2017年07月11日

東京2020文化オリンピアードへの期待-ロンドン2012大会文化オリンピアードを支えた3つのマークの考察から

吉本 光宏

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2016年7月に本レポートを発表した後、東京2020文化オリンピアードについて様々な進展があった。2016年10月7日にはキックオフイベントとして「幕開き日本橋」が開催され、東京2020文化オリンピアードは実質的なスタートを切った。

その前日には、組織委員会が「東京2020公認マーク」と「東京2020応援マーク」を発表した。これは「東京2020参画プログラム」に付与されるもので、組織委員会の認証を受けた事業やイベントが使用できることになっている。文化をテーマに実施される参画プログラムが「東京2020文化オリンピアード」で、大会エンブレムをモチーフにした公認と応援の二つのマークが用意されている。認証も進んでおり、組織委員会のHP掲載情報によれば今年5月26日時点で既に136件の事業が実施され、67件が実施予定とされている。

一方、内閣官房が中心となって検討していた「beyond2020プログラム」のロゴマークも、全国芸術系大学コンソーシアムに参加する大学の学生を対象に公募が行われ、2017年1月27日に採用案が発表された。こちらも1月31日から認証がスタートしており、同じく5月26日時点でホームページには実施済みのものが66件掲載されている。
東京2020公認文化オリンピアード]/[ [東京2020応援文化オリンピアード]/[beyond2020プログラム]
ロンドン2012大会のマーク(図表1)との比較では、東京2020公認文化オリンピアードのマークは「文化オリンピアード・マーク」に、東京2020応援文化オリンピアードのマークは「インスパイア・マーク」に相当し、ロンドン大会と同様ガイドラインも発表されている。現時点では「ロンドン2012フェスティバル・エンブレム」に相当するマークは用意されていないが、東京2020フェスティバルの内容とともに今後検討されるものと思われる。

ロンドン2012大会との最大の違いは、beyond2020プログラムである。東京2020文化オリンピアードが「オリンピック憲章」に基づいた公式文化プログラムであるのに対し、beyond2020は日本文化の魅力を発信するとともに、2020年以降を見据えたレガシー創出のためのプログラムとされており、ロンドン2012大会にはなかった枠組である。公式スポンサー以外の企業が関わる事業についても対象になる一方で、オリンピック・パラリンピックの文言を使用することはできない。これは本レポートに記載したアンブッシュマーケティング(P.111参照)と見なされるためである。

また、東京2020大会の開催都市である東京都は、「東京文化プログラム」としてアーツカウンシル東京がいくつかの助成事業などを進めており、要件に合致するものを組織委員会の東京2020文化オリンピアードとして実施する予定である。

いずれにせよ東京2020大会まで3年余りを残すばかりとなった。関係者の尽力によって東京2020文化オリンピアードが大きな成果を収めることを期待したい。

■目次

1――東京2020大会で期待の高まる「文化オリンピアード」と
 ロンドン2012大会の3種類のマーク
  1|100年以上の歴史の中で培われてきた文化オリンピアード
  2|ロンドン2012文化オリンピアードを支えた3種類のマーク類
2――インスパイア・プログラム:
 多様な団体が文化オリンピアードの主催者として参加できるしくみ
  1|インスパイア・プログラムの要件と認証の手順
  2|インスパイア・マークのガイドライン
  3|インスパイア・プログラムの資金調達や後援について
  4|インスパイア・プログラムの具体例――コミュニティ・ゲームズ
3――ロンドン2012フェスティバルのブランド・ガイドライン:
 インスパイア・マークの成果を発展
  1|文化施設や芸術機関の元々の民間スポンサーが支援する事業も
   フェスティバルの一環に
  2|ブランド・ガイドラインの概要
  3|プログラムなどの印刷物
  4|会場におけるフェスティバルのブランド展開
4――東京2020文化オリンピアードに向けて
  1|リオ2016大会の文化プログラムとマーク
  2|東京2020大会文化オリンピアードの検討状況とマークやブランド
  3|東京2020文化オリンピアードならではのイノベーションを


※本稿は2016年7月11日発表の基礎研レポート「ロンドン2012文化オリンピアードを支えた3つのロゴマーク」に加筆したものである。
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