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- 米個人消費の減速は一時的か-新車販売は厳しい状況が続くものの、個人消費を取り巻く環境は依然として良好
2017年07月21日
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3.今後の個人消費見通し
(1)個人消費を取り巻く環境は依然として良好
これまでみたように、17年1-3月期の個人消費は期待外れの結果となったものの、労働市場の回復や、家計バランスシート、消費者マインドの改善と言った、これまでの堅調な個人消費を支えてきた環境には大きな変化はみられない。
非農業部門雇用者数は、10年10月以来史上最長となる81ヵ月連続で増加しているほか、完全雇用に近づいているとみられる中でも、年初からの月間平均増加ペースが18.0万人増と16年の18.7万人増に迫る水準となっており、力強い回復が続いている(図表9)。さらに、失業率も07年以来となる4%台前半まで低下しており、労働需給のタイト化が持続していることを示している。一方、時間当たり賃金は前年比で2%台半ばの水準からなかなか加速がみられないものの、労働時間の増加や、雇用者数の増加を加味した雇用者報酬でみれば前年比4%台半ばの水準で増加が続いている。
また、所得対比で消費の動向をみると、実質個人消費の伸び(3ヵ月移動平均、3ヵ月比、年率)は、直近(5月)が+2.7%と実質可処分所得の+3.9%を下回っている(図表10)。個人消費は不振であった3月(+1.1%)から伸びが加速しているが、足元の伸びは所得対比で未だ抑制されていることを意味している。さらに、貯蓄率も1月の4.8%を底に5月は5.2%まで上昇していることから消費は所得対比で余力を残していると言える。
これまでみたように、17年1-3月期の個人消費は期待外れの結果となったものの、労働市場の回復や、家計バランスシート、消費者マインドの改善と言った、これまでの堅調な個人消費を支えてきた環境には大きな変化はみられない。
非農業部門雇用者数は、10年10月以来史上最長となる81ヵ月連続で増加しているほか、完全雇用に近づいているとみられる中でも、年初からの月間平均増加ペースが18.0万人増と16年の18.7万人増に迫る水準となっており、力強い回復が続いている(図表9)。さらに、失業率も07年以来となる4%台前半まで低下しており、労働需給のタイト化が持続していることを示している。一方、時間当たり賃金は前年比で2%台半ばの水準からなかなか加速がみられないものの、労働時間の増加や、雇用者数の増加を加味した雇用者報酬でみれば前年比4%台半ばの水準で増加が続いている。
また、所得対比で消費の動向をみると、実質個人消費の伸び(3ヵ月移動平均、3ヵ月比、年率)は、直近(5月)が+2.7%と実質可処分所得の+3.9%を下回っている(図表10)。個人消費は不振であった3月(+1.1%)から伸びが加速しているが、足元の伸びは所得対比で未だ抑制されていることを意味している。さらに、貯蓄率も1月の4.8%を底に5月は5.2%まで上昇していることから消費は所得対比で余力を残していると言える。
さらに、家計のバランスシート改善は持続している。家計の資産から負債を除いた純資産残高は、17年1-3月期が94.8兆ドルと史上最高を更新した(図表11)。株価や不動産などの資産価格上昇などもあって資産残高が増加したことが大きい。一方、負債残高も15.2兆ドルと史上最高値を更新したものの、債務返済額や債務残高を可処分所得でみた比率は前者が10%程度と史上最低水準(9.9%)に近い水準に留まっているほか、後者も1.03倍と02年以来の低水準となっており、可処分所得との比較でみた債務負担感は悪化がみられない。
最後に、消費者センチメントも高水準を維持している。消費者センチメントの代表的なカンファレンスボードとミシガン大学の指数は、17年1月や3月につけたピークからは幾分低下がみられるものの、高い水準を維持していることが分かる(図表12)。消費者センチメントが高水準を維持している要因は、雇用不安の後退に加え、株価が堅調に推移していること、トランプ政権に対する減税期待などが背景にあるとみられる。
最後に、消費者センチメントも高水準を維持している。消費者センチメントの代表的なカンファレンスボードとミシガン大学の指数は、17年1月や3月につけたピークからは幾分低下がみられるものの、高い水準を維持していることが分かる(図表12)。消費者センチメントが高水準を維持している要因は、雇用不安の後退に加え、株価が堅調に推移していること、トランプ政権に対する減税期待などが背景にあるとみられる。
このように、労働市場や所得環境、家計純資産、消費者センチメントと言った消費を取り巻く環境は依然として良好であり、米消費には追い風となっている。このため、自動車関連の消費回復が多少遅れたとしても、個人消費は今後も堅調な伸びが持続するとみられる。
(2)米国内政治の混乱や、資本市場の不安定化は個人消費のリスク
一方、米個人消費が腰折れするとすれば、米国内政治の混乱や資本市場の不安定化が考えられる。トランプ政権が誕生して6ヵ月が経過したが、消費者が期待する大型減税の議論は進んでいない。また、低所得者層に影響の大きいオバマケアの見通し論議も、共和党内の路線対立で進んでいない。足元ではオバマケアの代替案を策定する前に、オバマケアの廃止を先行させるべきとの声も出ているが、代替案がないままオバマケアが廃止される場合には、18年に17百万人無保険者が増加するとの試算2もあり、医療保険に対する将来の予見可能性低下も併せて消費への影響は無視できない。
また、足元では株価が堅調に推移しているものの、今後何らかのきっかけで投資家のリスク回避姿勢が強まり、株価の大幅な下落など資本市場が不安定化する場合には、消費マインドの悪化を通じて消費に悪影響がでよう。
2 議会予算局(CBO)の17年7月19日の分析 https://www.cbo.gov/publication/52939
一方、米個人消費が腰折れするとすれば、米国内政治の混乱や資本市場の不安定化が考えられる。トランプ政権が誕生して6ヵ月が経過したが、消費者が期待する大型減税の議論は進んでいない。また、低所得者層に影響の大きいオバマケアの見通し論議も、共和党内の路線対立で進んでいない。足元ではオバマケアの代替案を策定する前に、オバマケアの廃止を先行させるべきとの声も出ているが、代替案がないままオバマケアが廃止される場合には、18年に17百万人無保険者が増加するとの試算2もあり、医療保険に対する将来の予見可能性低下も併せて消費への影響は無視できない。
また、足元では株価が堅調に推移しているものの、今後何らかのきっかけで投資家のリスク回避姿勢が強まり、株価の大幅な下落など資本市場が不安定化する場合には、消費マインドの悪化を通じて消費に悪影響がでよう。
2 議会予算局(CBO)の17年7月19日の分析 https://www.cbo.gov/publication/52939
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(2017年07月21日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
窪谷 浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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