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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-
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1―はじめに
これを受けて、EIOPA(欧州保険年金監督局)は、2016年12月8日に、ソルベンシー資本要件標準式に焦点を当てた「ソルベンシーII委任規則の特定項目のレビューに関するディスカッション・ペーパー」を公表した1。このディスカッション・ペーパーは、EIOPAが2016年7月18日に欧州委員会から受けた助言要請のリストの中に含まれていた項目(以下において、「欧州委員会による技術的助言要求項目」2と呼ぶ)への対応の準備の第一歩となるものであり、これに対する関係者の意見(協議期間は2017年3月3日まで)を踏まえて、さらなる検討が行われ、欧州委員会への最終的な助言が2018年2月までに行われていくことになっていた。
EIOPAは2017年7月4日に、「ソルベンシーII委任規則の特定項目に関する欧州委員会へのEIOPAの第1の助言セットに関するコンサルテーション・ペーパー」3(以下、「今回のCP」と言う)を公表し、関係者からのフィードバックを求めている。
今回を含めた2回のレポートで、このコンサルテーション・ペーパー(CP)の概要を報告する。まずは、今回のレポートでは、欧州委員会からの助言要求項目の内容とそれに対する今回のCPでの助言案について報告し、次回のレポートで、今回のCPの助言のドラフト作成中に検討された政策オプションの影響評価について報告する。
1「Discussion Paper on the review of specific items in the Solvency II Delegated Regulation」( EIOPA-CP-16/008
5 December 2016)
https://eiopa.europa.eu/Pages/Consultations/Overview.aspx
2 REQUEST TO EIOPA FOR TECHNICAL ADVICE ON THE REVIEW OF SPECIFIC ITEMS IN THE SOLVENCY II DELEGATED REGULATION (Regulation (EU) 2015/35)
http://ec.europa.eu/finance/insurance/docs/news/call-for-advice-to-eiopa_en.pdf#search='Ref.Ares%282016%293573955'
3 https://eiopa.europa.eu/Pages/News/EIOPA-consults-on-its-first-set-of-advice-on-the-Solvency-II-review-.aspx
https://eiopa.europa.eu/Publications/Consultations/EIOPA-CP-17-004_Consultation_Paper_on_First_set_of_Advice_on_SII_DR_Review.pdf
2―今回のCPの概要
ソルベンシーIIのレビューは、ソルベンシーII指令の立法文書に従う正式なプロセスである。ソルベンシーII委任規則のリサイタル150は、ソルベンシー資本要件の標準式の見直しのためのタイムラインを定義している。レビューの第1段階は、2018年12月までに欧州委員会によって最終決定され、ソルベンシーIIの枠組みは2021年までに見直される予定である。EIOPAは、2016年12月に発行されたディスカッション・ペーパーでレビューを開始した。
2|ソルベンシーIIレビューの目的
EIOPAは、現在実施中のレビューに関して、「レビューの主な目的は、(再)保険会社に対する比例的かつ技術的に一貫した監督体制を確保し、ソルベンシー資本要件の公式を簡素化し、要件の比例的な適用を確実にすることである。」としている。
3|今回のCPがカバーする項目
今回のCPには、EIOPAの欧州委員会からの2つの助言要請範囲にある多くの項目に対するEIOPAの助言が含まれているが、それらの項目には、(1)簡素化された計算、(2)外部信用格付けへの依存度の低減、(3)保証の取扱い、(4)第三者による保証エクスポージャー、(5)地域政府と地方自治体(regional governments and local authorities:RGLA)へのエクスポージャー、(6)リスク軽減技術、(7)会社固有パラメータ、(8)投資関連ビークルに関するルックスルー・アプローチ、(9)繰延税金の損失吸収能力(loss-absorbing capacity of deferred taxes :LAC DT)に関する情報、が含まれている。
4|今回のCPの構造
各セクションは、情報のみを提供するLAC DTのセクション以外は、同じ構造に従っている。具体的には、(A)助言要求の抜粋、(B)法的根拠、(C)ディスカッション・ペーパーに対して受け取った主なコメントに関するフィードバックステートメント、(D)分析を含むEIOPAの助言、(E)関連する場合は条項に対するEIOPAの助言と提案、となっている。さらに、このCPには、助言のドラフト作成中に検討された政策オプションの影響評価も含まれている。
5|今回のCPに対する今後のプロセス
EIOPAは、今回のCPに対して、2017年10月に欧州委員会に提出される予定の助言のドラフトに対してステークホルダーにフィードバックを提供するように呼びかけている。この協議期間は、2017年8月31日に終了する。
6|今後、第2の助言セットに関するCPを発行予定
EIOPAは、年末までに、レビューされるべき以下の項目に対する第2の助言セットに関するCPを発行する。:(1)リスクマージン、(2)自己資本、(3)繰延税金の損失吸収能力に関する政策オプション、(4)カタストロフィーリスク、(5)保険料及び責任準備金リスク、(6)死亡率及び長寿リスク、(7)カウンターパーティ・デフォールトリスク、(8)グループレベルでの通貨リスク、(9)金利リスク、(10)ルックスルーの簡素化、(11)未評価債務、(12)非上場株式及び戦略的参加。
EIOPAの第2の助言セットは、2018年2月までに欧州委員会に提出される予定である。
EIOPAはソルベンシーIIのレビューに関する第1の助言のセットを協議にかける
今日、欧州保険年金監督局(EIOPA)は、ソルベンシーIIレビューに関する欧州委員会への第1の助言に関するコンサルテーション・ペーパーを発行した。レビューの主な目的は、(再)保険会社に対する比例的かつ技術的に一貫した監督体制を確保し、ソルベンシー資本要件の公式を簡素化し、要件の比例的な適用を確実にすることである。
コンサルテーション・ペーパーには、EIOPAの欧州委員会からの2つの助言要請範囲にある多くの項目に対するEIOPAの助言が含まれている。それらの項目には、簡素化された計算、外部信用格付けへの依存度の低下、保証の取扱い、第三者による保証 リスク軽減技術、会社固有のパラメータ、投資関連ビークルに関するルックスルー・アプローチ、繰延税金の損失吸収能力に関する情報などが含まれている。
EIOPAは、2017年10月に欧州委員会に提出される予定の助言のドラフトに対してステークホルダーにフィードバックを提供するように呼びかけている。この協議期間は、フィードバックを受けなければならない日である2017年8月31日木曜日に終了する。締切り後に提出されたコメント又は提供されたテンプレートで提出されなかったコメントは処理できない。
コメント用のテンプレート付きのコンサルテーション・ペーパーは、こちらから入手可能:https://eiopa.europa.eu/Pages/Consultations/EIOPA-CP-17-004-Consultation-Paper.aspx
(2017年08月21日「基礎研レポート」)
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