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欧州保険会社が2016年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(2)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その1)-
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3―SCRやMCRの計算方法
1|SCRやMCRの計算方法の説明概要
(1)AXAの例
AXAのSCRやMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。
SCRとMCRを計算するために、内部モデルの使用や米国での同等性評価、さらには非保険部門については部門別ルールに基づいていることを説明している。これにより、AXAのグループSCRのうち、グループ全体でみると、77%が内部モデル、3%が標準式、15%が同等性(米国)、5%が銀行・資産運用会社、年金基金等の他の規制基準の適用に基づくものとなっている。
続いて、グループの分散化効果について、例えば、「内部モデルでは、主要なリスクカテゴリ(市場、信用、生命、損害、オペレーショナルリスク)全体にわたる集約と、地理/会社間の集約という、主な集約ステップを考慮したマルチレベル集約アプローチが実施されている。」と説明している。
E.2ソルベンシー資本要件(SCR)と最低資本要件(MCR)
当グループは、2015年11月17日、ソルベンシーIIのSCRを計算するために内部モデルを使用することについてACPR(フランスの監督当局)の承認を受けた。内部モデルは、同等とみなされるAXA USを除く、全ての重要な会社に対するAXAグループの経済資本モデルの使用を包含している。内部モデルは、AXAの会社が、ローカルリスクプロファイルをよりよく反映し、グループがさらされている全ての重要なリスクを捉えるためのローカルキャリブレーションを選択できるように設計されている。その結果、内部モデルは、AXAグループ全体のSCRをより忠実に反映し、SCRメトリクスが経営陣の意思決定と整合的になると考えている。
ソルベンシー資本要件(SCR)
2017年2月23日に発行された2016年12月31日現在のAXAグループのソルベンシーII比率は197%であり、AXAの目標170%~230%の範囲内にとどまっている。当グループは、内部モデルの範囲、根底にある方法論および前提条件を定期的に見直し続け、それに応じてSCRを調整する。内部モデルの大きな変更は、SCRのレベルを調整する必要のあるACPRによって承認されなければならない。
さらに、当グループは、その目的を通じて欧州保険会社のモデルの一貫性の見直しを行うことが期待されているEIOPA(欧州保険年金監督局)の作業計画を監視する。そのような見直しが、コンバージェンスを高め、国境を越えたグループの監督を強化するための規制改正につながる可能性がある。
2016年12月31日、AXAグループSCRは294億ユーロで、内部モデル範囲(226億ユーロ)、標準式会社(9億ユーロ)、米国会社(45億ユーロ)、部門別ルール (年金事業、銀行、資産運用)(15億ユーロ)という異なる要素に分割される。AXAグループSCRに関する追加情報については、QRTS.25.02.22「ソルベンシー資本要件- 標準式及び部分内部モデルを使用するグループのための」を参照のこと。
(以下、一部省略)
グループ分散効果
内部モデルの分散効果は、異なるリスク/サブリスクまたは異なるポートフォリオ/会社への集計方法の適用によって駆動される。したがって、分散効果は、特定のリスク要因の範囲内、ポートフォリオ間、地域間又は異なるリスクカテゴリ間で現れることがある。
一例として、デュレーションギャップは、異なるポートフォリオに対して異なる符号を有することができる。保障商品のための長い期間と年金のための短い期間。このような場合、2つのポートフォリオを組み合わせると金利リスクが低下する。
リスク集計アプローチ内の細かさのレベルは、分散効果の測定に影響する主要な要因である。典型的には、集計アプローチが、地理、事業単位/法人レベル、リスクタイプ、商品タイプなどの次元に応じてポートフォリオや活動を区別するほど、より明示的な分散効果が明らかになる。内部モデルでは、主要なリスクカテゴリ(市場、信用、生命、損害、オペレーショナルリスク)全体にわたる集約と、地理/会社間の集約という、主な集約ステップを考慮したマルチレベル集約アプローチが実施されている。
2016年12月31日現在の主要なリスク(市場、信用、生命、オペレーショナル)における分散効果は115億ユーロであった。
範囲と計算方法
以下の表は、グループSCRを計算するために使用される内部モデルの範囲内にある会社を一覧表にしたものである。
(リストについては省略)
グループ内で、指令2009/138 / ECの第230条及び第233条で言及されている方法1(デフォルト法)と方法2(控除合算法)の組み合わせを使用して、グループ・ソルベンシーが計算される。方法2を用いる会社は、銀行、資産運用会社、年金基金を中心とした保険以外の財務セクターやソルベンシー制度が同等とみなされている米国内の子会社に関連している。 関連する会社は以下の表に要約されている。
(表については省略)
PrudentialのSCRやMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。
例えば、米国子会社のグループSCRへの集計方法について説明している。
E.2ソルベンシー資本要件(SCR)と最低自己資本要件(MCR)(未監査)
E.2.1方法論
ソルベンシーIIの規制報告及びリスク管理の目的のため、Prudentialは、EEA(欧州経済地域)ベースの保険会社(即ち、The Prudential Assurance Company、Prudential Pensions Limited、Prudential International Assurance (PIA))の単体SCRと共に、グループSCRの計算に内部モデルを使用することの承認を受けている。これらの会社の資産及び負債は、ソルベンシーIIベースで評価されている。
米国の保険会社は、方法2:控除合算法、を使用してグループSCRに集計され、その結果、内部モデルは「部分的」として記述される。該当する米国の会社(Brooke Life Insurance Company、Jackson National Life Insurance Company ('Jackson')、Jackson National Life Insurance Company of New York (Jackson NY))の場合、米国のRBC要件の250%を超える資本は、次のように許可されている:
・自己資本:現地の米国RBC利用可能資本マイナス米国RBC要件(会社行動レベル)の100%
・ソルベンシー資本要件:現地の米国RBC要件(会社行動レベル)の150%。そして
・米国の保険会社とグループのその他の会社との間では、分散効果は考慮されない。
米国の保険会社以外は、他の全ての会社が内部モデルの対象に含まれている。ソルベンシーIIの要件に沿って、資産運用会社及び財務活動を行っている非規制会社の資本要件は、それぞれのセクタールールおよび想定セクタールールを使用して導出されている。
統合されたグループSCRは、内部モデル(方法1:会計連結法、を使用して)と方法2:分散化を考慮しない控除合算法、を使用して発生するSCRの合計として決定される。
AegonのSCRやMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。
なお、分散効果反映後ベースでのSCRの構成比は、ソルベンシーIIが47.8%、主として米国会社を対象とした控除合算法が50.1%、その他の金融セクターが2.1%となっている。
E.2ソルベンシー資本要件および最低資本要件
E.2.1ソルベンシー資本要件
2016年1月1日にソルベンシーII規制の枠組みが導入され、EUに所在する(再)保険会社とAegon Groupの資本要件はソルベンシーIIに基づいている。
Aegonの非EEA地域では、同等とみなされる第三国(米国、バミューダ、日本、メキシコ、ブラジル)に所在する(再)保険会社の資本要件は、現地資本要件に基づいている。中国、インド、トルコに所在する非EEA(再)保険会社の資本要件は、ソルベンシーIIに基づいている。
グループ計算方法
Aegonは、ソルベンシーIIの下で利用可能なグループ連結方法の組み合わせを適用している。これらは、会計連結及び控除集計に基づく方法である。ソルベンシーIIの資本要件は、主にEEAベースの保険及び再保険会社に使用され、会計連結法を適用している。現地の要件は、(暫定的に)同等の第三国の管轄区域の保険及び再保険会社に使用される。グループ・ソルベンシーIIの監督者であるDNB(オランダ国立銀行)が要求するとおり、Aegon Bankはグループ・ソルベンシー比率から除外されている。
生命保険及び健康保険改訂リスク、損害保険(健康保険の一部を含む)の保険料及び責任準備金リスクに対しては、標準式で使用されているパラメータの代わりに、監督当局の承認を得て、会社固有のパラメータUSPを用いることができる。
大手6グループのうち、以下の3グループは、USPの使用に関して明示的に記述している。
・Allianzは、Fragonard Assurance S.A.とAWP P&C S.A.の損害保険の保険料リスクの標準偏差に対してUSPを使用している。
・Generaliは、Europ Assistance会社とイタリア会社DAS(Difesa Automobilistica Sinistri)のSCRの計算に、USPを使用している。
・Avivaは、SCRの算定にUSPを使用していない。
4―まとめ
次回のレポートでは、内部モデルの使用状況等について報告する。
(2017年07月18日「保険・年金フォーカス」)
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