fragonard Assurance S.A.とAWP P&C S.A.の損害保険の保険料リスクの標準偏差に対してUSPを使用している。

・Generaliは、Europe Assistance会社とイタリア会社DAS(Difesa Automobilistica Sinistri)のSCRの計算に、USPを使用している。

・Avivaは、SCRの算定にUSPを使用していない。

AXA、Prudential、Aegonについては文中に明示的な記載はないが、QRTsによれば、USPは使用していない。
 

4―まとめ

4―まとめ

今回のレポートでは、欧州大手保険グループ各社のSFCR(含むQRTs(定量的報告テンプレート))の内容から、長期保証措置と移行措置の適用による影響及びSCRとMCRの計算方法の説明について報告した。

次回のレポートでは、内部モデルの使用状況等について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2018年07月17日「保険・年金フォーカス」)

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レポート紹介

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