2017年03月31日

気候変動「適応ビジネス」 (その2)-TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言からみた日本企業の気候リスク

客員研究員   川村 雅彦

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2|TCFD業種でみた「Aリスト」日本企業の気候関連リスク
TCFDの気候変動対応型の4業種分類に従って、Aリスト日本企業の開示データを統合して、リスク要因とその予想される財務インパクトをまとめたのが図表5-1~5である。当然ながら、業種分類の性格に合うように整理することができた。以下、業種特性を踏まえて簡単に気候関連リスクをまとめる。

なお、CDPの気候リスクのカテゴリーは、大きく「規制変化リスク」「物理的気候リスク」「その他関連リスク」であるが、いずれもリスク要因のレベルではTCFDとの違和感はない。

(1) エネルギー(ガス)
  • 石炭・石油よりCO2排出量の少ない天然ガスの調達価格上昇により収益性が低下する。
  • 炭素税やキャップ&トレード制度などカーボン・プライシングの世界的な導入による天然ガスの販売価格が上昇する場合、消費者への価格転嫁の可否が収益性を左右する。
  • ガス事業者特有の課題として、コジェネのCO2削減効果の算定評価がある。
  • 異常気象による自社工場と調達先の設備損害による操業中断でコスト増加・販売量減少。
  • 気温上昇による冬季需要の減少が収益性の低下につながる。
  • 顧客・消費者の環境意識の変化により、ガス使用量が減少することへの不安がある。
     
(2) 原料・建築物(資本財・製品製造)
  • キャップ&トレード制度の導入が世界的に進めば、工場の設備投資が増える。
  • 炭素税の導入が世界的に進めば、エネルギーや材料・部品の調達価格上昇が収益性に影響する。
  • トップランナー方式が世界的に導入された場合、製品戦略の見直しが必要になる。
  • 地下水不足による純度の高い洗浄水の確保が困難となり、製造能力の低下につながる。
  • 長期投資家への環境戦略の説明が不足すると、企業評価と株価の低下につながる。
     
(3) 運輸(自動車)
  • 自動車からのCO2排出量を大幅に減らすべく、新規エコカーの投入が必要となる。短期的にはエンジン車の燃費競争が激化。
  • 自動車輸送の大荷主に対するCO2大幅改善の要求で、新規設備投資が必要となる。
  • カーボン・プライシングにより製造原価の増大と有益性の低下となる。
  • 異常気象による自社とサプライヤーの設備ダメージによる操業コストの増大、販売量減少。
  • 長期投資家への環境戦略の説明不足による評価と株価の低下。
     
(4) 原料・建築物(建築)
  • 大型ビルの低・脱炭素化(ZEBなど)の競争激化。
  • 建設現場における省エネ重機と省エネ工法の導入。
  • 異常気象による現場工事や原材料搬入の中断・遅延による操業コストの増加。
     
(5) 農業、食糧、林業製品(飲料)
  • 工場と輸送における省エネ設備投資の増加。
  • カーボン・プライシングの一つとして排出クレジットの購入費の増大。
  • 製品(ボトル)ごとのカーボン・フットプリントの測定と表示の費用負担。他社とのCO2削減競争。
  • 冷房・冷凍設備の冷媒(代替フロン)の段階的削減の費用負担。
  • 降水・気温分布の変化による水不足と原料作物の品質劣化による生産能力と販売量の減少。
  • 異常気象による自社とサプライヤーの設備ダメージによる操業コストの増大、販売量の減少。
  • 環境問題への不誠実な対応で個人消費者のブランドイメージ低下で売上高の減少。
図表5-1:CDP Aリスト日本企業の気候リスクと財務インパクト (TCFD業種:エネルギー)
図表5-2:CDP Aリスト日本企業における気候リスクと財務インパクト (TCFD業種:資本財)
図表5-3:CDP Aリスト 日本企業の気候リスクと財務インパクト (TCFD業種:運輸)/図表5-4:CDP Aリスト 日本企業の気候リスクと財務インパクト (TCFD業種:建築)
図表5-5:CDP Aリスト 日本企業の気候リスクと財務インパクト (TCFD業種:食糧)
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