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2017年11月30日
2―内部留保の活用状況
1|設備投資は力強さに欠ける、大企業は海外投資を活発化
「内部留保」という言葉は「内部に蓄積されたお金」と誤解されることもあるが、実際は「内部に蓄積された過去の利益額」を示すものであり、その利益は次の段階として、様々な用途に使用される。決して、そのまま現預金として貯まっているわけではない。従って、内部留保(利益剰余金)増加によって生み出された資金が将来の利益に繋がる投資に回っているのであれば、人件費等の抑制は成長に向けたやむを得ない措置と捉えることが出来なくもない。
そこで、2016年度末の貸借対照表(以下、B/S)を2012年度末時点と比較してみると(図表15)、この間に負債・純資産サイド(資金調達サイド)は、利益剰余金(102兆円増)や借入金(37兆円増)などで211兆円増加した。この211兆円が各資産に分配されて運用されているわけだが、主に増加しているのは、投資有価証券(69兆円増)や現預金(43兆円増)であり、工場設備や店舗といった(国内)有形固定資産の増加は28兆円に留まる。
「内部留保」という言葉は「内部に蓄積されたお金」と誤解されることもあるが、実際は「内部に蓄積された過去の利益額」を示すものであり、その利益は次の段階として、様々な用途に使用される。決して、そのまま現預金として貯まっているわけではない。従って、内部留保(利益剰余金)増加によって生み出された資金が将来の利益に繋がる投資に回っているのであれば、人件費等の抑制は成長に向けたやむを得ない措置と捉えることが出来なくもない。
そこで、2016年度末の貸借対照表(以下、B/S)を2012年度末時点と比較してみると(図表15)、この間に負債・純資産サイド(資金調達サイド)は、利益剰余金(102兆円増)や借入金(37兆円増)などで211兆円増加した。この211兆円が各資産に分配されて運用されているわけだが、主に増加しているのは、投資有価証券(69兆円増)や現預金(43兆円増)であり、工場設備や店舗といった(国内)有形固定資産の増加は28兆円に留まる。
有形固定資産の増加が限定的に留まったのは、企業の設備投資がそれほど活発化しなかったためだ。
B/S上の当期末の有形固定資産は、前期末の有形固定資産残高に当期の設備投資額を加算し、減価償却費を控除した額に当たる。従って、基本的に減価償却を上回る設備投資を実施すれば増加することになる。
近年の設備投資額(ソフトウェア除き)は増加基調にあり、2016年度の設備投資額は43兆円と2012年度を8兆円上回る(図表16)。また、減価償却費(38兆円)と比べても、やや上回っている。
ただし、キャッシュフロー(以下「CF」、内部留保(フロー)+減価償却費)との対比では、設備投資は力強さに欠ける。企業のCFは2012年度から16年度にかけて、内部留保(フロー)の増加に伴って22兆円増加したが、設備投資額の増加は既述のとおり8兆円に留まっている(図表17)。
B/S上の当期末の有形固定資産は、前期末の有形固定資産残高に当期の設備投資額を加算し、減価償却費を控除した額に当たる。従って、基本的に減価償却を上回る設備投資を実施すれば増加することになる。
近年の設備投資額(ソフトウェア除き)は増加基調にあり、2016年度の設備投資額は43兆円と2012年度を8兆円上回る(図表16)。また、減価償却費(38兆円)と比べても、やや上回っている。
ただし、キャッシュフロー(以下「CF」、内部留保(フロー)+減価償却費)との対比では、設備投資は力強さに欠ける。企業のCFは2012年度から16年度にかけて、内部留保(フロー)の増加に伴って22兆円増加したが、設備投資額の増加は既述のとおり8兆円に留まっている(図表17)。
企業規模別に見ると(図表16)、中小企業ではCFの増加9兆円に対して設備投資が4兆円増、大企業ではCFの増加11兆円に対して設備投資が2兆円増となっており、特に大企業の設備投資が進んでいない。
一方、B/S上で大きく増加しているのが投資有価証券であり、2016年度末残高305兆円は2012年度末から69兆円増加している(図表15)。企業規模別でみると、特に大企業で45兆円増と大きく増加(中小企業は20兆円増)している。大企業は、国内での設備投資を抑える一方で、高い成長が見込まれる海外で稼ぐために海外関係会社への投資や海外企業のM&Aを積極化しており、その結果、投資有価証券の残高が大きく増加したとみられる。
03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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