2018年03月09日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(3月号)~輸出は旧正月の影響で上振れ、基調読めず

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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18年1月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て通関ベース)は前年同月比23.0%増と、前月の同11.5%増から上昇し、8ヵ月連続の二桁増を記録した(図表1)。1月の輸出の急増は、昨年1月だった旧正月が今年は2月となり連休前の関連需要の増加がずれ込んだことが主因である。しかし、2-3月には反動減で輸出の伸びが大きく鈍化する可能性もあり、輸出の基調は上振れした1月の結果だけで判断することはできない。輸出は昨年、海外経済の回復や半導体需要の増加、一次産品の価格上昇が全体を押し上げたが、足元では輸出の増勢はピークアウトしたかにも見えている。

ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、東アジア向け(同24.4%増)と東南アジア向け(同19.4%増)、北米向け(同17.9%増)がそれぞれ上昇する一方、EU向け(同10.8%増)が小幅に低下した(図表2)。東アジア向けを中心に好調に推移している傾向に変化は見られない。
(図表1)ASEAN6カ国の輸出額/(図表2)ASEAN5ヵ国仕向け地別の輸出動向
タイの18年1月の輸出額は前年同月比17.6%増と、前月の同8.6%増から上昇した。輸出の基調は、海外経済の回復を背景に需要が拡大した電子機器や自動車・同部品、また価格が上昇した製品を中心に増加傾向を維持しているが、昨年後半にピークアウトしたかにも見える。一方、輸入額は前年同月比24.3%増(前月:同16.6%増)と上昇した結果、貿易収支は1.2億ドルの赤字となり、前月から1.6億ドル赤字が縮小した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同17.8%増(前月:同16.3%増)と上昇し、6ヵ月連続の二桁成長を続けている(図表4)。工業製品の内訳を見ると、電子機器(同17.8%増)、自動車・部品(同18.9%増)が高水準を維持し、機械・装置(同16.7%増)と石油化学製品(同22.0%増)が大きく上昇した。また鉱業・燃料は同28.9%増(前月:同15.0%増)と上昇し、石油製品を中心に6ヵ月連続の二桁増となった。農産品・加工品は同16.6%増(前月:同1.6%増)と上昇した。天然ゴム(同20.7%減)が落ち込んだものの、コメ(同37.2%増)や加工食品(同22.4%増)、ゴム製品(同23.2%増)が好調だった。
(図表3)タイの貿易収支/(図表4)タイ輸出の伸び率(品目別)
ベトナムの18年1月の輸出額は前年同月比41.6%増と、前月の同18.7%増から大きく上昇し、12ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出は16年後半に主力の電気・電子製品が勢いを取り戻してから政府目標(17年が+6-7%、18年が+7-8%)を上回る伸びが続いているが、新型スマートフォン関連の輸出は昨年10月にピークアウトしたかに見え、先行きの輸出は好調を維持しつつも増勢が鈍化すると見込まれる。一方、輸入額も前年同月比53.1%増(前月:同17.0%増)と大きく上昇した。結果として、貿易収支は前月の8.3億ドルの赤字から4.1億ドルの黒字に転じた(図表5)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同69.3%増(前月:同45.0%増)、コンピュータ・電子部品が同48.4%増(前月:同21.5%増)とそれぞれ大幅に上昇した。アパレル関連では織物・衣類が同16.5%増(前月:同8.3%増)、履物が同21.5%増(前月:同10.1%増)と上昇し、それぞれ二桁成長となった。農産品では野菜(同63.6%増)やカシューナッツ(同93.9%増)が好調に推移した上、前月に伸び悩んだコーヒー(同24.1%増)とコショウ(同11.5%増)、コメ(同67.0%増)が大きく上昇した。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同29.2%増(前月:同13.5%増)、地場企業が同12.4%増(前月:同5.2%増)と、それぞれ上昇した。
(図表5)ベトナムの貿易収支/(図表6)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
マレーシアの18年1月の輸出額は前年同月比32.9%増と、前月の同14.4%増から上昇し、7ヵ月連続の二桁増を記録した。輸出の伸び率は主力の電気・電子製品を中心に好調に推移している。一方、輸入額も前年同月比25.9%増と、前月の同17.9%増から上昇した結果、貿易収支は24.6億ドルの黒字と、前月から6.8億ドル増加した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同41.8%増(前月:同15.6%増)と、主力の電気・電子製品(同43.3%増)を中心に上昇した(図表8)。また化学製品が同38.3%増(前月:同16.5%増)と上昇したほか、動植物性油脂も同24.9%増(前月:同0.0%増)とパーム油を中心に大きく上昇した。鉱物性燃料は同17.4%増(前月:同16.2%増)と小幅に上昇した。原油(同12.8%増)こそ低下したものの、石油製品(同15.1%増)と天然ガス(28.5%増)が上昇した。
(図表7)マレーシア貿易収支/(図表8)マレーシア輸出の伸び率(品目別)
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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