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2018年01月22日
EUソルベンシーIIにおけるLTG措置等の適用状況とその影響(1)-EIOPAの2017報告書の概要報告-
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2|LTG措置及び株式リスク措置の適用状況(全体)
ソルベンシーII対象の2,945社のうち、26.6%にあたる783社が、MA、VA、TRFR、TTP、DBERのいずれかの措置を適用している。これらの会社は23カ国にわたっており、8カ国(エストニア、クロアチア、アイスランド、リトアニア、ラトビア、マルタ、ポーランド、スロベニア)からの会社は、いずれの措置も適用していない。なお、いずれかの措置を適用している会社の割合については、生命保険会社で52.1%、生損保兼営会社で51.4%と高くなっている。
また、これを技術的準備金の比率で見ると、全体の8,769十億ユーロのうち、6,505十億ユーロ、74.2%(生命保険だけでみれば77.7%)の会社がいずれかの措置を適用している。
ソルベンシーII対象の2,945社のうち、26.6%にあたる783社が、MA、VA、TRFR、TTP、DBERのいずれかの措置を適用している。これらの会社は23カ国にわたっており、8カ国(エストニア、クロアチア、アイスランド、リトアニア、ラトビア、マルタ、ポーランド、スロベニア)からの会社は、いずれの措置も適用していない。なお、いずれかの措置を適用している会社の割合については、生命保険会社で52.1%、生損保兼営会社で51.4%と高くなっている。
また、これを技術的準備金の比率で見ると、全体の8,769十億ユーロのうち、6,505十億ユーロ、74.2%(生命保険だけでみれば77.7%)の会社がいずれかの措置を適用している。
3|LTG措置及び株式リスク措置の適用状況(措置別)
MA、VA、TRFR、TTP、DBERの措置別の適用状況は、以下の図表の通りとなっている。
・VAは、最も多く730社(技術的準備金でのシェア65.7%、以下同様)が適用している。
・TTPは、次に多く163社(24.8%)が適用している。
・MAは、38社(15.0%)が適用している。
・TRFRは、6社(0.3%)が適用している。
・DBERを適用したのは、1社(0.0%)のみである。
・損害保険会社は、VAを多く適用し、TTPも一定数が適用しているが、基本的には、各種の措置は、技術的準備金が高水準な生命保険事業に対して、適用されている。
なお、MAは、英国やスペインの保険会社で適用されているため、会社数の割に、技術的準備金のシェアは大きくなっている。
MA、VA、TRFR、TTP、DBERの措置別の適用状況は、以下の図表の通りとなっている。
・VAは、最も多く730社(技術的準備金でのシェア65.7%、以下同様)が適用している。
・TTPは、次に多く163社(24.8%)が適用している。
・MAは、38社(15.0%)が適用している。
・TRFRは、6社(0.3%)が適用している。
・DBERを適用したのは、1社(0.0%)のみである。
・損害保険会社は、VAを多く適用し、TTPも一定数が適用しているが、基本的には、各種の措置は、技術的準備金が高水準な生命保険事業に対して、適用されている。
なお、MAは、英国やスペインの保険会社で適用されているため、会社数の割に、技術的準備金のシェアは大きくなっている。
6―全体的な状況(各種措置のSCR比率や技術的準備金等への影響)
これらの措置がSCR比率や技術的準備金等に与える影響については、以下の通りとなっている。
1|前提
2017年の措置の影響を評価するために必要なデータを収集するために、2つのアプローチが使用されている。
EIOPAは、2017年1月1日にMA、VA、TRFR、TTPの影響についての情報を、適用後初めて2017年にNSAsに送付された専用の定量的報告書テンプレートを通じて収集した。収集された情報は、これらの4つの措置の影響を一貫して分析することができる。
補外およびED(SA)に関しては、情報要求によって情報が収集された。要請の範囲は、株式リスクおよびキャッシュフローの臨界値を超える企業に限定されていた。したがって、EIOPAが事業の財務状況に及ぼす補外とSAの影響についての情報は限られているが、その措置がソルベンシー状況に著しい影響を与える会社の代表者とみなされている。
DBERに関しては、2017年の初めにこの措置を使用していたのは1社だけだった。このため、この措置の影響については、補外、SA、MA、VA、TRFR及びTTPのみを扱っている。提示された結果は、2016年12月31日の基準日に関係している。また、ERPは定義上、会社の財務状況に直接的な影響はない。
1|前提
2017年の措置の影響を評価するために必要なデータを収集するために、2つのアプローチが使用されている。
EIOPAは、2017年1月1日にMA、VA、TRFR、TTPの影響についての情報を、適用後初めて2017年にNSAsに送付された専用の定量的報告書テンプレートを通じて収集した。収集された情報は、これらの4つの措置の影響を一貫して分析することができる。
補外およびED(SA)に関しては、情報要求によって情報が収集された。要請の範囲は、株式リスクおよびキャッシュフローの臨界値を超える企業に限定されていた。したがって、EIOPAが事業の財務状況に及ぼす補外とSAの影響についての情報は限られているが、その措置がソルベンシー状況に著しい影響を与える会社の代表者とみなされている。
DBERに関しては、2017年の初めにこの措置を使用していたのは1社だけだった。このため、この措置の影響については、補外、SA、MA、VA、TRFR及びTTPのみを扱っている。提示された結果は、2016年12月31日の基準日に関係している。また、ERPは定義上、会社の財務状況に直接的な影響はない。
2|措置を非適用とした場合の一般的な状況
これらの措置を非適用とした場合の影響については、以下の通りとなる。
(1) 技術的準備金
MA、VA、TRFRを非適用とすることにより、技術的準備金を算出するために使用される関連するリスクフリー金利が減少するため、一般的に技術的準備金は増加する。
(2) 技術的準備金以外の資産・負債項目
技術的準備金という負債の増加により、繰延税金負債が減少することになる。
(3) 適格自己資本
技術的準備金の増加は自己資本の減少をもたらす。繰延税金負債の減少で一部相殺されるが、保険会社における技術的準備金の位置付けの高さから、一般的に適格自己資本は減少する。
(4) SCR及びMCR
SCR及びMCR(Minimum Capital Requirement:最低資本要件)を算出する各項目については、措置の非適用により、増加する場合も減少する場合もある。リスクの規模を定量化する場合に、技術的準備金を利用している場合があることから、これによりSCR等は増加する。さらに、技術的準備金の増加は将来配当の金額等を減少させることを通じて、より高い損失吸収能力を要求することになる。繰延税金負債の減少による、繰延税金のより高い損失吸収能力を通じての資本要件の増加もある。
以上のことにより、一般的にSCR等は増加する。
これらの措置を非適用とした場合の影響については、以下の通りとなる。
(1) 技術的準備金
MA、VA、TRFRを非適用とすることにより、技術的準備金を算出するために使用される関連するリスクフリー金利が減少するため、一般的に技術的準備金は増加する。
(2) 技術的準備金以外の資産・負債項目
技術的準備金という負債の増加により、繰延税金負債が減少することになる。
(3) 適格自己資本
技術的準備金の増加は自己資本の減少をもたらす。繰延税金負債の減少で一部相殺されるが、保険会社における技術的準備金の位置付けの高さから、一般的に適格自己資本は減少する。
(4) SCR及びMCR
SCR及びMCR(Minimum Capital Requirement:最低資本要件)を算出する各項目については、措置の非適用により、増加する場合も減少する場合もある。リスクの規模を定量化する場合に、技術的準備金を利用している場合があることから、これによりSCR等は増加する。さらに、技術的準備金の増加は将来配当の金額等を減少させることを通じて、より高い損失吸収能力を要求することになる。繰延税金負債の減少による、繰延税金のより高い損失吸収能力を通じての資本要件の増加もある。
以上のことにより、一般的にSCR等は増加する。
措置別に見ると、技術的準備金や適格自己資本ではTTPによる影響額が最も大きく、SCRではMAとVAの影響額がほぼ同程度となっている。
(2018年01月22日「保険・年金フォーカス」)
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