2017年04月11日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(4月号)~輸出は4ヵ月連続の二桁増を記録

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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ベトナムの17年2月の輸出額は前年同月比29.6%増(前月:同5.7%増)と、大きく上昇した。輸出の伸び率は、16年前半に伸び悩んでいたものの、年後半から主力の電気・電子製品やアパレルを中心に勢いを取り戻しており、足元でも政府目標(17年は+6~7%)を上回る傾向が続いている。なお、2月はテト(旧正月)の影響で営業日数が多かったことも輸出の押上げ要因となった。一方、輸入額は前年同月比48.5%増と、前月の同3.9%増から急上昇した。結果、貿易収支は20.4億ドルの赤字となり、前月から32.0億ドル減少した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、織物・衣類は同13.9%増(前月:同5.7%増)、履物は同34.6%増(前月:同4.8%減)とそれぞれ大きく上昇した。またコンピュータ・電子部品も同64.9%増(前月:同18.7%増)と一段と上昇した。一方、輸出全体の約2割を占める電話・部品が同3.2%減(前月:同2.6%増)と低下し、6ヵ月ぶりのマイナスとなった(図表10)。これはサムスン電子の新型スマホの発売が昨年は2月だったのに対して今年は4月に遅れているためと考えられる。なお、農産品についてはコメ(同14.6%減)が引き続き減少したものの、ゴム(同237.0%増)、野菜(同44.2%増)、コーヒー(同68.2%増)など大幅に増加した品目が多かった。

輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同26.8%増(前月:同7.8%増)、地場企業が同37.1%増(前月:同1.2%増)と、それぞれ大きく上昇した。
(図表9)ベトナム 貿易収支の推移/(図表10)ベトナム輸出の伸び率(品目別)
シンガポールの17年2月の輸出額(石油と再輸出除く)は前年同月比20.8%増と、前月の同9.0%増から上昇し、4ヵ月連続のプラスとなった。輸出の伸びは医薬品の変動が大きいために上下に振れているものの、基調としては16年初に資源価格の上昇を受けて持ち直し、年後半は主力の電子製品の需要が回復して増加傾向が続いている。また2月は旧正月の影響で営業日数が多かったことも輸出の押上げ要因となったとみられる。なお、総輸出額は前年同月比21.3%増(前月:同11.4%増)と更に上昇した一方、総輸入額は同6.2%増(前月:同21.3%増)と低下した。結果、貿易収支は45.8億ドルの黒字と、前月から20.2億ドル黒字が拡大した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同16.5%増と、前月の同6.4%増から一段と上昇した(図表12)。電子製品の内訳を見ると、通信機器(同10.2%減)やPC(同3.2%減)、ダイオード・トランジスタ(同3.6%増)が低迷もしくは停滞する一方、IC(同25.0%増)やPC部品(同19.0%増)が大幅な増加を続けるなど品目毎にバラつきがみられる。また電子製品と同じく全体の約3割を占める化学製品は同20.4%増と、前月の同6.8%増から上昇し、再び二桁増を記録した。化学製品の内訳を見ると、医薬品が同5.0%減(前月:同12.3%増)と引き続き落ち込んだ一方、石油化学製品は同44.4%増(前月:同37.6%増)と高い伸びが続いている。このほか、特殊機械(同111.8%増)や金(同104.3%増)も好調が続いた。
(図表11)シンガポール貿易収支/(図表12)シンガポール輸出の伸び率(品目別)
フィリピンの17年2月の輸出額は前年同月比11.0%増と二ヵ月連続の二桁増となったものの、前月の同24.0%増から低下した。輸出額は16年から資源価格の上昇を受けて一次産品を中心に緩やかに持ち直し、主力の電子製品とその他製品はやや不安定ながらも総じて改善傾向が続いている。一方、輸入額は前年同月比20.3%増(前月:同12.2%増)と上昇し、依然として力強い内需を背景に高水準の伸びが続いている。結果、貿易収支は17.3億ドルの赤字と、前月7.4億ドル赤字が縮小した(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の約5割を占める電子製品は同14.8%増(前月:同10.6%増)から上昇して2ヵ月連続のプラスとなった(図表14)。電子製品の内訳を見ると、家庭用電化製品(同13.0%減)は昨夏をピークに減少傾向にあるものの、計測制御機器(同24.0%増)や半導体デバイス(同14.8%増)、電子データ処理機(同16.7%増)がそれぞれ大幅に増加している。その他9品目を見ると、電極(同946.9%増)とその他鉱業製品(同107.5%増)、ココナッツオイル(同66.5%増)、その他電子機械・部品(同64.9%増)、金属部品(同29.4%増)、その他製造品(同20.1%増)、化学(同9.6%増)が増加した一方、機械・輸送用機器(同16.8%減)とイグニッション・ワイヤーセット(同13.9%減)が減少した。
(図表13)フィリピンの貿易収支/(図表14)フィリピン 輸出の伸び率(品目別)
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2017年04月11日「経済・金融フラッシュ」)

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