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- 最近の人民元と今後の展開(2018年5月号)~米中通商交渉の本格化を背景に人民元は引き続き堅調
最近の人民元と今後の展開(2018年5月号)~米中通商交渉の本格化を背景に人民元は引き続き堅調

三尾 幸吉郎
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- 4月の人民元(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は米ドルに対して下落、1米ドル=6.3340元(前月末比0.9%安)で取引を終えた。米長期金利が上昇した4月は、米ドルが世界通貨に対して全面高となったため人民元も連れ安となったが、米中貿易摩擦で切り上げ圧力が掛かる人民元は相対的に堅調、日本円に対しては前月末比1.8%の元高・円安となった。
- 今後の展開としては、経済金融環境面を見ると米中金利差縮小などで元安・米ドル高となりやすいものの、18年6月に向けては米中通商交渉が本格化するため、中国政府(含む中国人民銀行)は人民元レートを高めに誘導すると見ていることから、上値を試す展開になると予想している(想定レンジは1米ドル=6.0~6.4元、1元=16.5~18.0円)。
1――4月の人民元の動き
2――今後の展開
米中の経済金融環境を見ると、米国では景気拡大が継続しており予想期間内(18年6月まで)に追加利上げがあると見られる。他方、中国でも景気は堅調であり、4月17日に公表された18年1-3月期の成長率は実質で前年同期比6.8%増と18年の成長率目標(6.5%前後)を上回るとともに、消費者物価は緩やかに上昇率を高めている(図表-3)。そして、中国人民銀行はリバースレポ(7D)の金利を米利上げに追随して引き上げた(図表-4)。但し、中国の引き上げ幅は米国より小幅に留まっているため米中金利差は縮小、元安・米ドル高が進みやすい状況となっている。
そして、これから18年6月に向けては、米通商法301条の発動を巡る米中通商交渉が本格化する。米中の“関税引き上げ合戦”は、中国経済だけでなく米国経済にも大きな打撃となるため、米中両国はその回避に向けての道を探ることになるだろう。そして、米中通商交渉の期間中、中国政府(含む中国人民銀行)は人民元レートを高めに誘導する可能性がある。中国サイドから見ると、人民元レート上昇は輸出にこそ不利に働くものの、ここもとの中国の景気回復は世界経済の好調と輸出に依存し過ぎたとの負い目がある上、購買力平価との関係で見て大幅に割安な現状を踏まえればある程度のレート調整はやむを得ない面もある(図表-5)。また、人民元レートの上昇は輸入物価を押し下げるため、消費者物価が上昇し始めた中ではインフレ抑制効果も期待できる。従って、中国経済の現状を考えると人民元レート上昇がもたらす悪影響は小さいため、中国政府(含む中国人民銀行)は、本格化する米中通商交渉を有利に進めるためにも、人民元レートを高めに誘導すると見ている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2018年05月02日「経済・金融フラッシュ」)
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