2017年03月24日

【東南アジア経済】ASEANの消費者物価(3月号)~原油高を背景とする上昇傾向は継続

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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(図表1)ASEAN6ヵ国消費者物価上昇率 ASEAN主要6カ国の17年2月の消費者物価指数(以下、CPI)の伸び率(前年同月比)は、総じて上昇した(図表1)。引き続きガソリン小売価格をはじめとする石油関連の財・サービスの価格上昇が全体を押し上げた。

CPI上昇率は16年に原油価格が底打ちしてから上昇傾向が続いている。一方、緩慢な経済成長が続いていることからコアCPI上昇率は概ね安定して推移している国が多い。
(図表2)インドネシアCPI上昇率(寄与度)
インドネシアの17年2月のCPI上昇率は前年同月比3.83%増(前月:同3.49%増)と上昇した(図表2)。CPI上昇率は依然として3%台の落ち着いた水準であるものの、上昇傾向が強まりつつある。

主要品目別に見ると、住宅・電気・ガス・燃料は同3.71%増(前月:同2.47%増)と、1月から始まった契約容量900VAの家庭向けの段階的な電力補助金の削減を受けて上昇した。また輸送・通信・金融は同3.07%増(前月:同2.76%増)と、車両登録料を引き上げた1月に続いて小幅に上昇したほか、食材も同4.39%増とクリスマス後の需要が弱かった前月の同4.11%増から小幅に上昇した。

食料品とエネルギーを除いたコアCPI上昇率は同3.41%増(前月:同3.35%増)と、昨年から緩やかな低下傾向が続いたが、17年に入って小幅に上昇している。

中央銀行は、3月15-16日に開かれた理事会(金融政策会合)で、食品価格や政府の統制価格の上昇、補助金改革などが先行きの物価上昇圧力となるとしつつも、2017年のインフレ率は目標の範囲内(4±1%)で推移するとした。なお、政策金利については、米国の利上げや新政権の経済・貿易政策の方向性、欧州の政治リスク、国内のインフレリスクを警戒して据え置いた。
(図表3)タイCPI上昇率(寄与度)
タイの17年2月のCPI上昇率は前年同月比1.44%増(前月:同1.55%増)と、4ヵ月ぶりに低下した(図表3)。2月のCPI上昇率はたばこの物品税の引上げの影響が剥落して低下したものの、16年以降の原油価格の上昇を背景とする緩やかな上昇基調は続いているものと見られる。

主要品目別に見ると、食品・飲料は同1.00%増(前月:同1.53%増)と、好天で供給量が増加した野菜・果物を中心に低下した。また、たばこ・酒類は同3.82%増と、昨年2月のたばこの物品税引き上げの影響が剥落して前月の同12.97%増から低下した。一方、輸送・通信は同5.58%増(前月:同4.76%増)と燃料価格を中心に上昇したほか、住宅・家具も同1.17%減(前月:同1.26%増)と、ガス料金の値上げを受けて小幅に上昇した。

コアCPI上昇率(生鮮食品とエネルギー除く)は同0.59%増(前月:同0.75%増)と若干低下し、概ね1%を下回る水準で安定している。

なお、タイ銀行(中央銀行)は17年のインフレ率が1.5%の緩やかな上昇に止まり、インフレ目標(1-4%)の下方で推移すると予測している。
(図表4)マレーシアCPI上昇率(寄与度)
マレーシアの17年2月のCPI上昇率は前年同月比4.5%増と、前月の同3.2%増から上昇した(図表4)。CPI上昇率の基調としては、昨年3月~7月にかけて景気減速やGST(物品・サービス税)導入による押上げ要因の剥落で低下した後、ガソリン価格の値上げによる上昇傾向が続いている。

主要品目別に見ると、輸送は同17.9%増(前月:同8.3%増)と、ガソリン価格の値上げによって一段と上昇した。また食品・飲料は同4.3%増(前月:同4.0%増)と、小幅に上昇した。食品・飲料の内訳を見ると、昨年11月の食用油向け補助金廃止の影響で油脂(同38.3%増)が高騰しており、また野菜(同9.5%増)や肉類(同4.6%増)の上昇も食品全体を押し上げている。なお、住宅・光熱は同2.2%増(前月:同1.9%増)と上昇したが、概ね2%前半で安定して推移している。

食品とエネルギーを除いたコアCPI上昇率は同2.5%増(前月:同2.3%増)と小幅に上昇し、概ね2%台前半でのレンジ圏を超過する動きが見られる。

中央銀行は、3月23日に公表したアニュアル・レポートで17年のインフレ率が3.0-4.0%となり、16年平均の2.1%から上昇すると予測した。また3月2日に開催した金融政策会合(MPC)では先行きのインフレ率は17年前半に上昇するが、その後は落ち着いて推移すると示した。なお、金融政策は現行の緩和的な水準を維持するとし、政策金利を据え置いた。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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