2018年05月18日

消費者物価(全国18年4月)-年度替わりの値上げは限定的、コアCPI上昇率は1%から遠ざかる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は2ヵ月連続で鈍化

消費者物価指数の推移 総務省が5月18日に公表した消費者物価指数によると、18年4月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.7%(3月:同0.9%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.8%、当社予想も0.8%)を下回る結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比0.4%(3月:同0.5%)と上昇率が前月から0.1ポイント縮小、総合は前年比0.6%(3月:同1.1%)と上昇率が前月から0.5ポイント縮小した。総合指数は生鮮食品の大幅上昇の影響で17年12月から18年3月までコアCPIの上昇率を上回っていたが、4月は生鮮野菜が前年比▲1.5%と下落に転じたため、両者の関係が逆転した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、灯油(3月:前年比13.3%→4月:同13.6%)の上昇幅は拡大、ガソリン(3月:前年比7.5%→4月:同7.5%)の上昇幅は前月と変わらなかったが、電気代(3月:前年比5.2%→4月:同4.4%)、ガス代(3月:前年比2.8%→4月:同2.6%)、の上昇幅が縮小したため、エネルギー価格の上昇率は3月の前年比5.7%から同5.3%へと縮小した。

昨年4月に値上げされた携帯電話機がその裏が出る形で3月の前年比26.0%から同3.9%へと上昇率が大きく縮小したこと、テレビ、パソコンなどの教養娯楽用耐久財の下落率が拡大(3月:前年比▲2.5%→4月:同▲5.0%)したこともコアCPIを押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.41%(3月:0.43%)、食料(生鮮食品を除く)が0.28%(3月:0.25%)、その他が0.02%(3月:0.21%)であった。

2.年度替わりの値上げは限定的

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、4月の上昇品目数282品目(3月は279品目)、下落品目数は180品目(3月は193品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は53.9%(3月は53.3%)、下落品目数の割合は34.4%(3月は36.9%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は19.5%(3月は16.4%)であった。

4月は年度替わりの価格改定が行われやすい月だが、上昇品目数は前月とほぼ変わらず、目立った値上げの動きは見られなかった。

3.コアCPI上昇率は夏頃に再び1%へ

コアCPI上昇率は18年2月に3年6ヵ月ぶりに1%(消費税を除くベース)に達したが、3、4月の2ヵ月で1%が一気に遠のいた。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 特に、4月の上昇率は事前の市場予想を下回り、前月から0.2ポイント縮小したが、公表値の小数第1位の指数値で計算すると、3月、4月ともに前年比0.8%となる(公表値の上昇率は端数処理前の指数値を用いて計算される)。3月から4月にかけて物価の基調が見かけほど弱くなったわけではない。

先行きについては、年明け以降の円高による下押し圧力は残るものの、外食や運送料など人手不足に起因した値上げが進むこと、原油価格上昇の影響で5月以降エネルギー価格の上昇率が再び高まることから、コアCPIの上昇率は夏頃(7、8月頃)には再び1%に達するだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年05月18日「経済・金融フラッシュ」)

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