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SDGs達成に向けて投資家が果たす役割と責任
一橋大学大学院 商学研究科 加賀谷 哲之
我々はCSR Europeの協力をえて、欧州企業と日本の上場企業それぞれのCSR担当者にアンケート調査を行った。ここで特筆すべきは、日本企業は欧州企業と比べて、経営陣によるSDGsの認知度が低いこと(日本25.5%vs欧州65.4%)、日本企業の経営陣は欧州企業と比べて、SDGsを新たなビジネスチャンスとしてとらえておらず、国際的なビジネスの場で重要なトピックとなっていると認識していない点、そもそもCSRなどへの関心が高くない点が確認される(図表2)。この結果、実際にSDGsへの短期・中長期の取り組みを持っている企業の割合も低い状態にとどまっている。
近年、そうした環境が変化しつつある。2017年に公表されたエデルマン・トラストバロメーターによれば、企業セクターに対する一般消費者からの信頼感が低迷している。こうした信頼感の低迷は、中・長期的な企業価値毀損の原因になりかねない。さらに、グローバルにみて保護主義が蔓延しつつあり、各国・各地域に対する貢献の大きさが当該企業の事業機会に大きな影響を与える可能性も高まっている。こうした中で、企業が社会的課題に対して積極的な役割を果たすことで、一般消費者からの信頼感を増大させ、中長期のリスクを回避し、自社のDNAや企業理念に対する理解を促進させ、社員一人ひとりの誇りを磨き高めることも可能となる。
こうした取り組みを促進させるにあたって、投資家が果たすべき役割・責任も大きくなっている。近年、スチュワードシップ・コードを契機に、投資家も持続的な企業価値創造という観点からの投資先企業に対する説明責任があることが明確化され、そのための働きかけが求められるようになっているためである。とりわけ長期投資などに取り組むためには、リスクマネジメントという観点からもESGなどに関わる取り組みを積極的に評価することが求められる。投資家と経営者との高品質なCSR、SDGs、ESGをめぐる対話・エンゲージメントを展開することで、日本でもそうした取り組みが加速することを期待したい。
(2017年05月08日「ニッセイ年金ストラテジー」)
一橋大学大学院 商学研究科
加賀谷 哲之
研究・専門分野
加賀谷 哲之のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2018/05/07 | ESG投資に日本企業はどのように対峙すべきか? | 加賀谷 哲之 | ニッセイ年金ストラテジー |
2017/05/08 | SDGs達成に向けて投資家が果たす役割と責任 | 加賀谷 哲之 | ニッセイ年金ストラテジー |
2016/06/03 | 戦略的ESGインテグレーションの実践に向けて | 加賀谷 哲之 | ニッセイ年金ストラテジー |
2013/02/01 | 短期志向を克服する開示力の革新 | 加賀谷 哲之 | ニッセイ年金ストラテジー |
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