- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 金融・為替 >
- 金融市場・外国為替(通貨・相場) >
- 貸出・マネタリー統計(18年5月)~銀行貸出を支える不動産融資
2018年06月11日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1.貸出動向: 貸出の伸び率は再び2%割れ
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表11を確認すると、直近判明分である4月の伸び率は前年比2.30%と2月の2.27%からわずかに上昇した。見た目(特殊要因調整前)の銀行貸出の伸び率は3月(1.87%)から4月(2.01%)にかけてかなり上昇していたが、上昇分のうち大部分が円高是正に伴う外貨建て貸出の円換算評価額増加であったため、「特殊要因調整後」の伸び率上昇幅は小幅に留まっている(図表1)。
5月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、5月のドル円レートの前年比円高幅は4月とほぼ変わらないため(図表4)、特殊要因調整後の伸び率低下幅は見た目の伸び率低下と大差なく、前年同月比2.20%程度になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは4月分まで。
5月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、5月のドル円レートの前年比円高幅は4月とほぼ変わらないため(図表4)、特殊要因調整後の伸び率低下幅は見た目の伸び率低下と大差なく、前年同月比2.20%程度になったと推測される。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは4月分まで。
(業種別貸出動向)
3月末時点の業種別貸出動向を確認すると、電気・ガスをはじめ、宿泊、不動産、その他サービスなどサービス業の伸びが高い一方で、食料、電気機械、化学といった製造業の伸びが低い状況となっている。この構図自体は従来と変わらないが、直近は特に製造業の伸び率低下(マイナス幅拡大)が目立っている。
より長い期間における貸出の伸びに対する主な業種別の寄与度を見ても、製造業の寄与度はほぼゼロの状況が続いている(直近はマイナス寄与)。一方、近年高い寄与が続いているのが不動産業(個人のアパートローンを含む)と、個人向けである。個人向けの大半が住宅ローンであることを鑑みれば、ここ数年の銀行貸出の伸びを支えてきたのは主に不動産領域と言える。足元では伸びが一服しているが、寄与度自体は高く、超低金利が不動産貸出の追い風になっている様子がうかがわれる。
3月末時点の業種別貸出動向を確認すると、電気・ガスをはじめ、宿泊、不動産、その他サービスなどサービス業の伸びが高い一方で、食料、電気機械、化学といった製造業の伸びが低い状況となっている。この構図自体は従来と変わらないが、直近は特に製造業の伸び率低下(マイナス幅拡大)が目立っている。
より長い期間における貸出の伸びに対する主な業種別の寄与度を見ても、製造業の寄与度はほぼゼロの状況が続いている(直近はマイナス寄与)。一方、近年高い寄与が続いているのが不動産業(個人のアパートローンを含む)と、個人向けである。個人向けの大半が住宅ローンであることを鑑みれば、ここ数年の銀行貸出の伸びを支えてきたのは主に不動産領域と言える。足元では伸びが一服しているが、寄与度自体は高く、超低金利が不動産貸出の追い風になっている様子がうかがわれる。
2.マネタリーベース: 9ヵ月ぶりに伸び率が上昇、減速が一服
一方、5月末のマネタリーベース残高は493兆円で前月末から5.7兆円の減少となった。ただし、5月は季節柄、資金吸収要因である財政資金の受け超になりやすいほか、国債の発行超も大きい傾向があるため、日銀当座預金が増加しにくいという事情がある。実際、季節要因を取り除いた前年同月差では、36.7兆円増と前月(36.1兆円増)を上回り、季節調整済みのマネタリーベース(平残)も、前月比6.6兆円増と前月から増加している(図表10)。日銀の国債買入れペースは鈍化が続いてきたが、5月は前年比32兆円増(短期・長期国債合計、前月は29兆円増)とやや持ち直したため、その裏返しとなるマネタリーベースの増勢回復に繋がった(図表11)。
ただし、今後も日銀の国債買入れによって市中に残存する国債残高が減少に向かうため、日銀の国債買入れペースは中期的に縮小に向かい、マネタリーベースの増加ペースも徐々に鈍化していくと見込まれる。
ただし、今後も日銀の国債買入れによって市中に残存する国債残高が減少に向かうため、日銀の国債買入れペースは中期的に縮小に向かい、マネタリーベースの増加ペースも徐々に鈍化していくと見込まれる。
3.マネーストック: 投資信託は6ヵ月連続のマイナスに
なお、M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前年比3.05%(前月改定値は3.13%)と、やや低下した(図表12)。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率がほぼ横ばいであったほか、残高が大きい金銭の信託(前月改定値7.3%→当月7.6%)の伸びがやや拡大したが、注目度の高い投資信託(元本ベース・前月改定値▲1.1%→当月▲2.6%)がマイナス幅を広げたため、広義流動性全体の伸び率低下に繋がった(図表14)。
5月のマーケットは概ね安定していたが、米国の保護主義政策や米朝関係の行方、欧州政治不安などから先行きの不透明感が強い状況が続いたため、リスク性資産への投資が引き続き停滞したとみられる。
内訳では、既述の通り、M3の伸び率がほぼ横ばいであったほか、残高が大きい金銭の信託(前月改定値7.3%→当月7.6%)の伸びがやや拡大したが、注目度の高い投資信託(元本ベース・前月改定値▲1.1%→当月▲2.6%)がマイナス幅を広げたため、広義流動性全体の伸び率低下に繋がった(図表14)。
5月のマーケットは概ね安定していたが、米国の保護主義政策や米朝関係の行方、欧州政治不安などから先行きの不透明感が強い状況が続いたため、リスク性資産への投資が引き続き停滞したとみられる。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年06月11日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
上野 剛志のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/07 | 長期金利の上昇は続くのか?~16年ぶり1.5%到達後の金利見通し | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/02/18 | 関税と日銀利上げの思惑で揺れる円相場、次の展開は?~マーケット・カルテ3月号 | 上野 剛志 | 基礎研マンスリー |
2025/02/12 | 貸出・マネタリー統計(25年1月)~定期預金の伸び率が14年半ぶりの高水準に、地銀の貸出が勢いを増す | 上野 剛志 | 経済・金融フラッシュ |
2025/02/07 | 金価格は史上最高値を更新、まだ上昇余地はあるか? | 上野 剛志 | Weekly エコノミスト・レター |
新着記事
-
2025年03月14日
噴火による降灰への対策-雪とはまた違う対応 -
2025年03月14日
ロシアの物価状況(25年2月)-前年比で上昇が続き10%超に -
2025年03月14日
株式インデックス投資において割高・割安は気にするべきか-長期投資における判断基準について考える -
2025年03月13日
インド消費者物価(25年2月)~2月のCPI上昇率は半年ぶりの4%割れ -
2025年03月13日
行き先を探す“核の荷物”~高レベル放射性廃棄物の最終処分とエネルギー政策~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【貸出・マネタリー統計(18年5月)~銀行貸出を支える不動産融資】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
貸出・マネタリー統計(18年5月)~銀行貸出を支える不動産融資のレポート Topへ