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- 中国の年金制度について(2017)-老いる中国、老後の年金はどうなっているのか。
2018年06月28日
1――公的年金の概要と特徴
1|公的年金の体系
中国の公的年金制度は、本人の戸籍(都市戸籍/農村戸籍)や、就業の有無によって、大きく2つに分類される。
会社員(自営業者を含む)など被用者は「都市職工基本養老保険」(都市職工年金)に加入し、農村住民や都市の非就労者は「都市農村住民基本養老保険」(都市・農村住民年金)に加入する。公務員や外郭団体の職員は、都市職工年金の一部に分類された「公務員養老保険」(公務員年金)に加入する(図表1)。
会社員、公務員などは、加入が義務付けられているが、農村住民・都市の非就労者は任意加入となっている。このような任意の加入者数は、公的年金制度の加入者全体のおよそ6割に達する。
なお、制度の構造は共通しているが、財政の管理は、地域毎(主に「市」単位)、制度毎となっている。
中国の公的年金制度は、本人の戸籍(都市戸籍/農村戸籍)や、就業の有無によって、大きく2つに分類される。
会社員(自営業者を含む)など被用者は「都市職工基本養老保険」(都市職工年金)に加入し、農村住民や都市の非就労者は「都市農村住民基本養老保険」(都市・農村住民年金)に加入する。公務員や外郭団体の職員は、都市職工年金の一部に分類された「公務員養老保険」(公務員年金)に加入する(図表1)。
会社員、公務員などは、加入が義務付けられているが、農村住民・都市の非就労者は任意加入となっている。このような任意の加入者数は、公的年金制度の加入者全体のおよそ6割に達する。
なお、制度の構造は共通しているが、財政の管理は、地域毎(主に「市」単位)、制度毎となっている。
2|都市職工年金-都市の会社員を対象とした年金
(1)構造
都市の会社員(自営業者を含む)など、主に被用者を対象とする年金は、「基本年金」(企業拠出分・賦課方式)と「個人勘定」(個人拠出分・積立方式)の2つで構成されている。年金の給付水準は、現役時代の収入の多寡に応じた生活がある程度維持できるよう、基本年金と個人勘定を合わせて、加入地域の前年の平均賃金の4~5割程度になるように設定されている。
(2)保険料負担
保険料負担は、賃金に比例する仕組みになっている。保険料は原則的に、企業が賃金総額の20%、従業員本人は賃金の8%を納める。企業拠出分は基本年金の原資として基本年金基金で管理され、従業員が拠出した保険料は基本年金の上乗せとして、専用の個人口座で積み立てられる。
年金制度のモデル設計は、主務官庁である人力資源・社会保障部が行うが、保険料の徴収、基本年金基金の管理、年金給付といった実質的な制度の運営や財政の管理は各地域に設置された社会保険管理機構が行う。よって、保険料は国から示されるものの、各地域で、高齢化の進展度合いや財政状況に応じて、企業の負担率を調整することもある。
(3)年金給付
基本年金は、加入地域の前年の平均賃金をベースに、現役時代の本人の平均賃金と加入期間を加味して決定される。
個人勘定は、年金専用の個人口座の残高を定年退職年齢に基づいて定められた年金現価率によって分割して支給される。中国では、法律で定められた定年退職年齢が即ち年金の支給開始年齢となっており、男性が60歳、専門職の女性は55歳、一般職の女性は50歳となっている。例えば、60歳に定年退職した場合の年金現価率は139となる(図表2)。
(1)構造
都市の会社員(自営業者を含む)など、主に被用者を対象とする年金は、「基本年金」(企業拠出分・賦課方式)と「個人勘定」(個人拠出分・積立方式)の2つで構成されている。年金の給付水準は、現役時代の収入の多寡に応じた生活がある程度維持できるよう、基本年金と個人勘定を合わせて、加入地域の前年の平均賃金の4~5割程度になるように設定されている。
(2)保険料負担
保険料負担は、賃金に比例する仕組みになっている。保険料は原則的に、企業が賃金総額の20%、従業員本人は賃金の8%を納める。企業拠出分は基本年金の原資として基本年金基金で管理され、従業員が拠出した保険料は基本年金の上乗せとして、専用の個人口座で積み立てられる。
年金制度のモデル設計は、主務官庁である人力資源・社会保障部が行うが、保険料の徴収、基本年金基金の管理、年金給付といった実質的な制度の運営や財政の管理は各地域に設置された社会保険管理機構が行う。よって、保険料は国から示されるものの、各地域で、高齢化の進展度合いや財政状況に応じて、企業の負担率を調整することもある。
(3)年金給付
基本年金は、加入地域の前年の平均賃金をベースに、現役時代の本人の平均賃金と加入期間を加味して決定される。
個人勘定は、年金専用の個人口座の残高を定年退職年齢に基づいて定められた年金現価率によって分割して支給される。中国では、法律で定められた定年退職年齢が即ち年金の支給開始年齢となっており、男性が60歳、専門職の女性は55歳、一般職の女性は50歳となっている。例えば、60歳に定年退職した場合の年金現価率は139となる(図表2)。
給付には、基本年金、個人勘定に加えて、その年の物価上昇などの影響を考え、給付額が一定の消費レベルを保てるよう、各運営地域で加入期間や年齢に応じて、一定額を加算している。
給付は終身で、15年以上の保険料納付が必要となる。なお、保険料納付が15年に満たない場合、原則としては、15年を満たすまで継続して保険料を支払うとしている。ただし、支給開始年齢に達し、保険料の支払継続を希望せず、種別変更もしない場合は、書面にて脱退を申請し、個人勘定に積み立てた金額を一時で受け取る。また、遺族給付については、個人勘定に積み立てた部分と、葬儀補助金が一時給付される。なお、日本の障害給付にあたる措置は設けられていない。
給付は終身で、15年以上の保険料納付が必要となる。なお、保険料納付が15年に満たない場合、原則としては、15年を満たすまで継続して保険料を支払うとしている。ただし、支給開始年齢に達し、保険料の支払継続を希望せず、種別変更もしない場合は、書面にて脱退を申請し、個人勘定に積み立てた金額を一時で受け取る。また、遺族給付については、個人勘定に積み立てた部分と、葬儀補助金が一時給付される。なお、日本の障害給付にあたる措置は設けられていない。
3|都市職工年金-公務員を対象とした年金
(1)構造
公務員の年金制度は、都市の会社員の年金と同様、「基本年金」(企業拠出分・賦課方式)と「個人勘定」(個人拠出分・積立方式)の2つで構成されている。ただし、会社員の年金と異なるのは、2015年の制度改正前の受給レベルを一定程度保つ措置として、個人勘定部分に、職域加算部分が設けられている点である。
公務員の年金が会社員の年金とほぼ同様の構造となったのは2015年である。中国の公務員、外郭団体の職員等を対象にした年金制度を簡単に振り返ると、制度の創設は1955年である。当初より保険料に個人負担はなく、全額税金負担であった。加えて、公務員の給与は企業の被用者よりも総じて高い上、年金受給額が平均給与の8~9割、被用者の2倍以上であったことから、国民から改革が求められていた。1951年創設の国有企業の従業員を対象とした年金制度は1990年代に改革が進み、現在は会社員を対象とした制度との一元化がはかられている。一方、公務員の年金制度は、長らく検討が重ねられ、2015年に、保険料率や給付の仕組みなどを、会社員の年金制度に近づけるように見直しがなされた。
(1)構造
公務員の年金制度は、都市の会社員の年金と同様、「基本年金」(企業拠出分・賦課方式)と「個人勘定」(個人拠出分・積立方式)の2つで構成されている。ただし、会社員の年金と異なるのは、2015年の制度改正前の受給レベルを一定程度保つ措置として、個人勘定部分に、職域加算部分が設けられている点である。
公務員の年金が会社員の年金とほぼ同様の構造となったのは2015年である。中国の公務員、外郭団体の職員等を対象にした年金制度を簡単に振り返ると、制度の創設は1955年である。当初より保険料に個人負担はなく、全額税金負担であった。加えて、公務員の給与は企業の被用者よりも総じて高い上、年金受給額が平均給与の8~9割、被用者の2倍以上であったことから、国民から改革が求められていた。1951年創設の国有企業の従業員を対象とした年金制度は1990年代に改革が進み、現在は会社員を対象とした制度との一元化がはかられている。一方、公務員の年金制度は、長らく検討が重ねられ、2015年に、保険料率や給付の仕組みなどを、会社員の年金制度に近づけるように見直しがなされた。
(3)年金給付
年金給付について、基礎年金と個人勘定(個人口座)部分については、都市の会社員と同様の仕組みで給付される。
職域年金部分について、職域年金専用の個人口座で積み立てられた保険料は、一旦、省の社会保険管理機構で集められ、職域年金基金が組成される。職域年金基金は、企業年金の運用資格をもつ会社に運用を委託する。運用後の収益は、職域年金専用の個人口座に繰り入れられた上で、給付される仕組みとなっている。
年金給付について、基礎年金と個人勘定(個人口座)部分については、都市の会社員と同様の仕組みで給付される。
職域年金部分について、職域年金専用の個人口座で積み立てられた保険料は、一旦、省の社会保険管理機構で集められ、職域年金基金が組成される。職域年金基金は、企業年金の運用資格をもつ会社に運用を委託する。運用後の収益は、職域年金専用の個人口座に繰り入れられた上で、給付される仕組みとなっている。
4|都市・農村住民年金-都市の非就労者・農村住民を対象とした年金
(1)構造
農村住民や都市の非就労者を対象とした年金は、「基礎年金」(税金負担)と、「個人勘定」(個人拠出分・積立方式)の2つで構成されている。
(2)保険料負担
保険料は賃金に関係なく、複数設定された保険料から、自身の経済状況に応じた保険料を選択して支払う仕組みとなっている。支払った保険料は、地方政府からの補助金とともに、全額が専用の個人口座に積み立てられる。地方政府は、加入インセンティブを高めるため、より上位ランクの保険料を支払った場合、地方政府からの補助金を増額する措置をとっている。
(3)年金給付
基礎年金は、国庫と地方政府が財政から拠出して給付する。基準額として月額70元が定められているが、国庫は、このうち、中部・西部地域について満額補填、東部地域については半額の35元を補填している。基礎年金は、この国庫負担分に、地方政府が当該地域の経済状況を鑑み消費レベルを保てるよう、それぞれ一定額を加算して算定される。なお、個人勘定については、支給開始年齢が男女とも60歳であるため、年金現価率139で除して算定される。給付は終身で、15年以上の保険料納付が必要となる。
(1)構造
農村住民や都市の非就労者を対象とした年金は、「基礎年金」(税金負担)と、「個人勘定」(個人拠出分・積立方式)の2つで構成されている。
(2)保険料負担
保険料は賃金に関係なく、複数設定された保険料から、自身の経済状況に応じた保険料を選択して支払う仕組みとなっている。支払った保険料は、地方政府からの補助金とともに、全額が専用の個人口座に積み立てられる。地方政府は、加入インセンティブを高めるため、より上位ランクの保険料を支払った場合、地方政府からの補助金を増額する措置をとっている。
(3)年金給付
基礎年金は、国庫と地方政府が財政から拠出して給付する。基準額として月額70元が定められているが、国庫は、このうち、中部・西部地域について満額補填、東部地域については半額の35元を補填している。基礎年金は、この国庫負担分に、地方政府が当該地域の経済状況を鑑み消費レベルを保てるよう、それぞれ一定額を加算して算定される。なお、個人勘定については、支給開始年齢が男女とも60歳であるため、年金現価率139で除して算定される。給付は終身で、15年以上の保険料納付が必要となる。
5|受給格差
このように、負担と給付は、被保険者の分類によって異なる。会社員の場合、保険料は本人の賃金をベースに決められるが、基本年金部分は、運営地域の賃金水準に応じて年金水準が異なるため、受給額の地域格差が拡大する構造となっている。運営地域別で受給額をみた場合、例えば、平均賃金の高い深セン市の平均受給額は4,169元(約8万円)で全国平均のおよそ2倍、北京市、上海市よりも3割ほど多い。
また、制度間における受給格差も大きい。都市の会社員の平均受給額は、農村住民・都市の非就労者の19倍となっている。農村住民・都市非就労者の場合は、そもそも制度が導入されてそれほど経過していないため、基礎年金部分で、地方政府がどれほど財政を投入できるかが給付額に大きく影響している。
このように、負担と給付は、被保険者の分類によって異なる。会社員の場合、保険料は本人の賃金をベースに決められるが、基本年金部分は、運営地域の賃金水準に応じて年金水準が異なるため、受給額の地域格差が拡大する構造となっている。運営地域別で受給額をみた場合、例えば、平均賃金の高い深セン市の平均受給額は4,169元(約8万円)で全国平均のおよそ2倍、北京市、上海市よりも3割ほど多い。
また、制度間における受給格差も大きい。都市の会社員の平均受給額は、農村住民・都市の非就労者の19倍となっている。農村住民・都市非就労者の場合は、そもそも制度が導入されてそれほど経過していないため、基礎年金部分で、地方政府がどれほど財政を投入できるかが給付額に大きく影響している。
6|管轄地域を跨る場合の保険料の引継ぎ
中国の年金制度は、運営や財政が地域によって分断されており、例えば、管轄地域を跨って転職する場合、それまで積み立てた保険料全額を、新たな地域においても引き継ぐことができるというわけではない。会社員の場合、保険料の企業拠出分(基本年金基金)である20%部分については、その6割にあたる12%分までは新たな地域でも引き継ぐことができる。残りの8%は転職前の管轄地域に残すこととなる。個人が保険料を拠出した個人勘定部分は、全額引き継ぐことができる。年金の受給は、本人の本籍所在地または10年以上保険料を納めた地域から選択して受給することができる。
農村住民・都市の非就労者を対象とした年金では、自身が保険料を拠出した個人勘定部分は全額引き継ぐことができる。加えて、受給資格としての納付期間を通算することができる。
中国の年金制度は、運営や財政が地域によって分断されており、例えば、管轄地域を跨って転職する場合、それまで積み立てた保険料全額を、新たな地域においても引き継ぐことができるというわけではない。会社員の場合、保険料の企業拠出分(基本年金基金)である20%部分については、その6割にあたる12%分までは新たな地域でも引き継ぐことができる。残りの8%は転職前の管轄地域に残すこととなる。個人が保険料を拠出した個人勘定部分は、全額引き継ぐことができる。年金の受給は、本人の本籍所在地または10年以上保険料を納めた地域から選択して受給することができる。
農村住民・都市の非就労者を対象とした年金では、自身が保険料を拠出した個人勘定部分は全額引き継ぐことができる。加えて、受給資格としての納付期間を通算することができる。
(2018年06月28日「ニッセイ基礎研所報」)
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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【中国の年金制度について(2017)-老いる中国、老後の年金はどうなっているのか。】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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