2017年06月23日

高齢者見守りサービス-多様なサービスの提供と今後の可能性

小林 雅史

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3ホームセキュリティー会社の取り組み
ホームセキュリティー会社においては、高齢者による緊急通報サービスのほか、高齢者の安否見守りサービスを提供している。

業界最大手のセコムでは、防犯、火災管理、非常通報といったホームセキュリティー基本サービス(戸建て、機器レンタルプランの場合月5,900円、税別)のオプションサービスとして、シニア・高齢者向けサービスを提供している4

緊急通報サービスであるマイドクタープラス(2013年4月提供開始。緊急通報ボタンによるガードマンなどの駆けつけ。月1,800円、税別。駆けつけの都度費用発生)5のほか、ライフ監視サービス(センサーによる見守りサービス月300円、税別)、お元気コールサービス・お元気訪問サービス(2013年4月提供開始。月1回の電話かけ・月1回の訪問、月各600円、3,800円、税別)6などを提供している。

また、セコムは、2017年4月から、企業従業員向け福利厚生サービスとして、「セコム親御さん安心パッケージ」を販売している。

これは、高齢の親を抱える従業員の転勤などを想定した、火災監視、緊急通報、ライフ監視、緊急時駆けつけなどをパッケージしたサービスで、企業が福利厚生制度として採用し、従業員が費用を負担する仕組みとなっている7

一方、綜合警備保障(ALSOK)は、2013年9月から、高齢者向け専用商品として「みまもりサポート」(緊急時の駆けつけ、健康・介護相談、持病やかかりつけ病院などの救急情報登録。機器レンタルプランの場合、工事費11,000円および月2,400円、税別)を提供している8

基本プランのオプションプランとして、見守り情報配信サービス(センサーによる高齢者の異常事態の家族への送信、工事費3,000円および月710円、税別)、ライフリズム監視サービス(一定期間、トイレの扉が開閉しなかった場合に駆けつけ、工事費4,900円および月480円、税別)などがある9

このほか、ALSOKは、認知症高齢者向けの徘徊対策システムとして位置履歴が検索できる「みまもりタグ」を開発し、2016年4月から香川県さぬき市10と、2016年8月から北九州市11と協力して実証実験を行っている。

さらに、国土交通省の「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」を活用し、徘徊対策商品「みまもりタグ」2100個やみまもりタグを収納する専用靴などを、さいたま市、多摩市、海老名市など全国10市町で高齢者を中心に無料で配布した12

この認知症高齢者の見守りシステムは、2016年日経優秀製品・サービス賞において、優秀賞日経産業新聞賞を受賞し13、2017年6月から一般向け販売を開始した(高齢者が携帯するみまもりタグ:機器費2,200円、月額250円、建物の入り口などに設置し、高齢者の外出・帰宅を家族に送信するみまもりタグ感知器:機器費23,000円、月額400円など)14
 
4 「シニア・高齢者向けサービス」、セコムホームページ。
5 「セコムとニチイ学館・ツクイが協業しこの協業により『セコム・マイドクタープラス』を開発 超高齢社会対応の新サービス、日本初の高齢者救急時対応サービスを開始」(2013年2月5日)、セコムホームページ。
6 「高齢者の暮らしを定期的に見守るサービス 『お元気コールサービス』『お元気訪問サービス』を開始 『セコム・ホームセキュリティ』のお客様向けの新しいオプションサービス」(2013年5月9日)、セコムホームページ。
7 「セコムグループが高齢の親御さんの不安要因に対してトータルサポート 『セコム親御さん安心パッケージ』を販売開始」(2017年4月19日)、セコムホームページ。
8 「高齢者をハードとソフトの両面から守ります!『HOME ALSOK みまもりサポート』の発売および高齢者向け講座の開始について」(2013年9月9日)、ALSOK。
9 「みまもりサポート」、ALSOK。
10 「~ALSOKが『地域の見守りネットワーク構築』を支援~香川県さぬき市等と共同で、実証実験に向けた協議を開始」(2016年4月5日)、ALSOKホームページ。
11 「ALSOKと第一交通産業が『地域の見守り』ボランティアに福岡県北九州市で、専用タグとアプリを連携した位置情報の提供を開始」(2016年6月22日)、ALSOKホームページ。
12 「ALSOKの『みまもりタグ』等を活用した“地域の見守り”が国土交通省のモデル事業に選定 全国10箇所の市町村にて認知症患者等の『見守りネットワーク』の構築を支援」(2016年11月22日)、ALSOKホームページ。
13 「~認知症高齢者の見守りシステム~2016年日経優秀製品・サービス賞 優秀賞を受賞」(2017年1月4日)、ALSOKホームページ。
14 「認知症高齢者の徘徊対策商品『みまもりタグ』『みまもりタグ感知器』等一般向け販売開始について」(2017年5月15日)、ALSOKホームページ。
4日本郵便の取り組み
2013年8月26日、全国すべての市町村に約2万4千の郵便局ネットワークを有する日本郵便は、2013年10月1日から「郵便局のみまもりサービス」を全国6エリア(1道5県)で試行実施するとプレス発表した。

サービスの内容は、
・生活状況の確認(郵便局社員が顧客を訪問、生活状況を確認し、遠方の家族等に報告(月1回)
・24時間電話相談(健康、医療などの相談に、コールセンターで回答)、かんぽの宿の宿泊割引
などである。

基本サービス料金は毎月1000円(税別)で、北海道、宮城県、山梨県、石川県、岡山県、長崎県の全国13市町村、103郵便局で試行実施するとした15

2015年7月1日、サービス実施エリアを山梨県、長崎県全域に拡大するとともに、サービス内容を改定している。

生活状況の確認を行い、確認結果を家族に報告する定期訪問サービスは滞在時間別に30分コースと60分コースの2コースに区分された。

基本料金も改定され、30分コースは月額 1980 円、60分コースは月額 2480円となった。

同一月の複数回訪問も可能となり、30 分の訪問を1回追加すると別途1500 円、60分の訪問を1回追加すると別途2000 円とされた(これらの料金はいずれも税別)16

2015年10月1日、再度サービス実施エリアを拡大するとともに、2015年9月28日から新たなオプションサービスとして「駆けつけサービス」を導入するとした。

サービス実施エリアについては、全国1道5県56 市町村 567郵便局から、1都1道11 県の83 市町村 738 郵便局に拡大された。

駆けつけサービスは、セコムおよびALSOKと連携し、契約者等からの要請に応じて、警備会社が駆けつけを実施するものである。

駆けつけサービスについては利用は任意とされ、別途利用料が必要とされている17
このほか、現在日本郵便のホームページには、みまもりサービスのほか、みまもりでんわも紹介されている。

みまもりでんわは、高齢者に毎日同じ時間に電話し、高齢者が体調に応じて番号を押すことで、家族に体調をメールで連絡するもので、利用料金は固定電話コースで月額980円、携帯電話コースで月額1180円とされている(料金はいずれも税別)18

こうしたみまもりサービス、みまもりでんわについては、顧客との約定として郵便局のみまもりサービス利用規約、郵便局のみまもり電話利用規約があり、サービスの提供期間が1年間であること、顧客から退会などの申し出がない限り同一の条件で1年間延長されることなどが規定されている。

さらに、2015年4月30日、日本郵政グルーブ(日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)は、IBMおよびAppleとの業務提携により、ICT(Information Communication Technology, 情報伝達技術)サービスを活用した新たな高齢者向け生活サービスを提供するとプレス発表した。

IBMおよびApple が開発した新たな高齢者向け専用アプリ・タブレットなどを顧客へ配布、各種のサービス提供の実現に向け、2015年下期に実証実験を開始、2016年度から本格展開を目指すとした19

具体的には、2015年10月29日からみまもりサービスを拡充するために、IBM、Apple と共同で、山梨県、長崎県において、高齢者向けタブレット等を活用した実証実験を開始した。

みまもりサービスの定期訪問等に加え、タブレットなどを活用したICTサービスを 1000 名程度の顧客に提供し、みまもりサービス(ICT の活用を併用した、子による親の体調の確認、親の服薬確認)、コミュニケーションサービス(TV電話による会話を通じたご家族ホッとライン、家族の写真を共有できるご家族アルバム)、買い物支援サービスなどを提供するものである20

当初2016年度本格展開とされたが延期となり、2017年7月に先送りされたと報道されている21

一方、2017年4月には、日本郵便は茨城県大子町から高齢者見守りサービス事業を受託した。

郵便局員が訪問して高齢者の体調を把握し、家族らに状況を伝えるもので、大子町が料金を負担し、町内居住の75歳以上の高齢者116人に対して無料で提供するものである22

このほか、日本郵便は東京都檜原村からも同様の事業を受託している23
 
 
15 「『郵便局のみまもりサービス』の試行実施」(2013年8月26日)、日本郵便ホームページ。
16 「郵便局のみまもりサービスの試行拡大~山梨県・長崎県の全域でサービスを提供~」(2015年6月26日)、日本郵便ホームページ。
17 「郵便局のみまもりサービスの実施エリア拡大等」(2015年9月25日)、日本郵便ホームページ。
18 「郵便局のみまもりでんわ」、日本郵便ホームページ。
19 「高齢者向け新サービス実施に向けた業務提携について~IBM、Appleとの実証実験の実施~」(2015年4月30日)、日本郵政ホームページ。
20 「高齢者向けタブレット等を活用した実証実験の開始」(2015年10月27日)、日本郵便ホームページ。
21 「日本郵政、高齢者「みまもり」サービスの開始延期 年度内から7月に先送り 調整長引き」『産経新聞』(2017年1月7日)。
22 「茨城県大子町における『みまもり訪問サービス』及び『みまもりでんわ』の提供開始」(2017年4月17日)、日本郵便ホームページ、「日本郵便、高齢者見守りを自治体から受託」『日経新聞』(2017年4月17日)。
23 「高齢者のみまもりについて」、檜原村ホームページ。
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小林 雅史

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