2018年01月09日

公的年金の給付水準低下と長寿に備える制度の検討

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受給者が死亡するまで年金を受け取れる終身年金は、自分が想定した以上に長生きした場合に、金融資産が枯渇して生活水準を落とさざるを得ないリスク(長寿リスク)に対応できる手段である。

公的年金(ソーシャル・セキュリティー)だけでは、十分な給付を確保できない米国では、長寿リスクへの対応が課題となっている。米国UCLA のベナルチ教授が、ノーベル経済学賞を受賞したセーラー教授等と共同で発表した論文では、安定的で十分な老後の生活費を確保するためには、公的年金の受給開始の延期(繰下げ)と、確定拠出年金で、退職後において年金資産の定期的な自動取崩制度の導入等を提言している。

公的年金は繰下げ受給により年金額を増やすことができる。また、確定拠出年金は、退職時に一時金として受け取ることが多いが、自動取崩制度により、計画性のない消費を防ぐことができる。

公的年金の給付水準の引き下げが予想される日本でも、加入者自ら長寿リスクへの対応を迫られている。貯蓄の増加を推し進める政策に加え、繰下げ受給による実質的な受給開始年齢の引き上げと、退職時における一時金受け取りから年金化を促進する政策の検討も必要であろう。
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(2018年01月09日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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