2017年08月15日

中国フィンテック、平安保険の戦略-ネット金融経済圏の形成、集まる4億人の金融ビッグデータ

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき

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■要旨
 
  • 中国の保険業界において、フィンテック分野をリードしている中国平安保険グループ。2025年までの目標として「IT×金融×生活サービスの融合」を戦略に掲げている。保険、銀行、投資(証券など)の3事業に、「ネット金融(フィンテック)」を4本目の事業として正式に加えて1年が経過するが、その効果はどうであろうか。
     
  • 中国のフィンテックを代表するアリババやテンセントなどのIT企業は、ネットショッピングやシェアリングビジネス、ネットゲームなど、より人々の‘日常生活’に密着したアプリやサービスを開発している。また、他社が開発した新たなサービスを取り込むことで、スマホ決済を中心としたモバイル経済圏を形成している。
     
  • 一方、平安保険がネット金融で提供する「生活サービス」は、金融機関として、その機能をより‘金融’に絞っている。例えば、ネットを介して資金の貸し借りを仲介するP2Pや金融商品の購入が可能な「陸金所」、資産運用や財テクのアドバイスがもらえる「平安天下通」といった、資金の貸し借りや、金融商品による資産形成などに重点が置かれたサービスである。
     
  • また、医師とオンラインで健康相談ができたり、薬の手配ができる「平安好医生」、住宅の売買などの「平安好房」など、前掲の金融商品による財テクとは直接関係ないものの、健康情報を通じた医療保険の加入や見直し、個人の不動産の売買といった資産形成につながるサービスもある。
     
  • 平安保険グループの保険商品など金融商品を実際に契約したり、銀行などを利用している個人顧客は1億3,107万人、ネット利用を含め同社のサービスを利用する顧客総数は3億8,000万人に達している(サービス利用の重複分を除く)。これら個人の属性に関する情報、決済、信用情報、投資、保有する金融資産、受診などの健康情報、保有している不動産などおよそ4億人の金融に関するビッグデータが平安保険に集まっているのだ。

■目次

1-2016年、ネット金融(フィンテック)が黒転、純利益のおよそ1割に
2-ネット金融経済圏の形成-集まる4億人の金融ビッグデータ
3-新規顧客の2割はネットから、ネット金融の顧客の23%が生命保険へ加入
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

片山 ゆき (かたやま ゆき)

研究・専門分野
中国の社会保障制度・民間保険

経歴
  • 【職歴】
     2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
     (2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
     ・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
     (2019年度・2020年度・2023年度)
     ・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
     ・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
     日本保険学会、社会政策学会、他
     博士(学術)

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【中国フィンテック、平安保険の戦略-ネット金融経済圏の形成、集まる4億人の金融ビッグデータ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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