2018年01月22日

EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2017報告書の概要報告-

中村 亮一

文字サイズ

4|SCR比率への影響(EEA全体及び国別)
MA、VA、TRFR、TTPのうちの少なくとも1つの措置を適用している会社ベースでみると、措置の非適用によるSCR比率への影響は、EEA全体及び国別に、以下の通りとなっている。

EEA全体では、SCR比率は、適用前の217%から148%に69%ポイント低下する。

これを国別に見てみると、低下する絶対的な「%ポイント」水準が最も大きいのはドイツで、341%から228%に113%ポイント低下する。次が英国で、154%から47%に108%ポイント低下する。デンマークは314%から234%に80%ポイント低下し、スペインは223%から147%に76%ポイント低下する。一方で、主要国では、フランスは198%から167%への30%ポイントの低下、イタリアは218%から208%へのわずか10%ポイントの低下に留まっている。

影響度を割合で見てみると、英国が154%から47%へと、適用時の31%の水準に低下して、最も大きな影響を受けている。続いて、ポルトガルで152%から86%に57%の水準に低下する。前回の報告書では英国に次いで影響度が大きかったドイツは、前回の報告書での47%に比べて67%の水準に影響度が低下している。

なお、英国とポルトガルのSCR比率が、各種措置の非適用ベースでは、100%を下回っている。特に、英国においては、各種措置の非適用ベースのSCR比率は47%と加盟国中の最低水準となる。さらに、各種措置の非適用ベースのSCR比率は、ギリシャが114%、オランダが116%と低くなっている。
図表 MA、VA、TRFR、TTPの少なくとも1つの措置を適用している会社のSCR比率に対する平均的影響
5|SCR比率への影響(会社別)
MA、VA、TRFR、TTPのうちの少なくとも1つの措置を適用している会社ベースでみると、措置の非適用によるSCR比率への影響は、会社別に、以下の図表の通りとなっている。

少なくとも1つの措置を適用している会社の74%で、その影響は0と100の%ポイントの範囲内にある。

措置の適用が無かった場合、11%の会社(86社でEEA全体の技術的準備金の19%に相当)のSCR比率は100%を下回っていた。さらに、1.9%の会社(15社でEEA全体の技術的準備金の2.4%に相当)でSCRをカバーする適格自己資本がマイナスになっていた。
 
図表 措置適用有無によるSCR比率の変化(会社別)の分布状況
6|適格自己資本やSCRへの影響
MA、VA、TRFR、TTPのうちの少なくとも1つの措置を適用している会社ベースで、措置の非適用による適格自己資本やSCR への影響については、以下の図表の通りである。

EEA全体では、適格自己資本は19.1%減少し、SCRは18.4%増加する。

国毎に、さらに適格自己資本とSCRのそれぞれの影響度は、どの措置を適用しているのかによって異なってくる。ドイツや英国はいずれの影響度も2桁以上で高いが、フランスとイタリアの影響度は1桁である。さらに、スペインやポルトガルはSCRの影響度は低いが、適格自己資本への影響度は高い。一方で、デンマークやオランダはSCRへの影響度が高くなっている。
図表 MA、VA、TRFR、TTPの少なくとも1つの措置を適用している会社のSCR適格自己資本及びSCR に対する平均的影響
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2017報告書の概要報告-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2017報告書の概要報告-のレポート Topへ