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1―地方都市発の有望ベンチャー
スパイダー(蜘蛛/Spider)とファイバー(繊維/Fiber)から名付けられた、革新的技術を持つこのベンチャー企業、どこにあるかご存知だろうか。ヒト・モノ・カネが集まる大都会にあるわけではない。米どころで有名な庄内平野、人口13万人程の地方都市、山形県鶴岡市だ。ベンチャー創造協議会主催の第1回「日本ベンチャー大賞」では、このSpiberが地域経済活性化賞を受賞している。
Spiberは、鶴岡市にある慶大「先端生命科学研究所」発のベンチャーである。同研究所の最先端のバイオテクノロジーを用いた研究は、医療・環境・食品等の分野に応用されている。生み出されたベンチャーは、このSpiberだけではない。ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズもその1社だ。細胞内の代謝物質(メタボローム)を短時間かつ一斉に測定する分析技術(CE-MS技術)をベースに設立され、代謝物質の受託解析等に取組んでいる。2013年12月に東証マザーズに上場した、大学発ベンチャーの成功事例だ。他にも、唾液を用いた疾患検査技術に取組むサリバテックなど、今までにバイオ領域のベンチャーが6社設立されている*1。地方都市でも革新的なベンチャーを生み出せるという一例だ。
2―地域の取組み
地域の金融機関も支援に取り組んでいる。上述のヒューマン・メタボローム・テクノロジーズが上場に至るまでには、地方銀行やその系列企業が資本参加している。また、鶴岡市に本店を置く荘内銀行は、中期経営計画*2において、地方創生への取組みとして「産官学金連携の強化」を挙げ、その一環として「慶大先端生命科学研究所を出発点とするバイオ分野を中心としたベンチャー企業を支援」することを掲げている。
このように、地方自治体や地域の金融機関の取組みも、ベンチャーの創出・成長を後押しする環境作りに繋がっている。
3―厚みのある「生態系」を作れるか
地方都市は、大都市と比べるとヒト・モノ・カネが集まりづらく、生態系に厚みを持たせるには一層の工夫が必要である。鶴岡市の事例では地方自治体や、地元の企業や金融機関の取組みも当然大きかったが、慶大や、上述のバイオベンチャーを創業期から支えた域外のベンチャー・キャピタル等、外部の力をうまく活用し取り込めたことも忘れてはならない。
人口減少に直面する地方都市が多い中、ベンチャーやイノベーションを通じた地方創生への期待も大きい。豊かなベンチャー生態系を持つ、魅力溢れる地方都市が増えていくことを期待している。
*1 同研究所HPより。 http://www.iab.keio.ac.jp/about/venture.html
*2 フィデアホールディングス株式会社(荘内銀行等を傘下に置く金融持株会社)平成29年3月期決算説明会資料より。 http://www.fidea.co.jp/pdf/20170613.pdf
中村 洋介
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(2018年07月06日「基礎研マンスリー」)
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