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全人代閉幕-国民の関心が最も高いのは「社会保障」
保険研究部 准主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき
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経済成長の減速化が鮮明になる中で、李首相は、2020年までの5年間の経済成長率の目標を年平均6.5%以上に引き下げ、産業構造の改革を積極的に進める姿勢を打ち出した。中国は2020年に「小康社会」(国民の生活にややゆとりのある社会)の実現を目指しており、国民1人あたりの所得を2010年の2倍にすることを目標にしている。
一方、このような政治的な機運が高まる時期を前に、中国のメディア各社は毎年、国民が最も注目している話題をインターネットで調査をしている。2016年の結果は、国民が最も注目しているのは「社会保障」で、次いで「収入」、「医療改革」となった。年初以来話題となっている‘金融リスク’や‘経済(の新常態)’は上位とはならなかった。
経済成長の減速化が鮮明になる中で、李首相は、2020年までの5年間の経済成長率の目標を年平均6.5%以上に引き下げ、産業構造の改革を積極的に進める姿勢を打ち出した。中国は2020年に「小康社会」(国民の生活にややゆとりのある社会)の実現を目指しており、国民1人あたりの所得を2010年の2倍にすることを目標にしている。政府としては、この目標を実現する上でも、構造改革を進めることで、経済成長は確保したい意向だ。
一方、このような政治的な機運が高まる時期を前に、中国のメディア各社は毎年、国民が最も注目している話題をインターネットで調査をしている。最大手の人民ネットは2002年から調査をしており、2016年はのべ389万人が参加した1。調査のしかたは、予め用意をした社会問題を中心とした18項目のうち、関心のある内容を最多10項目まで選択、回答するものである2。回答者の年齢構成等は公表されていないが、中国のネット利用者そのものが10~30代が最も多い点を考慮すると、比較的若い世代の意見が反映されていると考えられる3。
2016年の調査結果は、最も注目をしている話題として、「社会保障」が再び首位となり、「収入」、「医療改革」がそれに続いた(図表1)。
しかし、2016年の全人代は、経済成長の減速化が鮮明となる中で、産業の構造改革に伴う失業問題5、少子高齢化の急速な進展による高齢者の社会扶養、医療や年金といった社会保障関係費の増大などの問題が顕在化し、国民が社会保障の重要性を再認識する結果となった。回答者の多くを占める20~30代は、一人っ子世代にあたり、現在、就職、結婚、出産といったライフイベントを迎えている。中国社会は、いまや一人っ子世代の夫婦2人がそれぞれの両親4人の老後の生活を支え、そして自身の子ども1人を育てるという「421家庭」が主流となっている。都市での生活コストや教育熱が高まる中で、介護保険制度は整備されておらず、両親4人の老後の生活は一人っ子世代の肩に重くのしかかっているといっても過言ではない。また、2位の「収入」を見ても、およそ5割が「物価上昇を考慮すれば2015年の収入は前年より減っている」と感じており、これが社会保障の重要度を高める要因の1つとなったとも考えられる。
2016年の全人代において、もう1つ重要であったのは、2020年までの施政方針を示した「第13次5ヵ年計画」の建議採択と2016年の重点取組についての発表である(図表2)。
1 調査期間は2016年2月15日から3月1日。
2 18項目とは、社会保障、収入、医療改革、経済の新常態、司法改革、一帯一路、公共安全、行政における政府機能のスリム化、イノベーション、金融リスク、住宅、教育の公平性、1人っ子政策の解禁、環境保護、貧困問題、新型都市化、軍事改革、汚職防止(トラもハエも叩く)である。
3 中国のネットユーザーの構成は、20代が29.9%、30代が23.8%、10代が21.4%を占めており、10~30代が中心となっている。また、40代が13.1%、50代が5.3%、60代が3.9%と40代以降は急速に少なくなっている(出所:「中国インターネット発展状況統計報告(2016年1月)」
4 「保険・年金フォーカス 中国保険市場の最新動向(12) 全人代閉幕、年金支給10%増へ-2015年社会保障に関する「活動報告」」2015年3月17日発行
5 2016年2月末、就労や社会保障を管轄する人力資源・社会保障部のトップが記者会見で、「石炭業界で130万人、鉄鋼業界で50万人の余剰人員を見込んでいる」と発表した。
6 「基礎研レター アジア・新興国」中国保険市場の最新動向(17)第13次5ヵ年計画の建議-一人っ子政策の廃止と社会保険」2015年12月15日発行
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(2016年03月18日「基礎研レター」)
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