2017年09月21日

【9月米FOMC】予想通り、バランスシート縮小開始を決定。政策金利は据え置き

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
  • ハリケーンの影響
    • 第3四半期の経済成長は、ハリケーン「ハービー」、「イルマ」、「マリア」に伴う深刻な破壊によって押下げられるだろう。経済活動が再開し、再建が進むにつれて成長は直ぐに回復する可能性が高い。
    • 過去の経験からは、これらの影響が今後数四半期を超えて経済全体の方向を変えてしまう可能性は低い。
  • バランスシート縮小方針
    • バランスシート縮小に当っては償還上限額を設けることで、民間投資家が吸収しないといけない金額を限定し、大幅な金利変動や、その他の金融市場にかかる負担を防ぐ。
    • これまで示してきたように、FF目標金利を変動させることが、金融政策手段の基本である。バランスシートは、通常時のアクティブな金融政策手段とはならない。このため、バランスシート正常化プログラムを今後調整することを計画していない。
    • 経済見通しが顕著に悪化し、非負制約によってFF金利の引き下げ幅が限られるような状況になった場合には、バランスシートの再投資戦略を復活させるかも知れない。
  • インフレ動向
    • 14年半ばからの長期に亘るインフレ率の低下には、労働市場の「緩み」、エネルギー価格の下落、ドル高などの明確な理由があった。一方、今年に入ってからのインフレ率の低下は、これらの要因では説明できないため、不可解な動きとなっている。委員会は、現在起こっていることの要因を明確に理解できていると言うつもりはない。
    • 委員会は、主にこれらの低下が一時的な要因によるもので、来年以降影響が解消されると判断している。
  • その他
    • トランプ大統領とは、就任直後に会った。その際、大統領には任期を全うすることを伝えた。その後、大統領とは会っていない。来年の任期以降のことについてはコメントしない。

5.FOMC参加者の見通し

FOMC参加者(FRBメンバーと地区連銀総裁の16名 )の経済見通しは(図表1)の通り。前回(6月14日)公表されたものと比較すると、17年の成長率、18、19年の失業率が上方修正(失業率は低下)された一方、18年の物価見通しが下方修正された。なお、今回から20年の見通しが公表された。
(図表1)FOMC参加者の経済見通し(9月会合)
(図表2)政策金利見通し(年末時点) 一方、政策金利の見通し(中央値)は、19年が2.94%から2.69%に下方修正されたほか、長期についても3.00%から2.75%に下方修正された(図表2)。長期見通しの下方修正について、記者会見では長期的な中立金利水準が下方修正された可能性に言及された。17年(1.38%)、18年(2.13%)は、前回の見通しが維持された。今回、20年について2.88%の見通しが公表された。

この結果、政策金利の引き上げ回数は、17年が年内1回(0.25%)、18年は年3回(0.75%)、19年は年2回(0.50%)となったほか、今回公表された20年では、年1回(0.25%)を見込んでいることが示された。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2017年09月21日「経済・金融フラッシュ」)

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