- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険計理 >
- 惑星間の距離-小惑星が地球に衝突する可能性があるらしいけど?
惑星間の距離-小惑星が地球に衝突する可能性があるらしいけど?

保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
このところ、天体衝突というリスクが話題になることが多くなってきたように思う。その要因としては、金融機関を中心としたリスク管理の進展で、エマージングリスクが注目されるようになったことがある。これまで定量化が難しいとされていたリスクを定量化するとともに、経験のないリスクも「全て網羅し、研究しています」と、知ったような顔をしなければならない、といった事情だろうか。
それはともかく、天文学における観測技術の高度化によって、これまで見えなかった小惑星や宇宙空間の塵が見えるようになってきたということもあるらしい。
しかし、宇宙空間における距離感というものがどうにも想像しにくい。広大な何もない空間に時々星があるのか、それとも、いつ衝突してもおかしくないくらい、星などがひしめきあっているのか。
今回は、天体の「そこにある様子」について実感できるようにしよう。宇宙全体の広大さは想像を絶するものだが、地球周辺くらいなら何とか実感できるかもしれない。
というわけで、さっそくだが、地球周辺の様子を書けといわれたら、例えばこんな感じだろう。
これをみると、月と地球の位置・距離関係は
「左手にゴルフボール、右手にパチンコ球をもって、両腕を軽く拡げたような感じ」
となる。これは意外にスカスカな感じがするだろう。これで日食や月食がよく起こるものだと感じるかもしれない。
地球をゴルフボールにしてしまった都合上、舞台をゴルフ場にして、とあるホールのティーグラウンドにおいてみよう。(ゴルフに縁のない方は、距離だけで想像してください。)
すると太陽は「その約500mのロングホールのグリーン(においた小さい気球、と言ったほうがいいか)」となる。
上の表で距離を引き算すると、「金星は、139m先のピンポン玉」、「水星は307m先の小さいビー玉」である。(もちろん地球=ゴルフボールに最も近いときに、である。)
その水星は、太陽に最も近い灼熱の惑星、というのが多くの人がもっているイメージだと思うが、このモデルでは、「グリーンから194m離れた小さいビー玉」となる。これも意外に離れている。前のページで描いた絵が恥ずかしくなるが、訂正はしないでおく。
地球の外側にいくと、火星は最も近い時で、地球から(763-501=)262メートル。
「今しがた通ってきた200mのショートホールのティーグラウンドにおいた大きいビー玉」。
木星は3km程度離れており、「ゴルフ場の入り口にあるバランスボール」。
一番外側の惑星である海王星ともなると15kmも離れてしまうので、「ゴルフ場に一番近い高速道路のインターチェンジに置いたサッカーボール」といったところで、どうやら想像以上にお互いの距離は離れていて、たいそう孤独なようだ。
というわけで、地球に小惑星が衝突することなど、ありうるのだろうか、というのが現時点での感想なのだが、どう感じられるだろうか。
実際には、毎晩のように流れ星は降っているわけだし、隕石又は小惑星が衝突したような痕跡としてのクレーターなどがいくらでもある。近年、実際に大規模な被害が生じた例としては、2013年にロシアに落下した隕石がある。この時の火球が空を飛んでいる様子や建物の被害状況などは、今でも動画サイトでみることができる。
衝突しないまでも接近した例としては、1990年代以降だけみても、地球から10~20万kmには何度も小惑星は接近しているとのこと。先ほどのモデルでいえば、「地球(ゴルフボール)と月(パチンコ玉)の間(腕を広げたその中)を通過する隕石(蚊?)」は日常茶飯事、ということかもしれない。空間だけでなく、時間のほうも人間とはスケールが違うのだから。
ちなみに太陽以外の最も近い恒星は、4.3光年離れたケンタウルス座アルファ星とされているが、1光年は約9.5兆kmなので、計算すると、たとえ地球がゴルフボールだとしても3万km以上かなたにある。逆に実感しにくくなってしまった。
さらに宇宙全体としては、「銀河系の直径が10万光年」だとか、「アンドロメダ銀河までの距離が230万光年」だとか、以下すっとばして「観測可能な宇宙の大きさが470億光年」となると、全く想像を絶するスケールである。宇宙のこうしたスケールからみると、太陽系など宇宙の中の一点にすぎず、比較的星が密集している領域だ(なので、最初の絵もこれでかまわない、と言訳しておく。)という見方もあるだろう。「意外にポツポツとしかない」のに、「密集している」のは見方によって両方とも正しい?
宇宙空間を実感しようとして、結局無理なところまで含めて、予定通り今回はここまでとする。天体衝突なども含むエマージングリスク全般についてもまた、科学的な事実、リスク管理の両面から、今後も動きを追って行くつもりである。
(なお、冒頭にあげたチェコの天文学者チームの報告1の件が気になるかもしれないが、いますぐ衝突するぞという警告ではなく、「流星のもととなるような宇宙の塵が多いところを発見した。そこを地球が定期的に通過するので、隕石の硬さなどの性質によっては、燃え尽きずに地表まで達する危険度は高いかもしれない」というもので、最終的には、今後とも詳細な情報を得る研究が必要だとまとめている。過度に心配しなくてもよさそうであるが、何が起こるかはわからない。)
1 Discovery of a new branch of the Taurid meteoroid stream as a real source of potentially hazardous bodies https://www.aanda.org/articles/aa/pdf/forth/aa30787-17.pdf(2017.5.20))
(2017年06月20日「研究員の眼」)

03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
安井 義浩のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/07/04 | 金融安定性に関するレポート(欧州)-EIOPAの定期報告書の公表 | 安井 義浩 | 基礎研レター |
2025/06/27 | 銀行と保険の気候関連リスク管理の強化にむけた取り組み(英国)-PRAの協議文書より。 | 安井 義浩 | 基礎研レター |
2025/06/20 | 保険会社の人工知能(AI)ガバナンスに向けた意見(欧州)-欧州保険協会の回答書より | 安井 義浩 | 基礎研レター |
2025/05/30 | 自然災害保険の補償内容を理解しているか?(欧州)-保険商品情報文書の充実に向けたEIOPAの報告書 | 安井 義浩 | 保険・年金フォーカス |
新着記事
-
2025年07月11日
トランプ関税の日本経済への波及経路-実質GDPよりも実質GDIの悪化に注意 -
2025年07月10日
企業物価指数2025年6月~ガソリン補助金の影響などで、国内企業物価は前年比3%を割り込む~ -
2025年07月10日
ドイツの生命保険監督を巡る動向(2)-BaFinの2024年Annual ReportやGDVの公表資料からの抜粋報告(生命保険会社等の監督及び業績等の状況)- -
2025年07月09日
バランスシート調整の日中比較(後編)-不良債権処理で後手に回った日本と先手を打ってきた中国 -
2025年07月09日
貸出・マネタリー統計(25年6月)~銀行貸出の伸びが回復、マネタリーベースは前年割れが定着
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年07月01日
News Release
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
【惑星間の距離-小惑星が地球に衝突する可能性があるらしいけど?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
惑星間の距離-小惑星が地球に衝突する可能性があるらしいけど?のレポート Topへ