2016年11月24日

国防費の3倍?-急増する中国の社会保障関係費

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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■要旨
 
  • 中国では、少子高齢化の進展、それに伴う社会保障制度の整備が進む中で、医療や年金などの社会保障関係費が増加している。
  • 2015年の社会保障関係費は3兆972億元で、一般公共予算支出のうち17.6%を占め、最も大きい支出項目となった。
     
  • 中国では、中央と地方財政が明確な役割分担をしており、国防費は中央財政が、社会保障については地方財政がその多くを担っている。社会保障関係費は、地方財政の支出が増加しており、2015年は、地方財政が7割、中央からの財政移転が3割を負担した。
     
  • 財政の支出構造の変化をみると、社会保障関係費の割合は一貫して増加している。また、社会保障関係費は支出規模が最も大きいのに加えて、増加率も前年比18.5%増と大きく、その動向が財政に与えるインパクトは大きい。
  • 中国の財政支出については、国防費が何かと注目されるが、社会保障関係費の支出規模はその3倍にあたり、直近2015年の増加率もそれを遙かに凌いでいる。
     
  • 政府は2016年6月に、介護保険制度のパイロット地区として15都市を発表し、2020年を目途に全国導入を目指すとした。
  • ただし、制度運営に必要な財源の確保については課題もあり、国民にも給付に応じた負担を求めていく必要がありそうだ。

■目次

1――社会保障関係費の推移
2――社会保障関係費は、一般公共予算支出のおよそ2割
  1|社会保障関係費は最大の支出項目
  2|地方:中央の財政負担は2:1へ
3――支出構造の変化と財政へのインパクト
4――2020年までに介護保険制度を全国導入へ
  1|介護保険制度のパイロット地区を15都市選定
  2|介護保険の導入に際して、財源は大丈夫か。
5――給付に応じた負担と必要なサービスの提供のバランスをいかに図るか。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

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