2018年01月23日

EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(2)-EIOPAの2017報告書の概要報告-

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2|MA(マッチング調整)
(1)適用会社
MAについては、英国とスペインの38社が適用しており、これは前回の報告書と同じである。損害保険会社及び再保険会社の適用はない。 なお、英国は2016年に新たに12のMA適用申請を受け取った、としている。

技術的準備金の市場シェアでは、EEA全体の14.95%であるが、英国国内では52.7%、スペイン国内では55.7%の会社が適用している。
MAの国別適用状況
さらに、MAとTTP(技術的準備金に関する移行措置)を併用している会社の技術的準備金の市場シェアでは、EEA全体の10.7%(英国の保険会社だけで10.2%)であるが、英国国内では39.4%、スペイン国内では 20.3%となっている。

英国では、MAを適用している23社のうち21社がTTPも適用しており、前回の報告書と同じであるが、スペインでは15社のうち6社がTTPを適用しており、この数は前回の報告書の8社に比べて2社減っている。
MAとTTPを併用している会社の国別状況
(2)SCR比率への影響
MAを適用しなかった場合のSCR比率は、英国では155%から65%に90%ポイント低下し、スペインでは264%から186%に79ポイント低下する。
図表 MA適用によるSCR比率への影響
(3)技術的準備金への影響
MA非適用による適用会社における技術的準備金への影響は、以下の通りであり、英国では4.0%、スペインでは5.4%増加する。
図表 MA適用による技術的準備金への影響
3|VA(ボラティリティ調整)
(1)適用会社
VAについては、幅広く23カ国、730の会社が適用している。

国別では、フランスが189社と最も多く、次がスペインで87社、ドイツ82社、イタリア74社となっている。

前回の報告書との比較では、122社減少しているが、そのうちの半分以上はルクセンブンルグの63社の減少によるものであり、これにフランスの28社、イタリアンの18社と続いている。一方で、デンマークでは11社増加している。なお、他の措置と異なり、損害保険会社の適用会社数も多くなっている。
VAの国別適用状況(会社数)
技術的準備金の市場シェアでは、EEA全体で65.8%の会社がVAを適用しているが、国別ではフランスが21.6%、ドイツが10.5%、英国が8.3%を占めている。
図表 VAを適用している会社の技術的準備金のEEA市場シェア
11カ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ノルウェー、スペイン)で、国内市場の75%以上の技術的準備金に対してVAが適用されている。

さらに、生命保険に対する技術的準備金の殆どは、VAを適用した会社で保持されている。

VAとTTPを併用している会社の国別内訳は以下の図表の通りとなっている。

会社数は、129社で前回の報告書の118社に比べて11社増加している。これらの会社の技術的準備金のEEA全体における市場シェアは15.8%である。なお、ここでも英国が6%でトップとなっている。
VAとTTPを併用している会社の国別状況
VAを適用した730社のうち469社がグループの一員である。特にドイツでは、VAを適用している会社は全てグループの一員である。

469社の技術的準備金の市場シェアは56.2%となっている。
(2)SCR比率への影響
VAを適用しなかった場合のSCR比率への影響については、次ページの上の図表の通りである。

EEA全体の平均では223%から199%に24%ポイント低下する。

国別では、デンマークが314%から234%に80%ポイント低下し、絶対水準では最も影響度が高く、ドイツが339%から286%に53%ポイント低下で続いている。オランダは166%から116%に49%ポイント低下し、割合では30%の低下で最も影響が大きい。

一方で、主要国では、MA適用会社の多い英国とスペインでの影響は6%ポイントと低くなっている。また、フランスは18%ポイント、イタリアは9%ポイントの影響となっている。

次ページの下の図表が、VAを適用している会社の適用前後の状況を示している。

VAを適用している会社の83%の絶対的な影響は0%から50%の範囲内となっている。また、会社数の3%に相当する20社(技術的準備金の市場シェアが3.3%)がVAを適用しない場合、SCR比率が100%未満となる。さらに、3社(技術的準備金の市場シェア0.01%)が、VAを適用しない場合、適格自己資本はマイナスになる。
図表 VA適用によるSCR比率への影響
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中村 亮一

研究・専門分野

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