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AIGのSIFI指定解除について-FSOCの公表内容と関係者の反応-
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NAICは、以下の声明を公表10している。
NAIC会長のTed Nickel氏は、「AIGは今日、2008年と同じ会社ではない。金融安定監督評議会が最近、同社の指定を解除する決定をしたことで、これを最終的に認めたことを嬉しく思っている。」と述べ、さらに、「保険業界に影響を及ぼすあらゆる認識されたリスクを特定するために、私たちは行動が正当なものであるかどうかについての懸念に対処することを約束する。」とした。
また、NAIC次期会長のJulie Mix McPeak氏は、「AIGの指定解除の決定は、グローバルにシステム上重要な保険会社の国際的な指定手続きを考慮する必要がある。FSOCの徹底的な国内評価の後、米国のグループがシステミックとはみなされない場合、国際的な目的においてシステミックなままである理由と折り合いをつけることは難しい。この進展は、保険監督者国際機構と金融安定理事会のG-SIIs指定プロセスについて、新鮮で率直な見方が必要であることを強調している。」として、IAISによるG-SIIsの指定の考え方の見直しの必要性を述べている。
2017年9月29日
NAICは金融安定監督評議会によるAIGの指定解除に反応する
NAIC会長及びウィスコンシン州保険コミッショナーTed Nickel氏からの声明:
「AIGは今日、2008年と同じ会社ではない。金融安定監督評議会が最近、この会社の指定を解除したことを最終的に認めたことを嬉しく思っている。保険業界に影響を及ぼすあらゆる認識されたリスクを特定するために、私たちは行動が正当なものであるかどうかについての懸念に対処することを約束する。」
ニュージャージー州保険ディレクターでFSOCの州保険監督当局の代表Peter Hartt氏からの声明:
「FSOCのAIGの指定解除決定を正当化する根拠は、信頼性の高い改訂された分析的アプローチを反映しており、セクターとその規制をより明確に理解していることを示唆している。私は、保険監督当局のツールと決議プロセスに関する改訂された分析において特定の特徴に懸念があるが、審議会の決定は積極的なステップである。私は、決定を歓迎し、評議会における州の保険監督当局の代表を継続することを楽しみにしている。」
NAICの次期会長でテネシー州保険コミッショナーJulie Mix McPeak氏からの声明:
「AIGの指定解除の決定は、グローバルにシステム上重要な保険会社の国際的な指定手続きを考慮する必要がある。FSOCの徹底的な国内評価の後、米国のグループがシステミックとはみなされない場合、国際的な目的においてシステミックなままである理由と折り合いをつけることは難しい。この進展は、保険監督者国際機構(IAIS)と金融安定理事会(FSB)のG-SIIs指定プロセスについて、新鮮で率直な見方が必要であることを強調している。」
5―まとめ
1|MetLifeやPrudential FinancialのSIFI指定への影響
複数の関係者の反応の中でも触れられていたが、今回のAIGのSIFI指定解除に伴い、今後はMetLifeのSIFI指定撤回訴訟に対するFSOCの対応やPrudential Financialへの対応が注目されることになる。このままいけば、トランプ政権のスタンスからは、MetLifeもPrudential Financial も正式にFSOCから指定解除を受けることが想定されることになる。特に、MetLifeのSIFI指定については裁判所によって棄却されている状況にあるが、Prudential Financialについても「ノンバンクの中で、Prudentialのみがシステム的に重要であると主張するのは難しい」と考えられることになる。
ACLIのDirk Kempthorne 会長兼CEOが述べているように、「生命保険会社は、システム上重要と指定されるべきではなく、FSOCは残りの生命保険会社の指定を取り消すべきである。」、さらに、「生命保険会社は、経済における金融安定の源泉であり、その長期的な約束とバイ・アンド・ホールドの投資哲学は、ストレス時に経済のためのショックアブソーバを提供している。」との考え方が認められることになるのかが注目されることになる。
今後、これらの問題がどのようなスケジュールでどのような方向で解決されていくのかについては必ずしも明確ではないが、4月の大統領令からの6ヶ月という期限からは10月中に何らかの結論が得られることが想定されることになる。
ただし、今回のFSOCによるAIGのSIFI指定解除決定については、あくまでもメンバーの全員が賛成したわけではなく、賛成6票、反対3票という投票権の3分の2がぎりぎりで確保された形で決定されており、しかも賛成6票での決定に法的要件を満たしていないのではないかとの異議も唱えられている。さらには、今回のFSOCの決定について、「巨大な世界的な金融会社であるAIGを連邦監督から撤退させるというFSOCの行動は、賢明ではなく、これは歴史的な間違いであり、壊滅的な2008年の金融危機に苦しんできた何千万人ものアメリカ人にとって、侮辱である。」との批判的な意見もある。
このように引き続きノンバンクのSIFI指定解除の動きに対しては根強い反対意見も見られることから、あくまでもSIFI指定の問題は、個別会社毎に判断されることになるものとも考えられる。実際に3社がSIFIに指定された考え方は、各社の事業状況を反映した形で、個別会社毎に説明付けが行われている。
ただし、今回のAIGのケースでの判断基準や考え方は、他の保険グループにも大きく共通している部分があり、そもそも今回は「ノンバンクのSIFI指定」そのもののあり方が問われていることになっている状況にある。
なお、こうした状況下でPrudential Financial は、これまでも、指定基準を満たしていないことを長い間主張してきたが、引き続き審査プロセスを通じてその指定に異議を唱えながら、オプションを検討する、と語っている。
2|国際的なG-SIIs指定への影響
今回AIGのSIFI指定解除が決定され、MetLifeのSIFI指定解除の撤回も裁判所の判断を受けているが、Prudential Financial を含む3つの保険会社は全て、金融安定理事会(FSB)が指定するグローバルにシステム上重要な保険会社(G-SIIs)のリストにとどまっている。このリストは11月にレビューされる予定となっている。
NAIC次期会長のJulie Mix McPeak氏が述べているように、今回のAIGの指定解除の決定は、「保険監督者国際機構と金融安定理事会のG-SIIs指定プロセスについて、新鮮で率直な見方の必要性」を強調することになるとも考えられる。彼の考え方によれば、「FSOCの下での徹底した国内評価の結果、米国のグループがシステミックとはみなされない場合、なぜ国際的な目的でシステミックに残るのかを調整することは難しい。」という意見があることになる。もちろん、SIFIとG-SIIsの指定の考え方等は必ずしも同一のものをベースにしているわけではないことから、こうした考え方が必ずしも妥当だというわけではないだろう。ただし、こうした次期NAIC会長の意見も踏まえて、今後IAISによるG-SIIsの指定がどのような形で行われていくことになるのかは極めて注目されることになる。
現在、日本の保険会社において、FSBによりG-SIIsに指定されている会社はなく、また米国と同様の形で、金融庁によってSIFIに指定されている会社もない。ただし、日本の大手保険グループも積極的に海外展開を進めて規模の拡大を図ってきていることや、SIFIやG-SIIsの指定やその規制等が、その他の保険会社の規制等に与える影響も考えられる。
従って、関係者の関心も高いことから、今後もSIFIやG-SIIsを巡る動向については引き続き注視していくこととしたい。
(2017年10月11日「保険・年金フォーカス」)
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