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欧州保険会社が2017年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-
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長期保証措置や移行措置の適用については、各社説明を行っているが、ここでは、これらの措置の適用による影響が最も大きいAvivaの例を紹介する。
まずは、技術的準備金の移行措置に関しては、以下の通りである。
D.2.2.1 生命保険最良推定負債のための方法論及び非経済的前提
(c)移行措置(未監査)
英国事業の申請は監督当局(PRA)の承認を受け、スペイン事業の申請はスペインの規制当局(DGSFP)が2016年1月1日以降に使用することを承認した。技術的準備金に関する移行措置は、PRAによって定期的に再計算することを要求されており、2017年12月31日に次の法的実体が移行措置をリセットしている。
Aviva Life&Pensions UK Limited(UKLAP)
Aviva International Insurance Limited(AII)
技術的準備金に関する移行措置は、2016年1月1日から2031年12月31日までの16年間にわたって直線的に減少する。移行措置を再計算すると、再計算された金額は2031年12月31日までの残存期間にわたって直線的に減少する。
QRT内で、移行(措置による)控除は、法人レベル(法人内の同種のリスクグループレベル)で、リスクマージンが最初に、そして最良推定負債がリスクマージンがなくなったときにのみ適用される。総移行控除額が総リスクマージン(同種リスクグループレベル)を上回っている場合、総控除に対する各事業部門の貢献度に比例して、超過額が最良推定負債に配分される。2017年12月31日現在、当グループ全体の技術的準備金に関する移行措置から最良推定負債への減少は595百万ポンド(未監査)であった。
当グループ内の保険会社は、リスクフリー金利に関する移行措置を使用していない。
英国生命事業部門の場合、無制限移行控除は、以下の2つの金額の差異に基づいている。
・ソルベンシーII基準の技術的準備金、適用可能であれば、マッチング調整及びボラティリティ調整の影響を含み、評価日に再保険から回収可能な金額を控除した後にSFCRのこのセクションに記載されているアプローチに従って計算される。
・ソルベンシーIポジション、英国では、再保険から回収可能な金額を控除し、評価日に適用される個別資本ガイダンス(ICG)を考慮した後の、ピラー1及びピラー2の個別資本評価(ICA)の技術的準備金のより大きい額
英国生命事業部門の移行(措置による)救済は、ソルベンシーIIの財源(移行救済措置適用後のソルベンシーII技術的準備金、その他の負債及びソルベンシー資本要件の合計として定義される)が、ソルベンシーIピラー1財源とソルベンシーIピラー2財源(ICA技術的準備金、その他の債務、ICA/ICGの合計として定義される)のより不利なもの以上であることを確実にするように制限される。ソルベンシーIIの発効日以降の新契約を含めてソルベンシーIIの財源は決定される。
Aviva International Insuranceは、生命保険事業の移行控除の無制限価値を計算するための上記のアプローチを反映している。しかし、全体的な財源要求テストは、生命保険及び損害保険の事業全体で、Aviva International Insuranceに合計で適用される。
スペインの業務については、上記のアプローチは英国の業務に似ているが、財源要件のソルベンシーⅠ尺度は1つである。
グループレベルでは、移行の影響は個々の法人の以降の影響の合計である(すなわち、グループ内取引の影響は排除されない)。
(以下、省略)
D.2.2.3 経済的前提
(b)マッチング調整
Avivaは、UK Life and AII(F.4項参照)の特定の負債にマッチング調整(MA)を適用する。マッチング調整は、キャッシュフローが比較的固定されており(例えば、将来の保険料や解約リスクがない)、満期まで保有する予定で、相対的に固定されたキャッシュフローを有している資産と十分にマッチしている保険負債を評価するためのリスクフリーレートに適用される。その意図は、満期まで保有される場合、会社は非流動性リスクに関連しているこれらの資産に対して、追加の利回りを得ることができるということである。
2017年12月31日に使用されたマッチング調整は下表の通りである。
(以下、省略)
(c)ボラティリティ調整
ボラティリティ調整(VA)は、市場における流動性の低下又は信用スプレッドの極端な拡大、特に国債に関連するスプレッドの一時的な歪みを反映することを意図している。VAはEIOPAによって規定され、ウェブサイト上の基本的なリスクフリー金利曲線と共に公開されている。
英国では、PRAは、UKLAP、Aviva Insurance Limited(AIL)(損害保険業務)及びAII(生命保険及び損害保険業務)(セクションF.4参照)に適用される申請を承認した。当グループの英国以外の重要な欧州経済圏(EEA)(フランス、イタリア、ポーランド)では、VAの申請がなされておらずまた適用されていないポーランドを除き、そのような申請は要求されない。該当する場合、VAは、承認された申請に沿って、VAが適用されないUK Lifeにおけるユニットリンク契約を除いて、MAが適用されない全ての負債に適用される。各通貨のVAは、委員会委任規則2016/165に記載されているとおり、以下の表に記載されている。トルコ、シンガポール、中国、香港及びインドでは、EIOPAによってVAが提供されておらず、VAが適用されていない。
(以下、省略)
3―SCRとMCRの計算方法の説明
1|SCRとMCRの計算方法の説明概要
以下では、この項目に関しての記述内容が相対的に充実しているAXA、Prudential、Aegonの3社についての説明概要を報告する。
(1)AXAの例
AXAのSCRとMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。
SCRとMCRを計算するために、内部モデルの使用や米国での同等性評価、さらには非保険部門については部門別ルールに基づいていることを説明している。これにより、AXAのグループSCRのうち、グループ全体でみると、80%が内部モデル、3%が標準式、11%が同等性(米国)、6%が銀行・資産運用会社、年金基金等の他の規制基準の適用に基づくものとなっている。
続いて、グループの分散化効果について、例えば、「内部モデルでは、主要なリスクカテゴリー(市場、信用、生命、損害、オペレーショナルリスク)全体にわたる集約と、地理/会社間の集約という、主な集約ステップを考慮したマルチレベル集約アプローチが実施されている。」と説明している。
E.2ソルベンシー資本要件(SCR)と最低資本要件(MCR)
当グループは、2015年11月17日、ソルベンシーIIのSCRを計算するために内部モデルを使用することについてACPR(フランスの監督当局)の承認を受けた。内部モデルは、同等とみなされるAXA USを除く、全ての重要な会社に対するAXAグループの経済資本モデルの使用を包含している。 内部モデルは、AXAの会社が、ローカルリスクプロファイルをよりよく反映し、グループがさらされている全ての重要なリスクを捉えるためのローカルキャリブレーションを選択できるように設計されている。その結果、内部モデルは、AXAグループ全体のSCRをより忠実に反映し、SCRメトリクスが経営陣の意思決定と整合的になると考えている。
ソルベンシー資本要件(SCR)
2018年2月23日に発行された2017年12月31日現在のAXAグループのソルベンシーII比率は205%であり、AXAの目標170%~230%の範囲内にとどまっている。
当グループは、内部モデルの範囲、基礎となる方法論及び前提条件を定期的に見直し続け、それに応じてSCRを調整する。内部モデルの大きな変更は、SCRの水準を調整することを求めるかもしれないACPRによって承認されなければならない。
さらに、当グループは、その目的を通じて欧州保険会社のモデルの一貫性の見直しを行うことが期待されているEIOPA(欧州保険年金監督局)の作業計画を監視する。そのような見直しが、コンバージェンスを高め、国境を越えたグループの監督を強化するための規制改正につながる可能性がある。
2017年12月31日現在で、AXAのグループSCRは282億ユーロで、内部モデル範囲(226億ユーロ)、標準式会社(9億ユーロ)、米国会社(31億ユーロ)、部門別ルール (年金事業、銀行、資産運用)(16億ユーロ)という異なる要素に分割される。AXAグループSCRに関する追加情報については、QRT S.25.02.22「ソルベンシー資本要件- 標準式及び部分内部モデルを使用するグループのための」を参照のこと。
2016年に比べて、AXAのグループSCRは294億ユーロから282億ユーロに減少した。
・経済ファクター:より高い株式市場が株式と市場リスクの増加をもたらした。より高い金利がより高い金利ショックとボラティリティ調整からのより低い吸収効果をもたらしたためマイナスの影響を与えた。
・モデル変更:いくつかのモデル変更が2017年に行われ、SCRの増加をもたらした。主な影響は金利のモデル改善から派生している。この主要なモデル変更の影響は株式の洗練されたモデルで一部相殺された。
・AXAスイスにおける契約の境界のより制限的な解釈がSCRの減少をもたらした。
・さらに、主として有利な市場動向によって、SCRの税調整が増加し、税引後のSCRを減少させた。
・最後に、同等性評価の米国の必要資本が、AXA Equitableに対して、会社行動水準の300%から200%に変更されたことにより、減少した。このグループ・ソルベンシーII比率への有利な影響は、繰延税金の償却を含む、計画されたIPO前の再編成取引の一部として、AXA RE Arizonaによって現在再保険されている変額年金の出再保解約予測によって、AFRが減少したことにより、相殺された。
2017年12月31日現在、SCRのリスクカテゴリーによる内訳は、市場リスク45%、生命保険23%、損害保険19%、信用リスク8%、オペレーショナルリスク6%となっている。
グループ分散効果
内部モデルの分散効果は、異なるリスク/サブリスク又は異なるポートフォリオ/会社への集計方法の適用によって駆動される。したがって、分散効果は、特定のリスク要因の範囲内、ポートフォリオ間、地域間又は異なるリスクカテゴリー間で現れることがある。
一例として、デュレーションギャップは、異なるポートフォリオに対して異なる符号を有することができる。保障商品のための長い期間と年金のための短い期間。このような場合、2つのポートフォリオを組み合わせると金利リスクが低下する。
リスク集計アプローチ内の細かさのレベルは、分散効果の測定に影響する主要な要因である。典型的には、集計アプローチが、地理、事業単位/法人レベル、リスクタイプ、商品タイプなどの次元に応じてポートフォリオや活動を区別するほど、より明示的な分散効果が明らかになる。内部モデルでは、主要なリスクカテゴリー(市場、信用、生命、損害、オペレーショナルリスク)全体にわたる集約と、地理/会社間の集約という、主な集約ステップを考慮したマルチレベル集約アプローチが実施されている。
2017年12月31日現在の主要なリスク(市場、信用、生命、オペレーショナル)における分散効果は108億ユーロであった。
範囲と計算方法
以下の表は、グループSCRを計算するために使用される内部モデルの範囲内にある会社を一覧表にしたものである。
(リストについては省略)
グループ内で、指令2009/138 / ECの第230条及び第233条で言及されている方法1(デフォルト法)と方法2(控除合算法)の組み合わせを使用して、グループ・ソルベンシーが計算される。方法2を用いる会社は、銀行、資産運用会社、年金基金を中心とした保険以外の金融セクターやソルベンシー制度が同等とみなされている米国内の子会社に関連している。 関連する主要な会社は以下の表に要約されている。
(表については省略)
(2018年07月17日「保険・年金フォーカス」)
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