2018年05月01日

【3月米個人所得・消費支出】消費支出(前月比)は+0.4%。3ヵ月ぶりに消費の伸びが加速

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:名目個人消費支出は市場予想に一致も、個人所得は予想を下回る

4月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は3月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月改定値:+0.3%)となり、+0.4%から下方修正された前月に一致、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.4%(前月改定値:横這い)と、+0.2%から下方修正された前月を上回り、市場予想(+0.4%)に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比+0.4%(前月改定値:▲0.2%)と、こちらは横這いから下方修正された前月は上回ったものの、市場予想(+0.5%)は下回った(図表5)。貯蓄率1は3.1%(前月:3.3%)と前月から低下した。

価格指数は、総合指数が前月比横這い(前月:+0.2%)と前月から伸びが鈍化、市場予想(横這い)には一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.2%(前月値:+0.2%)と、こちらは前月、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+2.0%(前月値改定値:+1.7%)と、+1.8%から下方修正された前月を上回った一方、市場予想(+2.0%)に一致した。コア指数は+1.9%(前月値:+1.6%)と、こちらも前月を上回ったものの、市場予想(+1.9%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:3ヵ月ぶりに消費の伸びが加速

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 名目個人消費(前月比)は、17年12月の+0.5%から2ヵ月連続で伸びが鈍化していたものの、3月は3ヵ月ぶりに伸びが加速した。

一方、所得対比でも3月の個人消費が所得の伸びが上回ったことから、貯蓄率は3ヵ月ぶりの低下となった。

先日発表された1-3月期の実質個人消費は、前期比年率+1.1%(前期:+4.0%)と前期から大幅な伸び鈍化となったが、3月の個人消費が漸く明確な回復を示したことから、4-6月期は個人消費の伸び加速が期待できると言えよう。個人消費を取り巻く環境は労働市場の回復持続や、税制改革に伴う可処分所得の増加など、消費の追い風となっており、消費低迷が長期化することは考え難い。

一方、物価は総合指数(前年同月比)がFRBの物価目標(2%)に一致した。これは17年2月以来である。また、携帯電話会社が料金プランを変更した影響で17年3月以降に物価が▲0.2%ポイント超押下げられた特殊要因が剥落したこともあって、コア指数も前月から明確に伸びが加速しており、物価目標の一歩手前まで上昇した。原油価格が上昇していることに加え、労働需給のタイト化により、賃金上昇の加速が見込まれることもあり、物価は上昇し易い局面に入ったと言えよう。

3.所得動向:実質可処分所得は小幅ながら前月から伸びが加速

個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.2%(前月:+0.4%)と17年10月以来の水準に鈍化したほか、利息・配当収入も+0.3%(前月:+0.4%)と前月から伸びが鈍化した(図表2)。一方、移転所得は+0.4%(前月:横這い)と前月から伸びが加速した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.3%(前月:+0.3%)と、前月並みの底堅い伸びとなった(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベースは前月比+0.2%(前月:+0.1%)と、こちらは前月から小幅ながら伸びが加速した。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財・サービスともに伸びが加速

名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.1%(前月:▲0.4%)と前月からプラスに転じたほか、サービス消費も+0.6%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した(図表4)。
財消費では、非耐久財が▲0.2%(前月:▲0.4%)と前月からマイナス幅が縮小したものの、2ヵ月連続で減少となった。ガソリン・エネルギーが▲4.1%(前月:▲3.2%)と2ヵ月連続で大幅なマイナスとなったことが大きい。

一方、耐久財は+0.8%(前月:▲0.4%)とこちらは3ヵ月ぶりにプラスに転じた。家具・家電が+0.6%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速したほか、自動車・自動車部門が+1.1%(前月:▲2.5%)と前月からプラスに転じた。

サービス消費では、金融・保険が+0.8%(前月:+1.0%)と前月から伸びが鈍化したほか、娯楽サービスが▲0.1%(前月:+1.5%)と前月からマイナスに転じた。一方、外食・宿泊が+0.5%(前月:+0.3%)、医療サービスも+0.7%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速した。さらに、住宅・公共料金が+1.2%(前月:▲0.6%)とプラスに転じ、サービス消費を押上げた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比では物価押下げも、前年同月比で物価押上げが続く

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.8%(前月:▲0.1%)と2ヵ月連続でマイナスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.2%(前月:▲0.1%)とこちらは前月からプラスに転じた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+7.9%(前月:+7.2%)と前月から伸びが加速した(図表7)。エネルギー価格は16年11月以降、物価を押上げる状況が持続している。最後に食料品価格指数は+0.4%(前月:+0.7%)と、こちらも9ヵ月連続のプラスとなっており、物価を押上げている。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2018年05月01日「経済・金融フラッシュ」)

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