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乾癬(かんせん)の受診実態~疾病の理解のために・乾癬(1)
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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(5) 乾癬治療費乾癬の治療費をみるために、乾癬治療に使われる外用療法、光線療法、内服療法、生物学的製剤による医療費の推移を6か月ごとにみると、治療を開始して以降、期間が経つほど上昇していた。治療開始時には9割以上が1万円未満(自己負担分と保険給付分をあわせた総医療費)だったが、60か月目には1万円未満は7割にまで減少し、2%程度は5万円以上、その半分以上が10万円以上と高額だった。
図表4に示すとおり、治療開始直後は、低額な外用療法を行う患者も多く含まれるが、期間が経つにつれて外用療法のみの患者は減少し、高額になりがちな生物学的製剤の注射を受ける患者が相対的に増加することが、治療費が高くなる理由として考えられる。
ここに表記するのは、上記4つの治療法で使われる皮膚用外用薬や内服、および注射による抗腫瘍薬および免疫調節薬等の医薬品、および医療機関で実施される皮膚科光線療法にかかる医療費のみであり、これ以外に初診料等の基本料や、その他の疾病による医療費がかかる。乾癬患者は生活習慣病の併発リスクが高いとされ、そういった医療費すべてをあわせると、乾癬患者の5%程度の総医療費が5万円以上だった。
3――まとめ
その結果、月あたりの受療率は0.13%だった。男女とも年齢が高いほど高く、男女を比較すると、30歳未満では、男女ともほぼ同程度であるが、30歳以上で男性が女性を上回る。この結果から、1か月間に1度でも乾癬を理由に医療機関にかかっているのは、国内で31万人と推計された。75歳以上の受療率はさらに高いことや、毎月病院に通う必要がない患者もいると考えれば、有病者数はさらに多いと考えられる。
発症率は、男女とも15歳未満でやや高く、男女の差はない。15~19歳で発症率はいったん低下するが、20歳以降で年齢とともに上昇していた。15歳以降の年齢別発症率は男女で異なり、男性は10歳代と55歳以降で、女性は10歳代と50歳代で、それぞれ高くなっている。この結果は、男性の退職期や女性の更年期で発症率が高くなっており、ストレスやホルモンバランスの影響で発症しやすくなるという考えに沿ったものだった。
治療の種類は、おもに外用療法、光線療法(紫外線照射)、内服療法、生物学的製剤(注射)がある。今回の分析期間で治療を開始した患者では、外用療法が圧倒的に多かった。生物学的製剤は、症状が寛解することも見込めるといった効果が期待されているが、利用者は少なかった。一方で、外用療法を始めた患者の多くが、治療開始から時間が経つにつれ、通院をしなくなっていた。乾癬は、症状が悪くなったり良くなったりを繰り返す疾病であり、必ずしも毎月受診を必要とするとは限らないほか、外用療法を受ける患者は、比較的軽度であると推測できることから、治療を継続していない患者がいると考えられる。また、患者の中には「これ以上良くならない」と治療をあきらめることも多い11とも言われる。
受診回数、および1月あたりの治療費については、回数も治療費も多くない患者がほとんどという結果となった。ただし、一部には月2回受診をしている患者や、月10万円以上(自己負担と保険給付分をあわせた総医療費)かかっている患者もいた。
患者支援団体等では、さまざまな治療法があることを患者に周知するとともに、患者自身が寛解をめざした治療に向かえるよう周囲の理解を進めている。
11 たとえば、中日メディカルサイトによる「乾癬 治療の道 共に探ろう(2011年10月18日)」や、乾癬ネットによる患者インタビュー(https://www.kansennet.jp/interviews/03/)
(2018年05月28日「基礎研レター」)
03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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