- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 環境経営・CSR >
- 気候変動「適応ビジネス」 (その2)-TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言からみた日本企業の気候リスク
気候変動「適応ビジネス」 (その2)-TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言からみた日本企業の気候リスク

客員研究員 川村 雅彦
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
TCFDの気候変動対応型の4業種分類に従って、Aリスト日本企業の開示データを統合して、リスク要因とその予想される財務インパクトをまとめたのが図表5-1~5である。当然ながら、業種分類の性格に合うように整理することができた。以下、業種特性を踏まえて簡単に気候関連リスクをまとめる。
なお、CDPの気候リスクのカテゴリーは、大きく「規制変化リスク」「物理的気候リスク」「その他関連リスク」であるが、いずれもリスク要因のレベルではTCFDとの違和感はない。
(1) エネルギー(ガス)
- 石炭・石油よりCO2排出量の少ない天然ガスの調達価格上昇により収益性が低下する。
- 炭素税やキャップ&トレード制度などカーボン・プライシングの世界的な導入による天然ガスの販売価格が上昇する場合、消費者への価格転嫁の可否が収益性を左右する。
- ガス事業者特有の課題として、コジェネのCO2削減効果の算定評価がある。
- 異常気象による自社工場と調達先の設備損害による操業中断でコスト増加・販売量減少。
- 気温上昇による冬季需要の減少が収益性の低下につながる。
- 顧客・消費者の環境意識の変化により、ガス使用量が減少することへの不安がある。
- キャップ&トレード制度の導入が世界的に進めば、工場の設備投資が増える。
- 炭素税の導入が世界的に進めば、エネルギーや材料・部品の調達価格上昇が収益性に影響する。
- トップランナー方式が世界的に導入された場合、製品戦略の見直しが必要になる。
- 地下水不足による純度の高い洗浄水の確保が困難となり、製造能力の低下につながる。
- 長期投資家への環境戦略の説明が不足すると、企業評価と株価の低下につながる。
- 自動車からのCO2排出量を大幅に減らすべく、新規エコカーの投入が必要となる。短期的にはエンジン車の燃費競争が激化。
- 自動車輸送の大荷主に対するCO2大幅改善の要求で、新規設備投資が必要となる。
- カーボン・プライシングにより製造原価の増大と有益性の低下となる。
- 異常気象による自社とサプライヤーの設備ダメージによる操業コストの増大、販売量減少。
- 長期投資家への環境戦略の説明不足による評価と株価の低下。
- 大型ビルの低・脱炭素化(ZEBなど)の競争激化。
- 建設現場における省エネ重機と省エネ工法の導入。
- 異常気象による現場工事や原材料搬入の中断・遅延による操業コストの増加。
- 工場と輸送における省エネ設備投資の増加。
- カーボン・プライシングの一つとして排出クレジットの購入費の増大。
- 製品(ボトル)ごとのカーボン・フットプリントの測定と表示の費用負担。他社とのCO2削減競争。
- 冷房・冷凍設備の冷媒(代替フロン)の段階的削減の費用負担。
- 降水・気温分布の変化による水不足と原料作物の品質劣化による生産能力と販売量の減少。
- 異常気象による自社とサプライヤーの設備ダメージによる操業コストの増大、販売量の減少。
- 環境問題への不誠実な対応で個人消費者のブランドイメージ低下で売上高の減少。
(2017年03月31日「基礎研レポート」)
客員研究員
川村 雅彦
川村 雅彦のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2019/04/17 | 人が逃げ出す会社-会社は経営者の器以上の組織にはならない!? | 川村 雅彦 | 研究員の眼 |
2018/03/23 | 『SDGsウォッシュ』と言われないために~「SDGsの実装化」に向かう日本企業のグッド・プラクティス~ | 川村 雅彦 | 基礎研レポート |
2017/03/31 | 気候変動「適応ビジネス」 (その2)-TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言からみた日本企業の気候リスク | 川村 雅彦 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年05月01日
ユーロ圏GDP(2025年1-3月期)-前期比0.4%に加速 -
2025年04月30日
2025年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.2%(年率▲0.9%)を予測~ -
2025年04月30日
「スター・ウォーズ」ファン同士をつなぐ“SWAG”とは-今日もまたエンタメの話でも。(第5話) -
2025年04月30日
米中摩擦に対し、持久戦に備える中国-トランプ関税の打撃に耐えるため、多方面にわたり対策を強化 -
2025年04月30日
米国個人年金販売額は2024年も過去最高を更新-トランプ関税政策で今後の動向は不透明に-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【気候変動「適応ビジネス」 (その2)-TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言からみた日本企業の気候リスク】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
気候変動「適応ビジネス」 (その2)-TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言からみた日本企業の気候リスクのレポート Topへ