2017年03月31日

中国経済:景気指標の総点検(2017年春季号)~回復の動きに死角は無いか?

三尾 幸吉郎

文字サイズ

3|その他の重要な4指標
【電力消費量】
その他の指標では電力消費量が注目される。17年1-2月期の伸びは前年同期比6.3%増と16年通期の同5.0%増を上回った。内訳を見ると、全体の7割を消費する第2次産業が主因であり、第3次産業や世帯用の伸びは16年通期と比べてやや鈍化している(図表-11)。

【貨物輸送量】
貨物輸送量も経済活動の動きを読む上で重要な指標である。17年1-2月期の伸びは前年同期比8.3%増と16年通期の同5.7%増を上回る伸びを示した。内訳を見ると、航空貨物の伸びはやや鈍化したものの、鉄道貨物が16年のマイナスから17年1-2月期は大幅プラスに転じ、全体の4分の3を占める道路貨物や、伝統的な輸送手段である水路貨物も伸びを高めた(図表-12)。

【工業生産者出荷価格】
景気の体温と言われる物価も重要な景気指標である。17年2月の工業生産者出荷価格は前年同月比7.8%上昇するなどデフレは解消しつつある。原油など資源高を受けて生産財が急上昇したほか消費財も若干上昇した。今後は消費者物価に上昇圧力が波及する流れとなりそうだ(図表-13)。

【通貨供給量(M2)】
金融面から景気を見る代表指標としては通貨供給量(M2)が挙げられる。ここもとの動きを見ると、17年2月は前年同月比11.1%増と「12%前後」とされた政府見通しをやや下回る伸びに留まった(図表-14)。但し、融資サイドから見ると、投資に結び付くことの多い中長期融資は同19.2%増と極めて高い伸びを示しており、中国人民銀行は金融をやや引締め方向に調整しつつある。
(図表-11)電力消費量(業種別)/(図表-12)貨物輸送量/(図表-13)工業生産者出荷価格/(図表-14)通貨供給量(M2)の推移

3.総合指標の点検

3.総合指標の点検

(図表-15)景気評価点の推移 1|景気評価点は「横ばい」領域
第2章で概観した景気10指標を、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○=1点”、下向きであれば“×=0点”として集計した「景気評価点2」を確認して見る(5点が分岐点)。最近の推移を見ると、16年上期には景気が失速しそうになったものの、16年下期には持ち直し11月には「やや加速」と位置付ける7点に到達した。しかし、その後は勢いが鈍化、17年2月には「横ばい」と位置付ける5点となっている(図表-15)。
(図表-16)李克強指数の推移 2|李克強指数は上昇、修正後には陰りも
また景気指標のうち、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを用いた「李克強指数3」を確認して見ると、鉄道貨物輸送量がマイナスからプラスに転じたのを受けて15年秋を底に急回復、貨物輸送手段の構造変化を勘案し鉄道を貨物に入れ替えた修正後もほぼ同様の動きを示す。但し、修正後の指数には今年入ってやや陰りが見られる(図表-16)。
(図表-17)GDP推計値(月次) 3|経済成長率に換算すれば6.9%へ回復!
最後に、中国GDPに与える影響の大きい景気指標を用いて成長率を推計して見る。工業生産、製造業PMI、非製造業PMIの3つを説明変数としてニッセイ基礎研究所で開発した回帰モデルを使用した。推計結果の推移を見ると、16年2月の前年同月比6.2%増を底に持ち直して、17年1月と2月はともに前年同月比6.9%増となっており、16年10-12月期の同6.8%増(実績)を若干上回る水準で推移している(図表-17)。
 
2 景気評価点に関しては「景気の動向を簡単に把握できないか?」年金ストラテジー (Vol.219) September 2014を参照。
3 李克強指数は、李克強首相が遼寧省党委員会書記だった2007年、景気実態を表す統計として、電力消費量(工業)、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高(中長期)の3つを重視したことに由来する。加重割合は様々あるが、ここでは3指標を均等に加重している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

三尾 幸吉郎

研究・専門分野

(2017年03月31日「Weekly エコノミスト・レター」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【中国経済:景気指標の総点検(2017年春季号)~回復の動きに死角は無いか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

中国経済:景気指標の総点検(2017年春季号)~回復の動きに死角は無いか?のレポート Topへ