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- インサイダー取引規制強化の効果-公表前の株価下落に影響したか?
1――公表前の株価下落傾向はインサイダー取引を暗示する
図表1は、実際に公募増資に関わるインサイダー取引として摘発された事例における対象2銘柄の価格が、公表前後でどのような変動をしたかを示す。縦軸の累積超過収益率は、20営業日前から各日の超過収益率1を足し合わせたもので、実際の株価収益率から市場全体の影響を除いたものである。つまり、累積超過収益率が負であれば、20営業日前以降から各日における対象株式の収益率は、市場全体より小さかったことを表す。2銘柄ともに、公表直後に株価が下落しているのみならず、公表の12営業日前頃から徐々に下落していることがわかる。
先述の通り、一般に、公募増資を公表した企業の株価はその直後に大きく下落する。公募増資に関する非公開情報を事前に入手し、公表前に既保有株式を売れば、損失を回避できる。さらに、公表前に空売りし、公表後に株価下落を確認した後、株式を買い戻せば利益獲得も狙える。[図表1]の2銘柄では、公募増資に関する非公開情報を入手した一部の投資家が、このような行為を実施したことにより、公表前に株価が下落したと考えられる。この類の不公平な取引は、一般投資家の利益を害するために排除されるべきであり、金融商品取引法によって禁止されている。
1 基礎研レポート「株式市場の反応は資金の募集形式により異なるか?」(2018年3月29日)
また、超過収益率の算出方法も記載
2――処罰対象を情報伝達者にまで拡大
3――2014年の改正によりインサイダー取引は抑制されている
累積超過収益率がはじめて有意に負になるのは、改正前が11営業日前、改正後は2営業日前となった[図表4]。改正後の方が摘発件数は多いにも関わらず[図表2]、傾向としては株価下落の開始が遅れていた。改正後においても公表日直前の株価下落はあるが、これはインサイダー取引の摘発事例があることから、こうした不公正な取引が反映したものと考えられる。全体としては、下落開始の遅れや下落幅の減少傾向から見て、規制強化の成果はあったと考えて良いのではないだろうか。
2 累積超過密度の分散が改正後と比べ大きく、リーマンショック直後の混乱が影響していると考えられるため、今回は2010年以降を対象とした
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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水野 友理那
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(2018年04月16日「基礎研レター」)
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