- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 米国経済 >
- 米経済政策の行方-株式市場は不安定に
2018年04月06日
米経済政策の行方-株式市場は不安定に
基礎研REPORT(冊子版)4月号
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1―米財政は景気刺激的に
米国では、有権者の支持を得ようとして景気刺激的な経済政策を行うために、大統領選挙の年に景気が良くなる傾向があるという「ポリティカル・ビジネス・サイクル(政治的景気循環)」の存在が指摘されてきた。今年は大統領選挙の年ではないが、下院議員全員と上院議員の三分の一が改選となる中間選挙の年だ。トランプ大統領の与党共和党は現在上下院両方で過半数を握っているが、どちらか一方でも過半数を失うことがあれば、今後の政権運営には大きな打撃となる。共和党が51議席、民主党が49議席と伯仲している上院では、改選となるのは民主党が26議席に対して共和党は8議席と少なく、この点で共和党が圧倒的に有利だが、トランプ大統領の支持率は低迷しており、予断を許さない状況だと伝えられている。
昨年末には今後10年間で1兆5000億ドル規模となる大型減税が成立した上に、こうした政治情勢が影響したためか、年明けに提出された予算教書ではメキシコ国境の壁の建設費など230億ドルの国境警備強化や、今後10年間で2000億ドルに上るインフラ投資支出、国防費の増額などが盛り込まれており、財政政策は非常に景気刺激的なものになりそうだ。
昨年末には今後10年間で1兆5000億ドル規模となる大型減税が成立した上に、こうした政治情勢が影響したためか、年明けに提出された予算教書ではメキシコ国境の壁の建設費など230億ドルの国境警備強化や、今後10年間で2000億ドルに上るインフラ投資支出、国防費の増額などが盛り込まれており、財政政策は非常に景気刺激的なものになりそうだ。
2―米国の金融正常化
民主主義の弱点の一つは、政策が短期志向になりやすいことだ。成果が明らかになるまでに時間がかかるものは採用されにくく、すぐに成果が表れるものや、成果が分かりやすい政策が採用されやすい。短期的には国民の負担になるが、長い目で見れば国民のためになるという政策は、当面の不人気が避けられないので採用されにくく、問題を先送りすることになりがちだ。米FRB(連邦準備制度理事会)は、パウエル新議長の下でも、イエレン前議長時代と同様に緩やかな金利引き上げが続けられることになるだろう。2月の失業率も4.1%と米国としては極めて低い水準にあって、大規模な財政赤字を出してまで財政政策による大規模な景気刺激を行わなくてはならないような状況ではない。むしろ、経済の先行きに対して市場が楽観的になりすぎることの方が心配で、景気刺激的な財政政策とのバランスを考えると利上げを加速させた方が良いくらいだ。
先進国の中央銀行は形の上では政府や議会から独立しているが、現実の関係は複雑で微妙だ。世界の中央銀行の手本とも言える米国のFRBもその例外ではなく、必ずしも最適な政策が実行できるとは限らない。
先進国の中央銀行は形の上では政府や議会から独立しているが、現実の関係は複雑で微妙だ。世界の中央銀行の手本とも言える米国のFRBもその例外ではなく、必ずしも最適な政策が実行できるとは限らない。
3―株式市場は不安定化
ニューヨーク市場のダウ平均株価(工業株30種)は、トランプ大統領が誕生してから上昇の勢いが増して史上最高値の更新が続いたが、2月に入って前日比1175ドル安という史上最大の下げ幅を記録した。イエール大学のシラー教授はかなり前から、米国の株価は割高だと警鐘をならしており、市場には過熱感もある。利上げの速度が速すぎれば株価の急落など金融市場の混乱を招きかねず、遅すぎれば経済や金融市場の過熱を招いて最終的には非常に大きな調整が避けられなくなってしまう。
FRBは2014年に資産購入額の削減に着手し、その後2015年末から利上げを続けており、金融政策正常化の最終段階とも言うべき保有資産の規模縮小にも着手した。この影響もあって、米国の株価は不安定な動きになるだろう。
FRBは2014年に資産購入額の削減に着手し、その後2015年末から利上げを続けており、金融政策正常化の最終段階とも言うべき保有資産の規模縮小にも着手した。この影響もあって、米国の株価は不安定な動きになるだろう。
2008年のリーマン・ショックによる経済の混乱に対処するため、主要中央銀行は超金融緩和を行ったが、米国に続いて欧州でもECB(欧州中央銀行)が量的緩和のための資産買入れ額の規模縮小に動きだした。米欧の金融緩和縮小への動きが、世界の金融市場にどのような影響を与えるのかは予断を許さない。黒田総裁を再任し、雨宮・若田部両氏を新副総裁に任命するという日銀の人事が国会で承認され、4月から黒田日銀の二期目がスタートすることになった。米欧が金融正常化に向かう中で日本の金融政策は難しいかじ取りを迫られることになりそうだ。
(2018年04月06日「基礎研マンスリー」)
櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
櫨(はじ) 浩一のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
|---|---|---|---|
| 2020/03/06 | 不安の時代ー過剰な貯蓄を回避する保険の意義 | 櫨(はじ) 浩一 | 基礎研マンスリー |
| 2020/02/27 | MMTを考える | 櫨(はじ) 浩一 | 基礎研レポート |
| 2020/02/07 | 令和の日本経済はどうなるか-経済予測の限界と意義 | 櫨(はじ) 浩一 | 基礎研マンスリー |
| 2020/01/31 | 不安の時代~過剰な貯蓄を回避する保険の意義~ | 櫨(はじ) 浩一 | エコノミストの眼 |
新着記事
-
2025年12月16日
日銀利上げが確実視、でも進まない円高の行方~マーケット・カルテ1月号 -
2025年12月16日
講義中にネトフリを見る学生たち-8割の学生が「講義中に動画を見たことがある」と回答 -
2025年12月16日
変わるクリスマス~「誰と過ごすか」から「どう過ごしたいか」へ-データで読み解く暮らしの風景 -
2025年12月16日
中国の社会保障財政(2024年)【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(72) -
2025年12月16日
今週のレポート・コラムまとめ【12/9-12/15発行分】
お知らせ
-
2025年12月16日
News Release
令和7年度 住宅ストック維持・向上促進事業「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」に関するシンポジウムの開催
-
2025年12月01日
News Release
-
2025年12月01日
News Release
【米経済政策の行方-株式市場は不安定に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
米経済政策の行方-株式市場は不安定にのレポート Topへ







![[日米株価の推移]](https://www.nli-research.co.jp/files/topics/58328_ext_15_2.jpg?v=1522996733)


