- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 財政・税制 >
- 議員への交通費支給の何が悪い-ふるさと納税寄附者からの上峰町に対する苦情について
議員への交通費支給の何が悪い-ふるさと納税寄附者からの上峰町に対する苦情について

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任 高岡 和佳子
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1 平成28年12月16日 佐賀新聞 朝刊 及び 平成28年12月17日 佐賀新聞 朝刊参照
費用弁償とは
このように、費用弁償支給基準がまちまちなのだ。その他の報酬等が適切であることが前提だが、費用弁償を受けることは議員の権利である以上、完全実費支給型の費用弁償支給なら否定する理由はない。問題となるのは、費用弁償支給基準が不適切な場合(及び前提条件が崩れる場合)ではないだろうか。
2 支給条例に関する必要な事項を定める「川崎市議会議員の費用弁償に関する要領」には、交通機関は鉄道及び路線バスと定められている。
3 平成29年3月31日時点(4月1日以降実質実費支給に変更)。
金額の適切性については後段に回し、先に費用弁償の支給要件に会議や委員会の内容が含まれることについて考える。通常、委員会や会議の内容に問わず、一回あたりの交通費は変わらない。会議や委員会の内容によって交通費支給の有無が異なる方が不自然だ。ふるさと納税に起因するとはいえ、財政が改善したのだから、議員の職務遂行の為、会議や委員会に出席するのに必要な交通費を支給するのは当然ではないだろうか。
支給額の適切性検証
現実的な交通手段は自家用車等であろうが、ここではタクシー(普通車、以下同様)利用を前提に金額の適切性を検証する。佐賀県バス・タクシー協会のHPによると、タクシーの初乗り運賃は640円(1.5kmまで)。従来の1,000円では、初乗り区間ですら往復できない。加算運賃は313mまでごとに80円なので、往復2,000円に収まる距離は、およそ2.8km。上峰町役場から町の最南西エリアとの直線距離と同程度である。そして、「のらんかい」の41停留所の内、40停留所は、上峰町役場を中心とするおよそ半径4kmの範囲に収まる。
これらを踏まえると、日額2,000円が過大とは言えないのではないだろうか。もちろん、上峰町役場まで徒歩圏内に居住する議員に対しても支給することに違和感が残る。ただ、報道等を鵜呑みにして町に対して苦情を言う前に、自分達が今住んでいて、ふるさと納税寄附額の何倍もの住民税を支払っている自分達の議会が完全実費支給型かどうかを確認した方が良いのではないか。
4 土曜日は便数が限られ、日曜・祝日は運休
上峰町の新たな取り組み
実は、条例改正案と平行して、上峰町では、交通の利便性改善が検討されており、今年2月に「上峰町地域公共交通網形成計画(案)」が公表された。その中で、福祉バスの多様なニーズへの対応を図るべく、通学福祉バスの利便性向上、予約型乗合タクシーの導入が掲げられている。なお、平成27年に上記計画策定に伴う調査などを行う委託業者選定に当たり、企画・提案を広く募集していた。議員の立場なら、交通の利便性改善が計画されていることを知らないはずもない。予約型乗合タクシーの料金体系はまだ分からないが、通常のタクシーよりは安価なはずだ。そして、完全実費支給型の費用弁償基準を設けることも可能だ。
通学福祉バスの利便性向上、予約型乗合タクシーの運営費用にふるさと納税が活用されるなら、寄附者から苦情がでることもなかったのではないだろうか。
(2017年05月29日「研究員の眼」)

03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/02/26 | ふるさと納税、確定申告のススメ-今や、確定申告の方が便利かもしれない4つの理由 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/18 | ふるさと納税、事務負荷の問題-ワンストップ特例利用増加で浮上する課題 | 高岡 和佳子 | 研究員の眼 |
2025/02/03 | 老後の生活資金に影響?-DC一時金に適用される「5年ルール」見直しの背景 | 高岡 和佳子 | 基礎研レター |
2025/01/08 | インデックス型ファンド人気の中でのアクティブファンド選択 | 高岡 和佳子 | ニッセイ年金ストラテジー |
新着記事
-
2025年03月28日
OPECプラスの軌跡と影響力~日本に対抗策はあるのか? -
2025年03月28日
トランプ2.0でEUは変わるか? -
2025年03月28日
韓国における最低賃金制度の変遷と最近の議論について -
2025年03月28日
新NISAの現状 -
2025年03月28日
トランプ政権2期目の移民政策-強制送還の大幅増加は景気後退懸念が高まる米経済に更なる打撃
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【議員への交通費支給の何が悪い-ふるさと納税寄附者からの上峰町に対する苦情について】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
議員への交通費支給の何が悪い-ふるさと納税寄附者からの上峰町に対する苦情についてのレポート Topへ