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NOMURA-BPI総合は年金にとって適切なインデックスなのか

金融研究部 常務取締役 研究理事 兼 年金総合リサーチセンター長 兼 サステナビリティ投資推進室長 德島 勝幸
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国内債券における分散と国内株式における分散とが、まったく異なる意味を有していることは各々の証券の特性と値動きを考えると容易に理解できよう1。東証一部に上場されている全銘柄を投資対象にするという意味で、株式市場の平均的な姿としてTOPIXを参照することがある。しかし、一定の基準を設け市場に現存する債券のほとんどを組入れたインデックスにおいては、信用力や流動性等の観点からの分散は可能なものの、最大の値動きを支配する主成分である金利は、国債であろうが、社債であろうが、ほぼ同一のものである。社債等一般債の利回りを“国債+α”と表現するではないか。しかも、日本の国内債券市場においては、全体に占める国債の時価比率は80%を超えている。国債には様々な残存年限があるものの、イールドカーブで示される年限と利回りの関係性が存在しており、満期償還が行われることもあって、債券の価格は株式の価格変動と異なりランダムウォークしないのである。
国内債券投資における一般的な指数として用いられるNOMURA-BPI総合は、残念ながら、上記の批判がいずれも当てはまる。しかも、銀行や生保の運用においてALMが強く意識される時代でも年金運用でALMやLDIが定着しない要因の一つに、未だにNOMURA-BPI総合に固執していることがある。実は、GPIFは被用者年金一元化以前においては、複数のインデックスからなるコンポジットを採用しており、現状は、他の公務員共済等との運用共通化において容易に理解できるようNOMURA-BPI総合を掲げているに過ぎないと考えられる。昨今のようなマイナス金利下において、公的年金は、国内債券のパッシブ運用をNOMURA-BPI総合に対するトラッキングエラーを押さえるよう愚直に実施してはいない。現環境下での単純なパッシブ運用は、フィデューシャリー・デューティーの観点から問題がある。
QUICKによる月次調査<債券>(2017年5月)のアンケート結果を見ると、この1年強に及ぶマイナス金利下での債券運用において、マイナス利回りの債券を“購入していない”という回答が48%と約半数を占める一方、主に年金運用担当者と考えられる“運用方針に基づき保有目的で購入した”とする回答が29%もあった。これは、NOMURA-BPI総合をベンチマークとする年金運用において、新たな取組みに躊躇しているという影響ではなかろうか。
これまでNOMURA-BPI総合を国内債券運用のベンチマークとして愚直に利用して来る中で、その弊害があまり意識されなかったのは、金利低下が続く中でNOMURA-BPI総合のデュレーションが長期化を続けて来たためと考えられる。図表は、2000年以降のNOMURA-BPI総合の修正デュレーションと10年国債利回りの推移をプロットしたものである。2003年に起きたVaRショックや2016年にBrexitを問う英国国民投票の結果を受けた後の反動期を除いて、デュレーションはほぼ継続的に長期化している。これは、すなわち、NOMURA-BPI総合において時価の8割以上を占める国債の残存年限が、継続的に長期化しているためである。金利低下が続く中でインデックスのデュレーションが長期化したため、年金はそれに単に追随することで金利低下の果実を享受して来たのである。
1 徳島勝幸『債券インデックスに関する実務的視点からの考察』証券アナリストジャーナル2005年10月号47頁
(2017年08月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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03-3512-1845
- 【職歴】
・1986年 日本生命保険相互会社入社
・1991年 ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA
・2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社に出向
・2008年 ニッセイ基礎研究所へ
・2025年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・日本ファイナンス学会
・証券経済学会
・日本金融学会
・日本経営財務研究学会
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