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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(2)-政策オプションの影響評価-
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1―はじめに
このコンサルテーション・ペーパーの概要について、2回のレポートで報告することとしているが、前回のレポートでは、欧州委員会からの助言要求項目の内容とそれに対する今回のCPでの助言案について報告した。今回のレポートでは、今回のCPの助言のドラフト作成中に検討された政策オプションの影響評価について報告する。
1 https://eiopa.europa.eu/Pages/News/EIOPA-consults-on-its-first-set-of-advice-on-the-Solvency-II-review-.aspx
https://eiopa.europa.eu/Publications/Consultations/EIOPA-CP-17-004_Consultation_Paper_on_First_set_of_Advice_on_SII_DR_Review.pdf
2―今回のCPにおけるドラフト影響評価の位置付け
コストと便益の分析は、影響評価手法に従って実施される。
欧州委員会は、EIOPAに対して、評価中に収集した分析を裏付ける十分な事実データを提供するように要請した。これにより、収集されたデータを最大限に活用し、EIOPAによって提出された助言の提案の重要性を評価し、全てのステークホルダーがEIOPAの提案するオプションの全体的な影響を理解することが可能になる。
今回の影響評価は、前回のレポートでも述べたように、EIOPAが2017年10月までに欧州委員会に提出する予定の第1の助言セットに関連しており、これらは会社の年次報告データの分析があまり関係のない項目が多く含まれている。
なお、第2の助言セットが開発され、それぞれの影響評価と一緒に公開協議の対象となり、2018年2月までに欧州委員会に提出される。第2の助言セットは、年次報告データの分析が必要であり、技術的助言要請から発生している他の全ての項目を含んでいる。具体的には、以下の通りである。:(1)リスクマージン、(2)保険料及び責任準備金リスク、(3)災害リスク、(4)死亡及び長寿リスク、(5)カウンターパーティ・デフォールトリスク、(6)グループレベルでの通貨リスク、(7)金利リスク、(8)自己資本、(9)未格付債券及び貸付金、(10)非上場株式及び戦略的参加。
3―今回のCPにおけるドラフト影響評価の概要
なお、CPにおける記述構成は、各項目において、(1)政策オプションの説明、の後、(2)各オプションの影響分析、が行われ、それらの結果に基づいて、最後に、(3)各オプションの比較が行われ、評価が示される、という形になっているが、ここでは、(1)と(3)の内容について報告する。
1|簡素化された計算の適用基準の明確化等
(1)政策オプション
「政策課題1:比例性の評価」については、オプション1.1(変更なし)とオプション1.2(臨界値の設定)(規模又はSCRの観点から定義された臨界値が存在し、その下で全ての簡素化された計算が許可されるべき)の2つのオプションが検討された。
「政策課題2:簡素化された計算のリスト」については、オプション2.1(簡素化の拡張リスト)(既存の簡素化に加えて、SCR標準式の他のモジュールに対して新しい簡素化された計算を提供)とオプション2.2(列挙されていない簡素化された計算)(企業は独自の簡素化を使用可能)の2つのオプションを評価した。
9.4.1.政策オプション
593.EIOPAは、簡素化された計算に関する助言の開発中に、異なる選択肢が検討され議論される2つの主要な政策課題を特定した。
・政策課題1:比例性の評価
・政策課題2:簡素化された計算のリスト
政策課題1:比例性の評価
594.委任規則第88条は現在、SCR標準式の計算の選択を正当化するための評価を実施することを義務付けている。この評価は、SCR標準式に適用される比例原則の基礎となるものである。
595.この評価は2段階で行われる。最初に、リスクの性質、規模、複雑性の評価が行われる。第2に、基礎となる仮定と特定のリスクプロファイルとの間に偏差があるために、簡素化された計算の結果に導入された誤差を、必要に応じて定性的又は定量的に評価している。
596.この評価の結果、保険会社は、考慮されている簡素化された計算が、リスクの性質、規模及び複雑さに比例するかどうかを決定すべきである。
597.この点で、以下のオプションが検討されている。
a.オプション1.1 - 変更なし:このオプションでは、第88条により、簡素化された計算の十分かつ適切な使用が可能と考えられる。
b.オプション1.2 - 臨界値の設定:このオプションの下では、規模又はSCRの観点から定義された臨界値が存在し、その下で全ての簡素化された計算が許可されるべきである。
政策課題2:簡素化された計算のリスト
598.委任規則は、比例的である場合に、保険会社によって使用される簡素化された計算のリストを指定する。このリストは閉じられている。標準式でのSCRの計算をさらに簡素化するために、以下のオプションが検討されている。
オプション2.1 - 簡素化の拡張リスト:このオプションでは、既存の簡素化に加えて、SCR標準式の他のモジュールに対して新しい簡素化された計算が提供される。
プション2.2 列挙されていない簡素化された計算:このオプションでは、企業は独自の簡素化を使用できる。
分析の結果として、政策課題1(比例性の評価)に関しては、オプション1.2(臨界値の設定)はリスクの性質と複雑さを適切に考慮しておらず、重要なリスクを伴わない大規模な保険会社には損害を与える可能性があることから、オプション1.1(変更なし)が好ましい選択肢である、としている。
政策課題2(簡素化された計算のリスト)に関しては、オプション2.2(列挙されていない簡素化された計算)は、監督者への文書化と正当化の観点から、結果としてより大きな負担をもたらすことになることから、オプション2.1(簡素化の拡張リスト)が好ましい選択肢である、としている。
9.4.3. オプションの比較
607.政策課題1(比例性の評価)に関して、好ましい選択肢はオプション1.1(変更なし)である。 委任規則の第88条は、原則として残すべきである。収集された情報は、簡素化された計算が使用されていることを示しており、EIOPAで毎年のQRTが利用可能になると、より詳細な統計を導出する必要がある。臨界値を設定する代替案は、リスクの性質と複雑さを適切に考慮しておらず、重要なリスクを伴わない大規模な保険会社には損害を与える可能性がある。
608.政策課題2(簡素化された計算のリスト)に関して、好ましい選択肢はオプション2.1(簡素化の拡張リスト)である。簡素化された計算のリストは、閉じたリストとして保持し、計算が最も複雑なサブモジュールに拡張する必要がある。 企業が独自の簡素化された計算を使用できる代替案は、監督者への文書化と正当化の観点から、結果としてより大きな負担をもたらすであろう。
(2017年08月22日「基礎研レポート」)
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