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ネット損保の衆安保険、株式上場-加速するアリババ、テンセントからの「卒業」?-中国保険市場の最新動向(28)
保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき
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1-意外と厳しい中国金融業界からの視線
これまでアリババ・グループなど中国のフィンテック企業は米国で上場している。今回、衆安保険は香港市場で初めて上場したフィンテック銘柄である点に加えて、将来の成長性への期待から、新規株式公開(IPO)への応募倍率が約400倍と過去最高となるなど1、市場の評価は高い。
一方、中国国内や金融業界での捉え方や関心は少し異なるようである。上場自体は高く評価しているものの、三馬ブランド2の手厚い庇護からどのように自立していくのか、実績や収益力が市場の評価に見合っているのか、寧ろ厳しい見方が向けられている。
1 日本経済新聞(2017年9月29日付)
2 アリババ(馬雲)、テンセント(馬化騰)、平安保険(馬明哲)の3社のトップがいずれも「馬」姓である。
2-今後、誰が衆安保険を牽引するのか
アリ金融は、2016年7月に、損保の国泰財産保険会社に51%出資し、筆頭株主となっている。また、本年5月には投資会社など9社とともに信美人寿相互保険会社を設立し、生損保の両分野に進出している。更に、アリババ傘下のヘルスケア分野のプラットフォームであるアリ・ヘルスは、中国太平保険とともにアリ・ヘルス保険株式有限会社を設立し、同プラットフォーム上で医療保険の販売にも着手する。
また、テンセントもその子会社とともに、自社のフィンテック分野の技術の活用を目指した生命保険会社の和泰人寿や、保険代理会社を設立している。
翻って、衆安保険の上場以降、これまであまり表舞台に姿を現さなかった人物が注目をされ始めている。それは同社のトップ、欧亜平 董事長である。2017年上半期の報告書における、各社の出資比率をみてみると、欧亜平氏およびその親族(弟)の関連会社による出資比率の合計は15.35%となっており、筆頭株主のアリ金融(13.82%)に匹敵する(図表1)。
このように、アリ金融、テンセントと衆安保険の保険事業をめぐる関係性は、この4年間で大きく変わってきている。アリ金融、テンセントは引き続き大株主であることに変わりはないが、衆安保険の今後の方向性としては、これまでと同様にニッチで独自性に富んだ商品を打ち出しつつ、両社に頼りきらない経営を更に進めていくようである。
3-主力商品は、アリババ頼みの返品送料補填保険から、傷害・医療保険といったヘルスケア分野へ
3 糖尿病保険については、拙著「Fintech(フィンテック)100、1位の衆安保険を知っていますか?」保険・年金フォーカス【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(20)(2016年6月21日)をご参照ください。
(2017年10月18日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1784
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了、博士(学術)) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・金融庁 中国金融研究会委員(2024年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
【書籍】
第15回日本保険学会賞 受賞 『十四億人の安寧-デジタル国家中国の社会保障戦略』
片山 ゆきのレポート
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